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脱サラ農起業で年収2,000万円 ブルーベリー観光農園で成功した3つのカギとは

脱サラ農起業で年収2,000万円 ブルーベリー観光農園で成功した3つのカギとは

農園の営業日は年間でたったの60日。素人かつ無人でできる養液栽培システムの採用や、収穫の作業を効率化した観光農園の運営、投稿数3,000本以上を誇るブログでのIT集客など、「ブルーベリーファームおかざき」を運営する畔柳さんの農起業成功の秘訣をご紹介します。

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「収入が減っても好きな農業をしたい」と思う人は少なくありません。脱サラして「ブルーベリーファームおかざき」を立ち上げた畔柳茂樹(くろやなぎしげき)さんは、営業日は年間たったの60日ながら、年収2,000万円を実現した人物です。

失敗する人が少なくない農起業を、成功に導いた畔柳さんの秘策とは何なのでしょうか。そこには、「無人栽培」「観光農園」「IT集客」という3つのカギがありました。畔柳さんの著書「最強の農起業!」(かんき出版)を参考に、その秘策を探ってみました。

農園の開園期間は10週間、売上は2,000万円


愛知県岡崎市にある「ブルーベリーファームおかざき」の敷地面積は約7,500㎡あります。そのうち5,000㎡に畑があり、40種類、1,300本のブルーベリーを栽培しています。名古屋都心部から高速道路を使えば、約40分から45分で着くというアクセスの良さです。夏だけで1万人が訪れる、愛知県有数の観光スポットとなっています。

農園の開園期間は6月上旬から8月下旬までの2ヵ月半、約10週間のみです。ここで、ブルーベリーを好きなだけ食べられる「ブルーベリー狩り」を行っています。料金は中学生以上は2,000円、小学生は1,500円、4歳以上の幼児は1,000円。混雑する土日は時間制限が行われる場合がありますが、基本的に時間無制限で、訪れた人はブルーベリー畑の中で心ゆくまでゆったりと時間を過ごすことができます。洗練された作りの農園カフェが併設され、そこで提供されるブルーベリーを使ったスイーツも好評です。

オープンは2008年。10年が経とうとしていますが、オープン当初から経営は右肩上がりで、農園だけの売り上げだけでも2,000万円を超えるそうです。

農園をオープンする期間以外はほぼ週休5日。これまでの農業の常識では考えられないほど、生産性を高め、合理化したことが、短期間で高い収益を得られるスタイルを可能にしました。
「昼も夜も働き詰めだったサラリーマン時代からはとても考えられないほど、悠々自適な暮らし」と畔柳さんは話しています。

畔柳さん成功のカギ1:「無人栽培」 素人でもできる養液栽培システム


畔柳さんが就農する際に選んだブルーベリーは、サプリメントや加工品の需要より輸入量は年々増加しています。一方、日本での栽培の歴史は浅く、ブルーベリーで生計を立てている農家はほとんどいない未開拓の分野でした。

栽培法に関しては難しさもあり、検討を重ねた畔柳さんは水耕栽培に着目しました。「植物の潜在能力を最大限に引き出すには、その植物の原産地の生育環境を再現して栽培すること」。ブルーベリーが好む酸性の肥料をブレンドした養液栽培システムを採用することにしたそうです。

この水耕栽培は合理的な栽培方法で、収穫や選定作業を除けば、ほとんど手間がかからず、ほぼ無人栽培ができるようになったのです。この無人栽培は、ランニングコストを抑えることができ、それ以上のメリットになったのは「早く生育し、しかも最高品質のブルーベリーが実った」ということです。

土耕栽培では2年生の苗木(※)を定植してから収穫するまで3年から4年かかるところ、養液栽培システムでは、1年から2年で収穫に至ります。さらに「ブルーベリーは酸っぱいからジャムにする」というイメージを払拭するほど、甘くてコクのあるおいしい大粒のブルーベリーが実ります。農園のアンケートによると、来園者の98%が「おいしかった」と回答し、顧客満足につながっていきました。

(※)2年生の苗木:育ててから2年目の苗。新苗よりも根が張っており、育てやすいとされています

畔柳さん成功のカギ2:「観光農園」 収穫の作業を効率化


農業を始める時に畔柳さんがまず決めたのが、企業を相手にするのではなく、「お客様と交流できる農業をしたい」ということでした。

そこで、ブルーベリー栽培を事業化する際にもっともネックとなったのが収穫の手間です。ブルーベリーは小粒で、指で一つ一つ丁寧に収穫するしか方法がなく、相当な人手と時間がかかります。一般的に農作業全体に占める収穫作業の割合は約6割と言われており、収穫をいかに効率化させるかが、ブルーベリー栽培の鍵となります。

それらを一気に解決したのが、観光農園化でした。手間のかかる収穫作業をお客様にしてもらうことで、本来の作業にかかる労力が減り、収益が飛躍的に改善。一般的に、ブルーベリーを市場や販売店に出荷する場合の買取価格は、小売価格の30%から40%ほどです。しかし、観光農園で販売する場合は、中間卸業者を一切通さずダイレクトに消費者に販売するため、利益が大きくなります。観光農園では、出荷する場合の2から3倍の価格でブルーベリーを販売することができるのです。

さらに、食べ放題での売り上げも加わるので、「観光農園は優れたビジネスモデルだということ」がわかります。

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畔柳さん成功のカギ3:「IT集客」 ブログ投稿は3,000本以上


畔柳さんの農園の来園者数は、2017年には1万人に達しました。畔柳さんは「集客は一朝一夕にできるような切り札や秘策があるわけではなく、意外にも地道な活動が大半」と振り返ります。

集客に不可欠だったのは、インターネットなどを駆使し、無料で利用できるツールを使った広告宣伝です。最初に着手したのがホームページです。「農業に関するホームページの多くは、自分の事業に対する想いや物語を伝えているところが少ない」という分析をもとに、事業に対する情熱や将来の夢を共感してもらえるようなホームページを自身で作成しました。

その後ブログを始め、2008年3月から約3,000本の記事を投稿しています。ホームページのアクセス数は、シーズンオフになると1日100人以下と極端に減ります。しかしブログについては、シーズン中は1日500人、シーズンオフは300人前後。毎日ブログを書き続けることで、一定の読者を獲得できたため、ブログのアクセス数は安定しています。

農園オープン時は、口コミの宣伝を狙って、1ヶ月前からメディアや近隣住民などを対象に、お披露目期間を設けました。これが功を奏し、オープン初日から行列ができ約300人が来園しました。この勢いは衰えず、1年目はわずか29日の開園期間で3,300人が訪れる盛況ぶり。2年目はYouTube(ユーチューブ)での動画制作、3年目はホームページ上に予約システムとメールマガジンを導入し、積極的に集客を展開していきました。

さらに、2013年からFacebook(フェイスブック)を始め、ブログとFacebookを使い分けて運営しているそうです。
Facebookでは、ユーザーとつながることを目的として、食べごろのブルーベリーの品種紹介などを行いました。またブログでは、ユーザーの役に立つブルーベリーの専門的な情報を更新していきました。さらに、農園に関する情報をFacebookに投稿してくれた来園者に、プレゼントを贈るキャンペーンも実施。このようなさまざまな創意工夫が、ファンの獲得と集客につながっていったのです。

「脱サラして就農したら収入はどうなるの?」という、多くの就農希望者が抱える不安を乗り越え、豊かな暮らしを手に入れた畔柳さん。ビジネスモデルと戦略をしっかり練ることで、高収入を得ることは決して夢ではないということですね。これから就農を考えている方は、参考にしてみてはいかがでしょうか。

参考書籍
畔柳 茂樹著「最強の農起業!」(かんき出版)
https://kanki-pub.co.jp/pub/book/details/9784761272609

ブルーベリーファームおかざき
http://blueberryokazaki.com/
写真提供:ブルーベリーファームおかざき

 
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