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五つ星お米マイスター西島さんに聞く 2017年秋、注目のお米「元気な生産地」

五つ星お米マイスター西島さんに聞く 2017年秋、注目のお米「元気な生産地」

消費者の米離れが進み、厳しい状況が続いている米業界でブランド化を成功させ、一定の利益を得ている生産地が存在します。JA新すながわカエル倶楽部、島根県「弥栄町」、青森県「稲華会」などです。五つ星お米マイスターの西島さんに、元気な6ヵ所の米生産地の取り組みを教えていただきました。

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米は品種で選ぶ方が多いかもしれませんが、「お米マイスター」の最高ランク、五つ星お米マイスターの資格を持ち、東京都目黒区にある米屋「スズノブ」代表取締役の西島豊造(にしじまとよぞう)さんは、米の生産地にも注目しています。

「これから米で生き残っていくためには、農家個人で頑張るのではなく、地域で一丸となって取り組むことが大切になってきます」と語ります。

そこで、西島さんに勢いのある米の生産地6ヵ所と、その特色について教えていただきました。

五つ星お米マイスターが注目する、6カ所の産地から米農家の目指すべき未来をひも解く

「スズノブ」代表取締役であり、「五つ星お米マイスター」の西島さん

平成30年には、米の生産目標数量の配分が撤廃され、それに伴い、生産目標数量を守った農家に配布される「米の直接支払交付金」も廃止になります。「米の平成30年問題」のほか、先行きの見えない「TPP問題」など、米農家の未来は波乱を否めません。

そんな中、地域で一丸となって米作りに取り組み、躍進を続けている産地があります。西島さんがおすすめする、元気な米産地についてご紹介します。

1:北海道「JA新すながわカエル倶楽部」

JA新すながわカエル倶楽部

北海道の肥沃な大地を支える「JA新すながわ」と足並みを揃えて稲作を行っている実力派団体「JA新すながわカエル倶楽部」がタッグを組んで育てているのは、北海道の最高峰米となる大吟醸、ゆめぴりかです。農薬の使用を75%抑えて、食味と甘さに影響するタンパク質含有量を6.3%以下に抑制。粘り、甘さ、香り、ツヤ、味が際立っています。

「JA新すながわカエル倶楽部」は、栽培基準の設定が高いんです。しかし、基準が高いということは、出荷のハードルも上がるということです。レベルに到達出来ない場合は、半年間の米作りの努力が報われなくなってしまう事から、私は『栽培の基準を下げ、収入を確保した方が良いのでは』と提案したのですが、即座に断られました。それほど、自分たちの栽培技術に自信とプライドを持っていて、品質と食味へのこだわりが強いんです」(西島さん)。

流通量が多くなってしまうと、どうしても品質も下がってしまうのが今の米の流通事情です。その中で、お客様からの「本物を」という要望に対して、胸を張って紹介できるのが「JA新すながわカエル倶楽部」のゆめぴりかです。

2:島根県「弥栄町」

島根県浜田市弥栄町は島根県西部の山間部、市の中心部から車でおよそ1時間の場所に位置する小さな町です。信号は数カ所で、コンビニもなく、手つかずの自然と棚田が広がる風景はまさに秘境と言われています。

2016年、この地に誕生したブランドが「秘境奥島根弥栄」です。品種は「つや姫」と「コシヒカリ」の2種類。化学肥料を一切使わず農薬削減を徹底し、栽培方法や出荷基準にも厳しい制限を設けています。

「秘境奥島根弥栄はすべて棚田で栽培されていますが、日の当たり方や気温なども違ってくるので、丁寧に管理をしないと田んぼ1枚ごとに味が変わってしまいます。そのため、弥栄の農家は稲の状態はもちろん、天候など、この地ならではの自然の特徴までをしっかりと理解して、地域の良さが出るように品質を保っています」。

3:青森県「稲華会(とうげかい)」

色の異なる稲を使って、水田に巨大な絵を描き出す「田んぼアート」で有名な青森県田舎館村の技術者集団「稲華会」。彼らは、2016年デビューしたばかりの品種「青天の霹靂」と「あさゆき」を中心に栽培しています。

「農協を経由せず、自分たちでお米を販売する体制をとっています。食味にこだわった売れる米作りを目指しており、近年は米のブランド化や販路の拡大にも力を入れています。

また、毎年のようにお米のコンテストやコンクールの入賞者を輩出しているんですよ。青森県は寒冷な気候のため、米作りに適した土地とは言い難いんです。そんな不利な条件の中でも、コンテストで勝てるお米を作るというのはやはり技術レベルが高いからでしょう」。

4:高知県「JA四万十」

JA四万十

四国最長の一級河川、四万十川に臨む「JA四万十」。米どころのイメージが薄い高知県ですが、四万十川の清流と、土地や気候環境を味方にしたブランド米「JA四万十厳選にこまる」が注目されています。

ブランド化当初は、柔らかいだけで出来が良くなかったそうです。厳しい栽培基準を設けるなど品質の向上に努めた結果、多くの人に認められるブランドへと成長しました。

「農協の職員と普及員が若いのが特徴です。高齢の農家と一緒に力を合わせてお米を育てていて、お互い良い刺激になっているようです。まるで、おじいちゃんと孫が一緒に働いているようで微笑ましくもあります。

2017年、お米の貯蔵施設カントリーエレベーター(※)を新設しました。積極的に設備投資も始めていて、ブランドをより良くしようという機運を感じます」。

(※)カントリーエレベーター:穀物の貯蔵施設の一種。巨大なサイロ(貯蔵ビン)と穀物搬入用エレベーター、穀物の乾燥施設、調製施設の総称。

5:秋田県「JA秋田おばこ」

秋田の最大農協である「JA秋田おばこ」は、米の取扱量が約8万トンと日本一を誇ります。農家の米栽培に対する思いが強くて驚かされます。普及員の新しい考え方と、生産者の高い技術指導が品種の実力を引き出し、相乗効果によって品質が上がっているのです。

「新しい品種や技術を積極的に導入したり、農家をサポートする体制が整っている、非常に前向きで将来を考えている農協ですね

秋田米の一つ、ゆめおばこの収量や食味値について優秀者を選出する『ゆめおばこ日本一コンテスト』や、おいしいあきたこまちの上位生産者を『おばこの匠』に認定する企画など、農家のモチベーションを上げる取り組みにも積極的です」。

6:新潟県「JA北魚沼」

美しく連なる越後三山や雄大な信濃川など、豊かな自然に恵まれた北魚沼。お米の一大産地で、「北魚沼コシヒカリ」という巨大ブランドを擁していることで知られています。

「コシヒカリ」は炊きあがりのツヤと香り、強い粘り気が特長の品種です。日本全国で栽培されていますが、肥沃な栄養を含む雪解け水で育まれた「北魚沼コシヒカリ」は、米粒を1.9ミリの網で選別した大粒のコシヒカリです。さらに5段階の出荷区分で選び抜かれた「北魚沼産コシヒカリ」の風味は別格です。

「北魚沼は農家と農協との結束が固く、農協からの出荷率が非常に高い地域です。勉強熱心な農家も多いです」。

「今の時代は、お米に付加価値を与えてブランド化し、地域全体で力を合わせて売り込んでいくことが大切だと思います」と西島さん。日本の農業の変革期にある今、これまでのやり方を見直す機会が訪れています。

株式会社スズノブ
住所:東京都目黒区中根2-1-15
電話:03-3717-5059

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