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自然栽培でハーブを育てる 香りのある草で生活に彩りを

自然栽培でハーブを育てる 香りのある草で生活に彩りを

長野県上伊那郡箕輪町で、自然栽培のハーブや西洋野菜を育てる長谷川寛(はせがわひろし)さん、晴子(はるこ)さん夫妻。ハーブ園をはじめて20年。長谷川さん夫妻が感じるハーブの魅力について、寛さんにうかがいました。

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ハーブ

箕輪町でハーブ園をはじめて20年のナチュラルセンス

-長谷川さんたちが育てているハーブについて教えてください。

私たちの農園「ナチュラルセンス」では、ハーブと西洋野菜を育てています。育てているハーブは20種類ほど。スペアミントやイタリアンパセリ、パクチーなど、季節や土地に合った品種を育てています。ハーブの他には、カラートマトや花ズッキーニなどの西洋野菜を作っています。

ハーブと言われても、みなさんはピンとこないかもしれません。私たちは「香りがあって、人間の暮らしに役立つもの」と定義しています。そのため、食品だけでなく、化粧品やハーブティー、入浴剤などに使える香草をハーブと呼んでいます。ハーブと聞くと外国産のイメージが強いかもしれませんが、しそやヨモギなど国産の香草もハーブです。

また、ハーブの花の多くは、エディブルフラワーとして食べることができます。ただ、花を食べるときは、種から育てたものだけを食べるのがルールです。園芸用に売っている苗は基本的には鑑賞のためのもので、農薬を使っているので食べられません。食べられるのは種から育てたものだけなので、注意してください。

ハーブ
-ハーブにはたくさんの種類がある上に、花まで食べられるなんて魅力的ですね。
 一年の中でいつが忙しいのでしょうか。

6月から8月頃は収穫のため忙しくなります。その後、雪が降る頃までは出荷を続けて、12月頃からは加工品を作ります。主に、ハーブティーやバーブソルト、ハーブシュガーなどを作っています。また身近に感じてもらうために、5種類のハーブと海塩、岩塩を使って、オリジナルのハーブソルトを作ってもらうワークショップも行っています。

生のハーブは、食品メーカーを通してレストランやスーパーなどに卸していて、大手ファーストフードチェーン店でも、私たちのハーブを使っていただいています。野菜を作りながら畑の一角で作っている農家さんはたくさんありますが、ハーブ專門の農家さんはあまり多くないと聞きます。やはり野菜と比べて料理で使われる量は少ないので、売りやすい野菜を作る農家さんが多いようです。

ハーブ

-ハーブを專門で育てる農家が少ない中、なぜハーブ農園を始めたのでしょうか。
 ご実家がハーブ農家なのでしょうか。

夫婦ともに出身は関東ですし、もともと農家ではありませんでした。1998年にこの土地に来てハーブ農園を始めましたが、以前は農業に関係する会社で勤めていましたし、妻は花屋で働いていました。

ハーブとの出会いは、大学生の頃です。雑誌を読んでいて、ハーブの存在を初めて知りました。大学で牧草など牛の飼料作物について学んでいたので草花に興味があり、「香りのある草」という存在に惹かれたのです。どういった草なのか全くわからなかったので、ハーブ農園に見学に行き、とても興味をもったのでそのまま就職することにしました。

その後、ハーブの苗を生産したり、園芸資材や種苗を輸入する仕事をしていたのですが、10年ほど働いたタイミングで、ハーブを育ててみないかと知人に誘われたのをきっかけに、手放すビニールハウスをお借りしてはじめました。収入が安定するのか不安もありましたが、自分で栽培してみたいという気持ちもあったので、挑戦することに決めました。

ハーブ

【関連記事はこちら!】
>キッチン菜園を始めよう!栽培方法とオススメの育てやすい野菜
 

-園芸会社やハーブ農園での経験から、知識や経験があってのスタートですが、
 実際に始めてみると何が大変でしたか。

最初は、育てるハーブや野菜選びに苦労しました。この土地で育てるには何が合うのかわからなかったので、三年位は試行錯誤しました。

また、自然農法で始めたので、土作りにも時間がかかりました。ハーブ農園を始めた頃、ちょうど「有機農業」という言葉が世の中に出始めました。ハーブ農園で働いているときは、農薬を使って苗を作っていたので、農薬を使わない育て方をしたいと思いました。

ただ、農薬を使わないと虫がたくさん出てきます。唐辛子やにんにくを用いて虫の発生を抑える方法も色々試しましたが、予想外のことばかり起きて簡単には虫が収まりませんでしたが、以前のオーナーも無農薬でハーブを作っていたので、諦めずに続けてきました。

20年経って、土の状態はかなり良くなったと思います。生態系がしっかりとできてきたため、虫の対処法も変わりました。カマキリやカエルなど、生態系ピラミッドの上位に位置する昆虫たちが、ハーブを食べる虫を食べてくれるのです。生態系を維持するためのポイントは、草を抜かないで自然に近い状態にすることです。そのため、私たちの農園は草がボーボーで手入れされていないように見えますが、虫を発生させないためには大切な事なのです。

また、自然農法なので、化学肥料を使っていません。肥料を与え過ぎるとハーブの香りが薄まってしまうので、畑に生えている草を土の中に混ぜて「緑肥」として使って栽培しています。私たちは、ハーブが育ちやすい環境を整えているだけ。それ以上のことをしているわけではないのです。

ハーブ
-あれこれと手を加えるのではなく、環境づくりがポイントなのですね。
 最後に、今後の展望を教えてください。

ハーブを知ってもらって、使っていただくことが一番嬉しいので、みなさんがハーブに接してもらう機会をもっと増やしたいと考えています。野菜と比べて、一般的では無かった30年前は、ハーブを蛇のハブと間違えられて「ハブ酒は飲めるの?」「蛇はどこで飼ってるの?」など聞かれた程です。

その頃に比べれば、認知度は上がってきたと思います。料理番組などでも、ハーブとひとくくりにまとめられる訳ではなく、バジルやローズマリーなど、それぞれの名前が出るようになりました。

今後、ハーブをより身近なものにするためには、直接触ったり、体感してもらう必要があると考えています。そのために、積極的にマルシェに出店したり、イベントを開催したりしています。先日は知人の自転車屋さんとコラボレーションして、ハーブ農園までサイクリングした後、食べられるハーブのお花と野菜を、持ってきたパンに挟んでもらって食べるイベントを開催しました。採れたてのハーブをみなさん喜んでいただきました。この様な機会をもっと増やしたいと考えています。

ハーブは、お茶に入れたり、料理に使ったり、香りを楽しんだり、さまざまな楽しみ方があります。野菜と比較すると香りや彩りといった付加価値をつけられます。そんな魅力を多くのみなさんに届けるため、これからもハーブ作りを続けていきます。
ハーブ

写真提供:岩澤深芳
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