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肥料になる? ビール酵母の驚くべき効果

肥料になる? ビール酵母の驚くべき効果

ビールを醸造する過程で重要なビール酵母。しかし、ビールが醸造された後は「澱」(おり)として不要なものになってしまう場合がほとんどです。そんなビール酵母が農業用の肥料として有効活用できることをご存じですか。今回は、今後農業に深く関わってくるであろうビール酵母について、その成り立ちや効果を学んでいきましょう。

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ビール酵母とは

酵母とは、糖分をアルコールと炭酸ガスに変える微生物のことです。ビールだけでなく、味噌やパンをつくるときにも活用されています。その酵母の一種であるビール酵母は、ビールの醸造に欠かせないもので、麦汁(ばくじゅう)を発酵させる役割を担っています。

ビール酵母ができるまで

ビールの製造過程から、ビール酵母ができるまでを見ていきましょう。

〇麦汁を作る

大麦を発芽・乾燥させて作った麦芽を細かく砕き、でんぷんや米といった副原料と合わせて煮て、麦汁を作ります。さらにこの麦汁にホップを加えます。

〇麦汁を発酵させる

ここでビール酵母の登場です。麦汁にビール酵母を入れると、発酵が始まります。7から8日間、ビール酵母は増殖しながら、麦芽中の糖分をアルコールと炭酸ガスに分解していきます。

〇ビール酵母が沈殿する

発酵を終えたビール酵母が下に沈み、上澄み液のみが熟成・ろ過されてビールとなります。ビールの風味変化を防ぐために、発酵後にビール酵母は全て取り除かれますがそのビール酵母は麦汁の栄養素をたっぷりと吸収し、ビタミンB群、ミネラル、アミノ酸、酵素、食物繊維などの栄養を豊富に含んでいます。

このように、ビールの発酵過程が終わればビール醸造におけるビール酵母の役割は終わりますが、発酵後の栄養たっぷりのビール酵母をは様々な用途にに有効活用されています。

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発酵後のビール酵母の行方

ビール醸造過程でできた栄養たっぷりのビール酵母は、分解されて「酵母エキス」と「酵母細胞壁」に分けられます。「酵母エキス」はビール酵母の栄養分や旨味成分を抽出したもので、消化機能を助ける酵母の働きを利用したサプリメントや、アミノ酸が持つ旨味やコクを利用した調味料など、様々な方法で活用されています。

一方の、「ビール酵母細胞壁」は、これまであまり有効利用されてきませんでした。細胞壁はビール酵母の殻のようなものなので、活用しづらいです。近年、そのビール酵母細胞壁を活用しようと研究を進めてきたのがアサヒバイオサイクル株式会社です。アサヒバイオサイクル株式会社は、ビール酵母細胞壁の一部が家畜の飼料として使われていることに注目して、「動物に効果があるのだから、植物の肥料にもなるのではないか」と考え実用化に向けた取り組みをスタートしました。

肥料としてのビール酵母細胞壁の効果

ビール酵母細胞壁を肥料にするために、植物が吸収しやすいように分解します。その分解されたビール酵母細胞壁を肥料にまぜることで、次のような効果を期待できます。

○植物の根の成長を促す

ビール酵母細胞壁は、植物の成長を促す、ある植物ホルモンの合成を活性化させるのと同時に、植物の成長を抑制する別の植物ホルモンの合成を抑えることで、根の成長を促します。

○植物の免疫力を高める

ビール酵母細胞壁には、植物の免疫に関わる物質の合成を活性化させて植物の免疫力を高める働きもあります。これは、植物の病原菌とよく似た成分が含まれているためです。病原菌に似た成分が根や葉につくことで、植物は病気に感染したと勘違いして、免疫力を高める物質を増やそうとする反応を起こすと考えられています。

○温室効果ガスの排出量が減る

ビール酵母細胞壁からできた肥料を使うことで、植物の成長が促されて免疫力が高まり、生産性が上がるため、収穫量あたりの温室効果ガス排出量が減ると計算されています。例えば、植物の免疫力が高まれば農薬散布機の使用回数が減るので、温室効果ガスの排出量が減る、というものです。

ビール酵母の今後に注目!

ビール発酵という本来の役目を終えたあとのビール酵母に、農作物の収穫量増加や品質向上という素晴らしい効果が期待できるなんておどろきです。

ビール酵母細胞壁を使った肥料を扱うアサヒバイオサイクル株式会社は、2017年3月に設立されたばかり。今後は、ビール酵母細胞壁由来の肥料はさらなる試験や検証、持続可能な農業生産システムの提案などが行われる予定です。次々と新しい発見が多くありそうです。ビールを飲むときには、ビール酵母の力や農業に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?より奥深い味わいを感じられるかもしれません。

編集:ビール女子編集部

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