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農作物ブランドを地域で守る「地域団体商標」と「地理的表示」の基本

農作物ブランドを地域で守る「地域団体商標」と「地理的表示」の基本

2017年09月27日

地域ブランドを推進する流れの中、「地域団体商標」や「地理的表示」など、農業分野の「商標登録」が注目を集めています。なぜ今、農業に商標登録が必要とされているのでしょうか。また「地域団体商標」と「地理的表示」とはどのようなもので、どのように活用していけばよいのでしょうか。今回は、農業分野の特許や商標を専門とする吉永国際特許事務所の弁理士、吉永貴大(よしながたかひろ)さんにお話をうかがいました。

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農業に商標が必要になってきた背景 競争の激化と流通の多様化があった

他製品との差別を図るために欠かせないのが、商品の名前である「商標」ですが、他の業界と比べると、農業分野ではあまり積極的には利用されてきませんでした。

「農業の流通は、農協を通じての出荷がメーンでした。その場合、他の生産者の農作物と一緒になって販売されるため、生産者はオリジナルの商標を付ける必要がなかったのです。

しかし、最近は流通が多様化し、インターネットを活用して野菜を直販する生産者が増えています。そうなると、自分の野菜を知ってもらい買ってもらうためのブランド力が必要になり、商標を付ける流れになります」(吉永さん)。

また、価格が手頃な外国産の農作物が入ってきて競争が激化しています。そのため、農産物をブランド化したり、6次産業化により加工品を販売したり、付加価値を与えることで差別化を図る動きが加速しています。

そんな中、農協や商工会、商工会議所、特定非営利活動法人(NPO)など地域の団体が、農作物に産地名をつけるなどしてブランド化する動きが活発になっています。

「そのために欠かせないのが商標であり、権利を守るためには特許庁に出願して商標登録しなければなりません」。

偽物によるブランドイメージ低下防止のため農協が共同で商標登録:比内地鶏の事例

商標登録をしなければ商品を販売できないわけではありません。しかし、ブランドを守るために登録しておくに越したことはありません。

「比内地鶏」が商標登録したのは、偽物が出回ったのがきっかけでした。比内地鶏の風味や肉質の良さが話題となった際に、ブロイラー(※)の鶏肉などを比内地鶏と偽って販売する業者が相次いだそうです。品質の劣った偽物が「比内地鶏」という名で出回れば、ブランドの価値が下がる恐れがあります。

そこで、比内地方の農協が共同で地域団体商標として「比内地鶏」を登録、品質を守るために、比内地鶏と名乗れるルールを設けました。

「比内地鶏」と名乗るには、比内地方で生産された鶏で、さらに、秋田比内鶏のオスとロードアイランドレッド(※)のメスをかけあわせた鶏であることを条件としました。これらの細かい規定をクリアし、運用できる農家だけが比内地鶏の名前を使うことができます。

「商標に関する問題は、商品が売れ出した時に出てきます。比内地鶏の例のように、偽物が出回ってブランドイメージが傷つくというのもそうです。他人が勝手に商標登録してしまい、自分の商標が使えなくなるケースも考えられます。商標登録は先願主義、つまり出願が早い者が勝ちなのです」。

(※)ブロイラー:短期間で急速に成長する肉鶏の品種
(※)ロードアイランドレッド:アメリカ原産のニワトリの品種

地域のブランド戦略には「地域団体商標」と「地理的表示」を活用:松坂牛・但馬牛の事例

地域ブランドの展開を考える上で、戦略的に活用したいのが「地域団体商標」と「地理的表示」です。

「地域団体商標」とは、地域ブランドが長年培ってきた信用や品質の高さを守るために、2006年より特許庁の管轄で施行が始まった制度で、地域の団体(農協、商工会や商工会議所、特定非営利活動法人〈NPO〉)が共同で権利を持ちます。

登録の主な条件として、「ブランド名が地域名+商品名などの文字から構成されていること」「出願者が農協などの組合であること」「対象の地域ブランドが広く知られていること」などが挙げられます。登録事例としては、前述した「比内地鶏」のほか「松阪牛」や「但馬牛」などがあります。

なお、地域団体商標は、申請した団体が商標の使用を独占できる権利です。不正使用に対しては自ら権利行使(差止請求、損害賠償請求)することができます。

2015年には、地域で作られた伝統のある農林水産物食品を保護し、地域共有の知的財産として保護する「地理的表示保護法」が定められました。これは、地域ブランドの品質に国がお墨付きを与えるものです。不正使用に対しては、自分たちの代わりに国が取り締まってくれるため、生産者の負担が減ります。

ただし保護対象となるには、その地域で25年以上ブランドが続いており、周知度の高いことなど厳しい条件をクリアしなければなりません。

「地域団体商標」や「地理的表示」を両方登録することも可能

「地域団体商標と地理的表示は保護の側面が異なるため、両方に登録をして、双方の利点を享受することもできます。松阪牛や但馬牛は、地域団体商標も地理的表示登録もしています。

ただし両方の登録を行った場合、地理的表示は地域の共有財産となるため、生産者から登録産品を譲り受けた卸売業者や、その卸売業者から譲り受けた小売業者もGIマーク(※)を使用できることになります。

「地域団体商標のみの場合、農協等の権利者のみが地域団体商標で地域ブランドの商標を独占使用できました。しかし地理的表示を登録すると、卸売業者や小売業者など正当な使用者に対して、差し止め請求などの権利行使ができなくなります。これをメリットと取るか、デメリットと取るかはその地域の状況によります」。

(※)GIマーク:登録された産品の地理的表示と併せて付すもので、産品の確立した特性と地域との結び付きが見られる真正な地理的表示産品であることを証するもの。

大切に育てた農作物に名前をつけて販売している農家の方や地域の皆さんは、これを機に商標登録を検討してみてはいかがでしょうか。条件をクリアしていれば、地域の農産物のブランド力を上げるために、地理的表示登録を検討してみるのも一案です。

【取材先情報】

吉永国際特許事務所

住所:東京都渋谷区笹塚1-56-10 笹塚総榮ビル610
電話: 03-6300-6881
http://www.yoshinagapat.com

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