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ライバルは父!老舗農家の12代目が挑む多品目農業【ファーマーズファイル:平本貴広】

ライバルは父!老舗農家の12代目が挑む多品目農業【ファーマーズファイル:平本貴広】

2017年08月06日

江戸時代から続く老舗農家で、先代までの経営方針を大きく変え、多品目少量生産に変更した、「平本ファーム」の平本さん。今のスタイルに辿り着くまでの、様々な葛藤や立ちはだかった壁とはどんなものだったのでしょうか?

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ライバルは父!老舗農家の12代目が挑む多品目農業【ファーマーズファイル:平本貴広】
(c)川名マッキー

神奈川県横浜市の高台に位置する羽沢町で、都市農業に挑んでいる平本貴広(ひらもとたかひろ)さん。運営する「平本ファーム」では、キャベツ、人参などの他、ビーツ、パクチー、チコリなど海外種を含め、年間100種類以上の野菜を栽培しています。

平本さんは、江戸時代から300年続く老舗農家の12代目として生まれながらも、先代までの少品目大量生産の経営方針を、多品目少量生産に変更。さらに、直売中心の販売に切り替え、これまでの経営方針とは大きく異なる方向に転換しました。

しかし、今のスタイルにたどり着くまでには市場の壁、父親の壁など、さまざまな問題が立ちはだかったそうです。平本さんが経験した困難と葛藤とは、どんなことだったのでしょうか。詳しくお話をうかがいました。

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現代的な農業家を目指し、アメリカ研修へ

横浜市・羽沢町は、住宅地と農地が隣接し、東京ドーム3個分ほどの農業用地があるエリアです。正面にはランドマークタワー、後ろには富士山が見えるという絶景の高台に、敷地面積3,000坪を誇る平本ファームはあります。「農家のせがれ」として生まれた平本さんにとって、家業を継いで農家になることは自然な流れでした。

とはいえ平本さんは、ただ「農家の跡取り」として継いだわけではありません。就農前から現代的な農業家を目指し、県立農業者研修教育施設「農業アカデミー」で学び、卒業後はアメリカでの農業研修に参加して、知識と経験を積みました。日本の農業の良いところ、悪いところを客観的に見れたことは、今でも平本さんの営農スタイルの土台となっていると言います。

立ちはだかる、既存農業の壁

立ちはだかる、既存農業の壁
(c)川名マッキー

アメリカでの研修を終え、「これまでの枠にとらわれない新しい農業をやりたい」という思いを胸に故郷へ帰ってきた平本さんは、父親が運営する平本ファームに就農します。これまでの枠にとらわれない新しい農業をやりたい。しかし、希望にあふれていた平本さんにまず立ちはだかったのが、父親の壁でした。

昔気質の農家である父は、作業や工程を何も教えてくれません。それどころか、やり方を知らないと叱られることさえありました。学校や研修で学んだベースはあるものの、実際に就農すると、道具の使い方から土地による肥料の配合、市場やJAとのやり取りなど、わからないことだらけでした。平本さんは就農直後から農業の難しさに直面しました。

さらに追い打ちをかけるように現れたのが、市場の壁でした。「懸命に作った質の良い野菜でも、値段がつかない。過剰供給状態が続いていた市場では、『出荷すれば赤字』になることもあった」。なかなか理想の農業を実現できず、試行錯誤しながらも不完全燃焼の時期が続きました。

経営方針の転機は、地元スーパーの地場野菜コーナー

農業家としての自分のスタイルを模索していた平本さんに転機が訪れたのは、2010年のことです。地元スーパーの担当者から地場野菜のコーナーを一緒に作らないか、という話が持ちかけられたのです。市場を通した野菜ではなく、地元の農家が作った新鮮な野菜がそのまま並ぶ、そんなコーナーを作りたい、という要望でした。担当者の一言が、平本さんのチャレンジ魂に火を付けました。

これを機に、平本さんは父の代から続く経営方針を、大きく切り替えることを決意します。平本ファームではそれまで、キャベツやブロッコリー、ダイコンなどを大量に作って市場に卸す「少品目大量生産」のスタイルでした。これを「多品目少量生産」のスタイルに切り替え、売り方も直売中心に変えました。

その裏には「たくさんの野菜を、消費者に見せてあげたい」という平本さんの思いがありました。アメリカ時代の同級生に種苗店のオーナーがいたことも、多品目栽培に挑戦するにあたり、心強いサポートとなりました。

多品目少量生産を可能にした野菜作りへの探求心

多品目少量生産を可能にした野菜作りへの探求心
(c)川名マッキー

多品目栽培には、少品目に比べて膨大な手間がかかるという難点があります。品目によって種まき、発芽、追肥、収穫、出荷などの工程が異なり、それぞれの品目を管理する必要があります。さらに、味や色味をよくするための肥料の配分も品目ごとに変えなければなりません。

しかし、そのような手間も平本さんは楽しんでいるようです。自らを「変態農家(笑)」と呼ぶ平本さんですが、野菜作りへの深い探求心が、多品目栽培を可能にしました。

結果的に50品目、100種以上の品種を育てるようになり、現在の平本ファームが完成しました。畑では、ブロッコリーやキャベツなどの他、ビーツ、パクチー、スイスチャード、チコリ、フェンネル、カーボノネロなど海外の野菜や、黒キャベツ、プチベールなどの新種野菜も栽培されています。

平本さんのチャレンジに、父親の反応は様々な壁にぶつかりながらも柔軟に、そして前向きに自分の農業スタイルを築きあげた平本さん。気になるお父さんの反応はどうなのでしょうか。

「父は、いまだに何も言いませんし、私も話しません。けれども文句は言いません。腹の中では認めてくれてるんじゃないかな」そう平本さんは笑います。周りの人から、お父さんが平本さんを褒めていた、と伝え聞くこともあるそうです。

父と息子は、これからもライバルであり続けます。老舗農家であっても、時に柔軟に、時に頑固に。平本さんの挑戦はこれからも前へと進んでいきます。

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平本 貴広
https://www.facebook.com/takahiro.hiramoto.3
神奈川県七人の百姓(神七)
https://www.facebook.com/kanagawa7farmers/
※写真撮影:川名マッキー

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