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野菜が薬に?「銀座で米を作った仕掛け人」が新たに狙うビジネスとは

野菜が薬に?「銀座で米を作った仕掛け人」が新たに狙うビジネスとは

銀座に水田を出現させたことに始まり、有楽町での市場開催、高糖度トマト栽培流通販売システムの開発などを手掛ける、銀座農園株式会社代表の飯村さん。次なる一手は、野菜と漢方で作った天然サプリメントを販売するコンセプトショップのオープンです。アグリビジネス界の風雲児、飯村さんにお話をうかがいました。

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野菜が薬に?「銀座で米を作った仕掛け人」が新たに狙うビジネスとは

2017年で創業10年を迎える農業ベンチャー、銀座農園株式会社。2010年に銀座で米作りをはじめ、翌年に表参道のビル屋上で貸農園を開き、話題を呼びました。同年から有楽町の交通会館で「交通会館マルシェ」を発足。都会の消費者と生産者を結び、都市における農産物直売所の先駆けとして、さらに話題に。「農家の方が自分で作ったものを高く売れる場を作りたかった」という一念で立ち上げたマルシェは、いまや有楽町の名物となり、大手町、豊洲、中野といった街にも広がりを見せています。

アグリビジネス界の風雲児が、次に狙うのは何か?同社代表取締役・飯村一樹(いいむらかずき)さんにお話をうかがいました。

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銀座の水田がきっかけで、農家とのネットワークを構築

飯村さんは大学卒業後、一級建築士として不動産会社やベンチャー企業での不動産投資事業を経験した後、30歳で起業します。「2007年当時、農業を取り巻く環境は暗かった。だからこそ、農業を明るく変えよう、と思ったんです」(飯村さん)

そこで、銀座の100㎡の駐車場の用地を1年限定で借り受け、水田を建設。同時に、全国1,100件の農家へ電話やダイレクトメールでアプローチし、一人あたり2万5,000円の寄付を募りました。「結果、90件の農家から寄付が集まりました。農業の暗い現状に問題意識を持っている農家は、確実にいたのです」と飯村さん。銀座のど真ん中でアイガモが泳ぐ水田は注目され、メディアにも多く取り上げられました。

銀座一丁目に突然水田が出現
銀座一丁目に突然水田が出現

「寄付してくれた農家の方々が、次々と水田を見に来てくれました。僕は田んぼで米作りをしているだけで全国の農家とのネットワークができた。これが、マルシェを始める原資になりました」

都市型農産物直売所の先駆け「交通会館マルシェ」

翌年2008年、飯村さんは有楽町の交通会館で、農産物の直売所であるマルシェを始めます。そのスペースは月数回程度イベントで使われるだけの、いわば「遊休地」。飯村さんのビジネスマンとしての感覚がうずきました。

「スペースを一括で借り上げ、中を25から30程度のエリアに区切ります。それで、市場に流通していないような農作物を売りたい農家に貸せば、感度の高い消費者が集まり、スペースの収益がもっと上がると考えたのです」。最初に名乗りを上げたのは、銀座で水田を作ったときに知り合った農家。もともと、農業への問題意識を高く持っている方が多かったことが功を奏しました。

「消費者の顔を見たり、自分の作ったものに自分で値段をつける。自分が作る野菜の価値を知ってもらうことが重要だと思ったんです」

消費者の、食の安全性に対する意識が高まっていたことも重なって、全国各地から先進的な生産者が集う都市型マルシェは、消費者にも受け入れられました。年々、出店を希望する生産者や自治体が次々と手を挙げ、都市型マルシェは大手町、豊洲、中野などの街に広がっています。

年間360日開催している交通会館マルシェ
年間360日開催している交通会館マルシェ

都会でもイチゴ狩りができるように

高糖度トマトの次の商品としては、観光イチゴ園と観光ワイナリーなどの観光型農業ビジネスを計画しています」

同社事業のもう一つの柱である“農業開発事業スキーム”を活用し、企業の農業参入プラットフォームとして、観光農園事業を準備しているとのこと。「関東エリアのイチゴ狩りは人気があって、どこの農園も需要に対して供給が追い付いていません。遊休地を活用した新しい企業参入の形として、ニーズの高いイチゴ狩りビジネスを提供できたらと考えています」

消費者に対しては、「東京都23区内に観光イチゴ農園を建設して、仕事帰りにイチゴ狩りを楽しんでもらえるようにしたい。ビタミンCを豊富に含む品種がヒットしそうだと思っています」と笑顔で語る飯村さんには、農業仕掛け人の尽きないベンチャー魂が宿っています。

野菜と漢方を活用したコンセプトショップをオープン

日本薬科大学と共同で、野菜と漢方で作った天然サプリメントを販売するコンセプトショップ「Farmacy’s」を、2017年7月、銀座1丁目にオープン。「野菜+漢方」をコンセプトに、日本薬科大学の医学・薬学のリソースを活用して、天然サプリメントとドリンクを開発し、販売しています。

「薬の代わりに野菜を処方しよう、というメッセージを込め、薬用植物や機能性の高い野菜のみを使用しています。美容や健康に意識の高いお客さんに向けて、商品を開発・販売していきます。医学・薬学のテクノロジーを農業に活用しています」

このショップには、自社やパートナー企業が生産した農作物の販路としての役割もあります。「農業が美容・健康業界の領域に踏み込むことで、農作物の付加価値をさらに高めていきたい」と飯村さん。生産者と消費者、双方にメリットを提供するコンセプトショップは、マルシェに次ぐあらたな銀座名物となることが期待されます。

日本薬科大学と共同で、野菜と漢方で作った天然サプリメントを販売するコンセプトショップ「Farmacy’s」を、2017年7月、銀座1丁目にオープン。「野菜+漢方」をコンセプトに、日本薬科大学の医学・薬学のリソースを活用して、天然サプリメントとドリンクを開発し、販売しています。

都会の消費者と生産者をつなぐマルシェ事業。最新の農業テクノロジーを国内外企業に提供して、次世代農業プレイヤーを創出する農業開発事業。さらに、医学・薬学のテクノロジーを活用した「野菜+漢方」をコンセプトにしたショップの展開。

銀座農園の事業には、ワクワクするような農業の未来があふれています。流通と生産の両方を知っているからこそできる、消費者、生産者、そして農業全体を明るくするプロジェクトから今後も目が離せません。

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飯村一樹

飯村一樹
銀座農園株式会社 代表取締役。ベンチャー勤務時代に建築、不動産、金融業務を経て、2007年銀座農園株式会社を設立。2009年「銀座でコメづくり2009プロジェクト」で多くのメディアから注目され、その後も「交通会館マルシェ」「シンガポールでのトマト生産事業」など独創的なアイディアで農業ビジネスを展開。現在は、流通事業に加え、企業向けの農業参入支援事業を手掛ける。子会社に農業生産法人をもち、自身もJGAP指導員として農業に向き合いながら「農業×テクノロジー=アグリテック」のトップランナーとして国内外で注目を集めている。

銀座農園株式会社
https://ginzafarm.co.jp/
※写真提供:銀座農園株式会社

(*1)JICA「トマト農場」で高付加価値野菜を安定栽培
https://www2.jica.go.jp/ja/priv_sme_partner/document/296/A151026_press.pdf
(*2)株式会社タケエイ 農業ビジネスへの参入について
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1421284
(*3)在タイ日本国大使館 バンコクの気候
http://www.th.emb-japan.go.jp/itpr_ja/mamechishiki_bangkok.html

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