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江戸時代から親しまれる東京名物「べったら漬け」

江戸時代から親しまれる東京名物「べったら漬け」

2017年10月24日

「べったら漬け」というユニークな名前の、ほんのり甘いこの漬け物。実は、東京生まれです。由来は諸説ありますが、江戸っ子に愛されてきた漬け物です。べったら漬けのおいしさの秘密は漬け床の材料にありました。今回は「べったら漬け」についてご紹介します。

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諸説ある「べったら」の名前の由来

べったら漬けが生まれた由来として一般的に知られているのは、「日本橋本町の宝田恵比寿神社の例祭の市で売られたのがべったら漬けの始まり」ではないかと言われています。

名前についてはいくつか説があります。

■漬けた大根の表面に漬け床の米麹がベタベタついていたから

■売り子の若い男性が女性客の着物の袖に「べったらだべったらだ」とはやしがら米麹をつけようとして売るのがスタイルだった

■売り歩く足元がベタベタとぬかるんでいたから

■恵比寿様の例祭で売っていたので「えべす」→「べったら」と訛った

神社の祭神の恵比寿様にちなんだ説以外は、漬け床のベタベタが由来となっていますので、やはり漬け物の触感から生まれた名前と考えるのが自然かも知れません。

べったら漬けは江戸で人気を博し、べったら漬け発祥の例祭の市は明治頃から「べったら市」という名前に変わったようです。この市は神様が出雲に里帰りする旧暦10月の神無月に、出雲に帰らず留守番をしてくれる恵比寿様を慰めるお祭りで、市は祭とその前夜にあたる、10月19日と20日に開かれています。

べったら漬けの別名は「浅漬け」。なぜべったら漬けを浅漬けと呼んだのか

冷蔵庫のない時代、漬け物といえば基本は塩漬けの保存食でした。江戸時代は、それまで長持ちさせる事のみを目的としていた漬け物がおいしく食べられるように色々と工夫され始めた時代で、現在の東京都にある東海寺で「沢庵漬け」が考案され、人気となりました。

現代の沢庵は調味液に漬けた物が主流ですが、元々は干した大根を塩と共に数ヶ月かけてぬか漬けにする製法でした。干した後さらに水分が抜けるために歯ごたえも強くなり、簡単にかみ切れなくなります。塩分濃度も、一切れでご飯が食べられる程塩辛いので冷蔵庫がなくても長持ちします。

それに対してべったら漬けは、干さずに生のダイコンを塩で軽く下漬けした後、米麹に漬けるので保存性はありません。水分量も多いのでサクサクとした瑞々しい食感が残っているため「浅漬け」と呼ぶ事で、人気を二分するダイコンの漬け物を区別したのだと思われます。

ちなみに現在「浅漬け」という名前でイメージされる漬け物と言えばダイコンはもちろん、キュウリ、キャベツ、サクサイなどを塩で揉んだり、塩水に漬けたりするタイプの物ですが、これは元々「即席漬け」「一夜漬け」と呼ばれている物です。

 
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江戸っ子の好物「三白(さんぱく)」とは

べったら漬けが人気を得た理由がもう一つあります。江戸っ子の食の好みを言い表すのに、「三白」という言葉があります。これは「白米」「豆腐」「大根」の三つの白い食べ物を指します。(「鯛」と「白魚」を加えて「五白」という事もあります)

白米を食べる習慣は、江戸が将軍のお膝元で侍が多く住む都会である事の象徴でもありましたので、白米食は江戸に住む者のステータスとして好まれたようです。豆腐やダイコンについては白米に合い、魚などに比べて安価で年中手に入る上に、しみじみとした淡白なうま味がある点が江戸の文化の「粋」に通じる物があります。

沢庵は強い塩気と発酵で得られるうま味が白米に合うので好まれましたが、ぬか床に漬けられる事で黄褐色になってしまいます。それに対し、べったら漬けのダイコンは白いままです。

また、漬け床に使われる米麹の原料は白米ですので、ちょっとした贅沢品でもありました。べったら漬けはお茶請けとしても人気がありましたが、三白のうち二つを使った白い漬け物で当時は貴重だった甘い味がするとくれば、人気が出ないはずはありません。おそらく「白くてちょっとよそ行きの漬け物」として、おかずとしてだけでなくお茶請けとしても愛されました。

米麹を使った漬け物の色々 べったら漬けは「甘酒」に漬ける

べったら漬けの味の特徴は甘みです。沢庵とべったら漬けの漬け床は、ぬかと米麹で異なりますが、味わいの違いの理由はそれだけではありません。例えば、べったら漬け以外にも米麹を使った漬け物の例を挙げると東北地方で漬けられる「三五八漬け」があります。これは塩、米麹、米を3:5:8の割合で合わせた床を使います。この漬け物はあまり塩辛くはなく、独特のうま味がありますがべったら漬けのような甘みはありません。

江戸時代のべったら漬けは米麹の他に飴を加えたともありますが、使う米麹は米麹をそのままではなく、甘酒として発酵させてから漬け床に使います。べったら漬けの味の一番の決め手は甘酒になった米麹なのです。

「甘酒」と米麹の違い やわらかい甘味は体に嬉しい効果があった

べったら漬けは塩で軽く下漬けした後、甘酒に更に砂糖を加えた物に漬けて作る製法もありますが、下漬けの後は何も加えない甘酒のみに漬ける方法もあり、そのレシピで漬けた物は品の良いやわらかい甘みに仕上がります。

甘酒は酒粕を解いて砂糖を足して作る物もありますが、米麹を使った作り方は簡単で、熱めの湯でほぐした米麹を保温するだけです。そうすると麹菌の酵素が米のデンプンを糖化させるため甘い飲み物になるのです。江戸は上水(水道)がある程度完備されていましたが、水質があまり良くない地区や井戸が足りない地域もありましたので、夏場の水分補給のために麦湯(麦茶)と並んで甘酒が愛飲されていました。

甘酒の成分は点滴と似ているため「飲む点滴」とも呼ばれていますが、甘酒に含まれる甘さの元は、デンプンを最も単純な形に分解した「ぶどう糖」になっているため、消化に時間がかからず体に優しいのです。

腸内環境を整える目的で食べやすいべったら漬け ただし塩分には注意

べったら漬けは生のダイコンより水分を抜いた分だけ繊維質が多くなり、かといって噛みきれないほど固くもないので食物繊維が効率良く摂れる他、大根自体に消化を助ける酵素のジアスターゼも含んでいるため腸内環境の改善を助ける働きがあります。

また、漬け床の甘酒になった米麹も洗い流さず食べるのが基本なのでわずかながら、甘酒の栄養成分も摂る事ができます。甘酒のおかげで甘く口当たりは良いのですが下漬けの時に塩をしっかり使うので、塩分は高めの漬け物です。高血圧の人はご注意ください。

 

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