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べったら漬けとは?名前の由来・栄養・作り方・保存方法など紹介

べったら漬けとは?名前の由来・栄養・作り方・保存方法など紹介

「べったら漬け」というユニークな名前の、ほんのり甘いこの漬け物。実は、東京生まれです。由来は諸説ありますが、江戸っ子に愛されてきた漬け物です。べったら漬けのおいしさの秘密は漬け床の材料にありました。今回は「べったら漬け」についてご紹介します。

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べったら漬けって?

東京の名産品である「べったら漬け」は大根の漬け物の一つで、江戸時代から江戸っ子に愛されてきた食べ物です。

漬け物の表面に付いている甘酒の麹がべたべたとしていることが起因して、「べったら漬け」と呼ばれるようになったといいます。現代と違い、当時は贅沢品として扱われていたようです。

東京の秋の風物詩のひとつである「日本橋べったら市」は江戸時代から続くお祭りで、毎年たくさんのべったら漬けの屋台が並びます。皮つき・皮なしなど、味や食感の違いを楽しむことができます。

ほんのり甘く、シャキシャキとした歯ごたえが人気の漬け物です。

諸説ある「べったら」の名前の由来は?

べったら漬けが生まれた由来として一般的に知られているのは、「日本橋本町の宝田恵比寿神社の例祭の市で売られたのがべったら漬けの始まり」ではないかと言われています。

名前についてはいくつか説があります。

■漬けた大根の表面に漬け床の米麹がベタベタついていたから

■売り子の若い男性が女性客の着物の袖に「べったらだべったらだ」とはやしがら米麹をつけようとして売るのがスタイルだった

■売り歩く足元がベタベタとぬかるんでいたから

■恵比寿様の例祭で売っていたので「えべす」→「べったら」と訛った

神社の祭神の恵比寿様にちなんだ説以外は、漬け床のベタベタが由来となっていますので、やはり漬け物の触感から生まれた名前と考えるのが自然かも知れません。

べったら漬けは江戸で人気を博し、べったら漬け発祥の例祭の市は明治頃から「べったら市」という名前に変わったようです。この市は神様が出雲に里帰りする旧暦10月の神無月に、出雲に帰らず留守番をしてくれる恵比寿様を慰めるお祭りで、市は祭とその前夜にあたる、10月19日と20日に開かれています。

べったら漬けに含まれる栄養や効果効能は?

腸内環境に良い

べったら漬けには米麹が使われています。米麹には腸内の善玉菌を増やす「麹菌」が含まれているため、腸内環境を整える働きをしてくれます。さらに米麹には「消化酵素」も含まれているので、べったら漬けを食べることで便秘を解消できるともいわれています。

漬け物などの発酵食品には、健康に良いとされるさまざまな効果があり、腸内環境を整えることの他にも、動脈硬化の予防も期待できるようです。
また、べったら漬けにはビタミンCも豊富に含まれています。

カロリーはそのままの3倍

大根1本分(200g)のカロリーは36kcalほどです。これをそのままべったら漬けにすると、その約3倍の114kcalほどになります。

漬け物1枚(10g)あたりに換算すると6kcalほどですが、例えば5枚食べると30kcalほどになり、大根1本分とほぼ同量のカロリーになります。

糖質量も多め

大根そのものの糖質量は100gあたり2.8gほどですが、べったら漬けにすると、1本あたり(200g)約24.4gの糖質量となります。

大根をべったら漬けにすることで糖質量は4倍近くに跳ね上がるため、食べ過ぎには注意した方がよいでしょう。

カロリーを抑えながらべったら漬けを食べるには、他の野菜と一緒に食べることがおすすめです。

べったら漬けはサラダとも相性が良く、千切りにした野菜に千切りにしたべったら漬けを混ぜると、一味違ったサラダになり、味のバリエーションも広がります。

べったら漬けと沢庵・浅漬けの違いは?

大根を使った漬け物にはいろいろなものがあります。中でも「べったら漬け」「沢庵」「浅漬け」は人気の漬け物ですが、それぞれの違いについてお伝えします。

べったら漬け

べったら漬けは、塩で下漬けした生の大根を、砂糖や米麹、塩などで漬けたものです。

漬け込んでから熟成発酵させるのが伝統的な製法だといわれています。漬け物には塩味のものが多いなか、べったら漬けは米と米麹による甘酒の独特の甘味が特徴の、甘口の漬け物です。

沢庵

沢庵も江戸時代から食べられていた漬け物です。漬ける前に水分をしっかりと抜くため、大根を干すことから始まります。

沢庵本来の漬け方は、まず、しっかりと水分が抜けた大根と、糠・塩・砂糖・唐辛子を混ぜ合わせたものと大根を交互に層にして漬けていきます。そこに重石をして、2週間ほどすると水分が上がって食べ頃になります。

ただ、このような本来の漬け方をしているものは、最近ではなかなか見かけることができないようです。

スーパーで販売されている沢庵のほとんどは、調味液に漬けて作られた簡易版のようなものであるため、昔ながらの味とは少し異なっているようです。

浅漬け

浅漬けの材料は、大根と塩だけです。塩もみをした大根を一晩置いたもので、一夜漬けとも呼ばれています。

浅漬けは冷蔵庫などがない古い時代の保存食として、欠かせない食べ物の一つだったようです。

浅漬けは、切った大根に塩をまぶして揉んだあと、風味付けにカットした昆布や唐辛子、ゆずなどと一緒に30分から2日間ほど漬けると出来上がります。

漬け物の中でも最も簡単に作ることができることが特徴です。

家庭でできるべったら漬けの作り方は?

江戸時代には贅沢品であったといわれるべったら漬けですが、今では家庭でも作ることができます。

市販のものは意外と値段が高いですが、手作りすると費用を抑えられますし、好みの味にできるのも嬉しいです。

本格的なべったら漬けには米麹が使われますが、手軽に手に入らなかったり、温度管理が難しかったりする場合は甘酒で代用できます。

甘酒だと米麹よりも簡単に、手軽に作ることができます。

甘酒を使ったべったら漬けの作り方は?

大根を塩水に漬け込み、重石をして2日ほど置きます。

取り出してから1〜2時間陰干しして、甘酒の中に1週間ほど漬けます。5日間ほどで味はなじみますが、1週間ほど置いた方がさらに美味しくなります。少し時間はかかりますが、手作りは簡単で美味しく仕上がるのでおすすめです。

べったら漬け作りに初めて挑戦する場合には、甘酒を使う方が失敗なく作ることができます。

べったら漬けの保存方法は?

食べ頃になったら冷蔵庫へ

べったら漬けは、食べ頃になったら冷蔵庫で保存するのが正しい保存方法です。

室内の温かい場所に置いておくと発酵が進んで酸味が出てきてしまいます。

米麹はそのままでOK

べったら漬けを冷蔵庫で保存する際、米麹のつけ床に浸かった状態か、または、つけ床に軽く付けた状態で容器に入れて保存することをおすすめします。

保存中もつけ床の味が漬け物にしみ込むため、風味が増しておいしくなります。密閉容器に入れたものは冷蔵庫で約1カ月間保存が可能です。

冷凍保存はNG

漬け物類は冷凍保存には向いていないといわれています。

特にキュウリやナスなど、水分の多い食材を冷凍してしまうと、漬け物特有のシャキシャキとした食感が損なわれてしまいます。

べったら漬けも、水分を多く含んでいる漬け物なので、冷凍保存は避けた方がよいでしょう。

べったら漬けの別名は「浅漬け」。なぜべったら漬けを浅漬けと呼んだのか

冷蔵庫のない時代、漬け物といえば基本は塩漬けの保存食でした。江戸時代は、それまで長持ちさせる事のみを目的としていた漬け物がおいしく食べられるように色々と工夫され始めた時代で、現在の東京都にある東海寺で「沢庵漬け」が考案され、人気となりました。

現代の沢庵は調味液に漬けた物が主流ですが、元々は干した大根を塩と共に数ヶ月かけてぬか漬けにする製法でした。干した後さらに水分が抜けるために歯ごたえも強くなり、簡単にかみ切れなくなります。塩分濃度も、一切れでご飯が食べられる程塩辛いので冷蔵庫がなくても長持ちします。

それに対してべったら漬けは、干さずに生のダイコンを塩で軽く下漬けした後、米麹に漬けるので保存性はありません。水分量も多いのでサクサクとした瑞々しい食感が残っているため「浅漬け」と呼ぶ事で、人気を二分するダイコンの漬け物を区別したのだと思われます。

ちなみに現在「浅漬け」という名前でイメージされる漬け物と言えばダイコンはもちろん、キュウリ、キャベツ、サクサイなどを塩で揉んだり、塩水に漬けたりするタイプの物ですが、これは元々「即席漬け」「一夜漬け」と呼ばれている物です。

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江戸っ子の好物「三白(さんぱく)」とは

べったら漬けが人気を得た理由がもう一つあります。江戸っ子の食の好みを言い表すのに、「三白」という言葉があります。これは「白米」「豆腐」「大根」の三つの白い食べ物を指します。(「鯛」と「白魚」を加えて「五白」という事もあります)

白米を食べる習慣は、江戸が将軍のお膝元で侍が多く住む都会である事の象徴でもありましたので、白米食は江戸に住む者のステータスとして好まれたようです。豆腐やダイコンについては白米に合い、魚などに比べて安価で年中手に入る上に、しみじみとした淡白なうま味がある点が江戸の文化の「粋」に通じる物があります。

沢庵は強い塩気と発酵で得られるうま味が白米に合うので好まれましたが、ぬか床に漬けられる事で黄褐色になってしまいます。それに対し、べったら漬けのダイコンは白いままです。

また、漬け床に使われる米麹の原料は白米ですので、ちょっとした贅沢品でもありました。べったら漬けはお茶請けとしても人気がありましたが、三白のうち二つを使った白い漬け物で当時は貴重だった甘い味がするとくれば、人気が出ないはずはありません。おそらく「白くてちょっとよそ行きの漬け物」として、おかずとしてだけでなくお茶請けとしても愛されました。

米麹を使った漬け物の色々 べったら漬けは「甘酒」に漬ける

べったら漬けの味の特徴は甘みです。沢庵とべったら漬けの漬け床は、ぬかと米麹で異なりますが、味わいの違いの理由はそれだけではありません。例えば、べったら漬け以外にも米麹を使った漬け物の例を挙げると東北地方で漬けられる「三五八漬け」があります。これは塩、米麹、米を3:5:8の割合で合わせた床を使います。この漬け物はあまり塩辛くはなく、独特のうま味がありますがべったら漬けのような甘みはありません。

江戸時代のべったら漬けは米麹の他に飴を加えたともありますが、使う米麹は米麹をそのままではなく、甘酒として発酵させてから漬け床に使います。べったら漬けの味の一番の決め手は甘酒になった米麹なのです。

「甘酒」と米麹の違い やわらかい甘味は体に嬉しい効果があった

べったら漬けは塩で軽く下漬けした後、甘酒に更に砂糖を加えた物に漬けて作る製法もありますが、下漬けの後は何も加えない甘酒のみに漬ける方法もあり、そのレシピで漬けた物は品の良いやわらかい甘みに仕上がります。

甘酒は酒粕を解いて砂糖を足して作る物もありますが、米麹を使った作り方は簡単で、熱めの湯でほぐした米麹を保温するだけです。そうすると麹菌の酵素が米のデンプンを糖化させるため甘い飲み物になるのです。江戸は上水(水道)がある程度完備されていましたが、水質があまり良くない地区や井戸が足りない地域もありましたので、夏場の水分補給のために麦湯(麦茶)と並んで甘酒が愛飲されていました。

甘酒の成分は点滴と似ているため「飲む点滴」とも呼ばれていますが、甘酒に含まれる甘さの元は、デンプンを最も単純な形に分解した「ぶどう糖」になっているため、消化に時間がかからず体に優しいのです。

腸内環境を整える目的で食べやすいべったら漬け ただし塩分には注意

べったら漬けは生のダイコンより水分を抜いた分だけ繊維質が多くなり、かといって噛みきれないほど固くもないので食物繊維が効率良く摂れる他、大根自体に消化を助ける酵素のジアスターゼも含んでいるため腸内環境の改善を助ける働きがあります。

また、漬け床の甘酒になった米麹も洗い流さず食べるのが基本なのでわずかながら、甘酒の栄養成分も摂る事ができます。甘酒のおかげで甘く口当たりは良いのですが下漬けの時に塩をしっかり使うので、塩分は高めの漬け物です。高血圧の人はご注意ください。

 

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