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蜜があるリンゴは甘い?蜜入りリンゴの選び方・代表品種など紹介

蜜があるリンゴは甘い?蜜入りリンゴの選び方・代表品種など紹介

「蜜入りリンゴ」と聞いただけで甘酸っぱいおいしいリンゴの味が思い浮かびます。「蜜」が入っている、と聞くと強い甘みを想像しますが、リンゴに入っている「蜜」の正体はもっと別の物です。リンゴの「蜜」の正体とは一体何でしょうか。

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リンゴの蜜は自然とできるもの

リンゴの蜜

蜜入りのリンゴは甘いと言われています。実際に蜜入りのリンゴは甘くておいしいのですが、出荷前のリンゴに人工的に何かを添加して付加価値を付けている、というわけではありません。リンゴの蜜は、熟していく上で起きる生理的な作用から作られるものです。

日光を浴びる事でリンゴはおいしい味を作り出す

リンゴは実を大きくするために、光合成で栄養を蓄えます。まず、葉に当たった太陽の光によってデンプンを作り出します。デンプンは、実に必要な成分ですので、速やかに果実の部分に届ける必要があります。そのため、リンゴの木はデンプンを「ソルビトール」という水に溶けやすい性質の糖アルコールに変えて、枝を経由して果実に送り届けます。

ソルビトールは果実の部分に届くと、再び色々な糖分に変化します。

  • 果糖
  • ブドウ糖
  • 果糖+ブドウ糖→ショ糖

この他、ソルビトールが一度ブドウ糖に変わった後に再度デンプンに合成される事で、実を大きくします。果実にデンプンが引き寄せられるのは、種子が作り出す植物ホルモンの作用です。

秋になるとデンプンが糖に変わりリンゴが甘くなる

リンゴの蜜

夏に日光をたくさん浴びる事で、果実が大きくなっていきます。そして秋になって種子が十分に成熟すると、今度は鳥や動物に食べてもらうために残ったデンプンが糖に変化して行き、果実が甘くなっていきます。

リンゴの甘みは、糖が作られる事で増して行き、同時に酸味の元である成分のリンゴ酸の減少も始まります。そうなると、酸味が低くなる事で更に相対的に甘みが増して行く事になります。甘みの材料は日光が作る事になるため、葉に多く日光を浴びたものほど果実に糖が蓄えられ、さらに収穫を遅くして、木の上で果実が糖を作る時間を長くしたものほど甘くなります。

この仕組みと時期が蜜入りリンゴが出来る鍵になります。

リンゴの蜜の正体はソルビトール

リンゴの蜜

リンゴが大きく甘くなる過程で、葉が作って実に送り込んで来たソルビトール。実はリンゴの蜜の正体はこの成分です。ですが、ソルビトール自体には強い甘みはありません。

ではなぜ蜜入りのリンゴは甘いのでしょうか。

 蜜の正体ソルビトールとは

先にも書いた通り、葉がデンプンを果実に送るために糖アルコールに変えたものが「ソルビトール」です。

リンゴの甘さを作り出す素である成分ですが、他にも色々な働きを持っています。「ソルビトール」という名前を聞いたことがある、という方もいらっしゃるかもしれません。

実はソルビトールは、食品添加物としてもよく使われている成分なのです。口の中に入れると熱を吸収して涼やかさを感じさせる作用を持つので、それを利用してお菓子などの清涼剤として使われます。他にも保湿剤などにも使われます。カロリーが砂糖より低いので、甘味料として使われる事もありますが、甘み自体は砂糖の6割程度で、砂糖と同程度の甘さを得るためには砂糖より多く摂取する必要があります。

このようにソルビトール自体は甘くないはずなのに、なぜソルビトールである「蜜」が入ったリンゴは甘いのでしょうか。

甘くおいしく実ると「ソルビトール」が果実にたまる

蜜入りのリンゴはおいしいりんごであるのは間違いないのですが、逆にいうと、必ず蜜が入らないとおいしくないのかというと、答えはNOです。品種によっては、糖度が高くおいしいものでも蜜が入っているとは限りません。蜜入りのリンゴができるポイントは、品種と収穫時期にあります。蜜が入りやすいリンゴの代表は「ふじ」です。

「ふじ」は日本のリンゴでも代表的と言っていいほど好まれる品種ですが、収穫時期は晩秋で気温が低くなっています。そのため、葉で作られたソルビトールが果実に送られても糖に変換する酵素の働きが鈍っています。また「ふじ」は元々糖度が高い品種であるため、酵素の働きが鈍るほかにも果実に十分な糖が蓄えられた結果、ソルビトールが余ってしまい「蜜」に見える状態で果実に蓄えられています。

蜜入りリンゴの選び方は?

蜜入りリンゴ選びのコツ

まず、中くらいのサイズのリンゴを選ぶことです。大玉に比べ、中玉や小玉の方が蜜が入っている確率が高く、日持ちもします。また、手に持った時に重量感があるものを選ぶこともポイント。みずみずしくて蜜が入っている可能性が高いです。

見分け方のポイント

リンゴのお尻のへこんでいる部分が薄緑色だったり、とんがり気味で狭いものは、たいてい未成熟で蜜があまり入っていません。皮が全体的に赤くてつやがあり、お尻の部分が黄色くなっているものが良いでしょう。

蜜入りリンゴのほとんどは、お尻が丸みをおびていて、赤から淡いオレンジ色をしています。また、ツルが太く、ツル元が深くくぼんでいて変形していないものが良いです。サンふじなどは、袋をかけない栽培ですので、他のリンゴのように表面がツヤツヤしていません。手で触ってみて皮の表面がザラザラしているもの、果実表面にある点々の模様、果点がゴツゴツしているものが良いでしょう。

蜜入りリンゴの代表品種は?

はるか

はるかは、2002年岩手大学農学部において、ゴールデンデリシャスを種子親、スターキングデリシャスを花粉親とし、自然交雑種子の実生から選抜育成されたもので、滝沢市で育った品種です。

つるりとした淡いレモンイエローの肌で、豊かな香りとシャッキリとした食感を持ち、蜜がたっぷりと入っています。

はるかの糖度は平均15度以上で、一般のりんごに比べ群を抜いて高いのが特徴。しかし、収穫できる量は少なく、栽培も難しいため、滅多にお目にかかることのない超貴重品種です。収穫時期は11月上旬~12月下旬で生食やジュースにして食べるのが良いでしょう。

サンふじ

サンふじとふじの違いは、袋をかけて栽培するか、袋をかけないで栽培するかということです。ふじは鮮やかな紅色でつるつるツヤツヤです。しかし、ずば抜けた甘さはなく、そのままでも食べられます。

サンふじは鮮やかさがあまりなく、ザラザラしていますが、甘みが多く、リンゴ本来のコクのある味が特徴。サンふじの「サン」は太陽のことで、太陽の光をたっぷり浴びた品種を意味しています。

ふじの栽培は袋をかける方法が当たり前でしたが、1個1個袋をかける作業は生産者への負担が問題でした。袋が外れて育ったリンゴに着目したのが始まりとなり、地道な研究と作業のもと、太陽の光に当てる栽培方法で育てた無袋ふじは、糖度が2度ほど上がり、酸味も増え、これまでにない濃厚な美味しさのリンゴとなりました。収穫時期は11月中旬~3月頃で、12月から出荷が開始されています。

こうとく

こうとくは、東光という品種の自然交雑から青森県で生まれた品種です。1個の大きさは150グラム~180グラムが平均的サイズです。全面に蜜が入り、食感、香りが高いリンゴとして評価が高くなってきました。

これまでは着色が悪く小玉なリンゴとして長い間、決定的に市場から低く評価されてきたリンゴですが、見た目とは裏腹に蜜が多く、今では幻のリンゴと言われています。10月下旬~11月上旬にかけて収穫され、出回るのは11月~1月頃までが多いようですが、食べ頃の旬は11月~12月頃までのようです。

りんごが1年中販売されている理由は?

冷蔵保存されている

りんごは毎年、8月~11月にかけて収穫されており、この頃にりんごの流通量がピークを迎えます。収穫してから3月頃までに販売されるりんごは、普通冷蔵庫で管理され、お客様の注文に応じて集荷されます。冷蔵庫内の温度は0度で、湿度は90%前後で貯蔵されています。

CA貯蔵で保管されている

CA冷蔵庫では、4月頃から販売されるりんごを貯蔵しており、収穫直後から3月末まで密閉貯蔵されます。普通の冷蔵庫の約2倍の長期保存ができます。酸素濃度は3%、CO2濃度は3%、N2は3%、温度は0度、湿度は90%前後で貯蔵されています。りんごは収穫後でもまだ生きており、私たちと同じように空気中の酸素を必要とし呼吸します。呼吸をすることにより、エネルギーを消費してしまうのですが、CA貯蔵は、酸素、二酸化炭素、窒素、湿度、温度を調整し、鮮度の良い長期の貯蔵を可能とする方法です。りんごの呼吸を最低限まで抑えて鮮度を保ちます。こうして新鮮なりんごが私たちの元に届きます。

輸入している

1971年6月に自由化されたりんごの輸入。北朝鮮及び中国からの1195トンを最高に断続的に少量輸入されたことはありますが、旧ソビエト連邦、中国からの輸入は、植物防疫法で定められているコドリンガ、ミバエ当禁止対象有害病害虫などのため禁止されてきました。

しかし、これらの病害虫の完全防除技術が確立したとして、1993年6月にニュージーランド産りんごが輸入解禁されたのを皮切りに1994年8月からはアメリカ産が、1997年9月にはフランス産が1998年12月にオーストラリア・タスマニア産が輸入解禁されました。

そして、ここ最近、りんごの輸入が大きく増加しています。

りんごの輸入量は、天候不順で国内生産量が落ち込んだ2012年から、ニュージーランド産を中心に増え始め、2017年に大きく増加し、4000トンを超えました。2021年には8000トンを超えました。

リンゴと蜜を巡る話

リンゴの蜜

蜜入リンゴを選ぶコツ

同じ農園の同じ木で同じ時期に収穫しても、必ず蜜が入ったリンゴばかりとは限りません。光センサーで、ある程度の選別は可能となりましたが、蜜が入っているかどうかは基本的には切ってみないとわかりません。蜜が見えるものを選びたい場合「軸の周りにシワが多く寄っていて軸が太く、重く感じる物」が、蜜が入っている確率が高いと言われています。

また、注意点として蜜が入ったリンゴを長く貯蔵すると、蜜がリンゴに吸収されてしまい、目に見えなくなってしまいます。蜜が消えてしまった場合でも、甘さ自体は変わりません。

海外では蜜入りリンゴは嫌われる?

日本では「蜜入りリンゴ」というと言葉のイメージもあって、付加価値ともなりますが、逆に海外では「ウォーター・コア(水の入ったリンゴ)」と言って、嫌がられることがあります。

理由としてソルビトールの成分の多くは水分であるため、果汁は多くなるのですが、完熟してからの日持ちは蜜が入らないものよりも落ちるとされる事があげられます。また海外では、長期保存して加熱調理する事も多く、生でおいしいリンゴは加熱調理すると水くさくベタついてしまい、味が落ちてしまう事も理由として考えられます。実際に蜜も度を越した量で入ると生食するとしても水くさく感じる事があります。

蜜入りリンゴについて読む!
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おいしく食べるには乾燥を防いで早く食べきる

リンゴはエチレンガスという、植物の成熟を促すホルモンを出す事でも知られています。このため、リンゴ同士がくっついていると早く傷みやすくなります。特に、蜜入りリンゴは入っていないものと比べると、比較的傷みが早いとされています。家庭の冷蔵庫では、あまり日持ちが見込めない事に加えて、他の野菜を早く傷ませてしまう原因にもなり得ますので、一つずつ新聞紙かラップに包んでポリ袋に入れて保存し、できるだけ早めに食べる事をおすすめします。

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