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ハンターが教える、ハクビシンの対策方法5選。コストを抑えて撃退するためのポイントを解説

伊藤七

ライター:

連載企画:アブなすぎる害獣図鑑

ハンターが教える、ハクビシンの対策方法5選。コストを抑えて撃退するためのポイントを解説

ハクビシンは家庭菜園や住居に深刻な被害をもたらす野生動物です。果物の食害や家屋内への侵入による破損など、農家にとっても厄介な害獣のひとつです。
本記事ではハクビシン対策に効果的な5つの方法について、現役ハンターの遠藤夏日さん解説のもと、詳しく紹介します。畑や住居を守るための知識を身につけ、ハクビシンの撃退に役立てていただけるよう、分かりやすく解説していきます。

ハクビシンの基本情報

農業

ハクビシンは日本に生息する唯一のジャコウネコの仲間で、白鼻芯という名の通り、額から鼻にかけての白い線が特徴的。そのかわいらしいルックスから、ペットとして飼われることもありますが、実は攻撃性のある動物でもあります。山間部の郊外区域だけでなく、都市部での生息数も日本全国で増えているこの動物の特徴について、詳しく見ていきましょう。

灰褐色の体と白い模様が特徴

ハクビシンは灰褐色の体色を基調としており、額から鼻先にかけての白い模様が特徴的です。この白い模様は、他のハクビシンとのコミュニケーションや視認性を高める役割を果たしています。四肢は黒色で短く、全長は約90~110センチメートルで、頭胴長約60センチメートル尾長約40センチメートルです。

夜行性で木登りが得意

ハクビシンは夜行性の動物であり、人間との直接的な接触を避けつつ、果実や家庭ゴミなどの餌を求めて主に夜間に活動します。

さらに、ハクビシンは短い四肢を生かした木登りの能力が高く、庭木や屋根の構造を巧みに利用して家屋へ侵入することもあります。

東南アジアや中国が原産

ハクビシンは東南アジアや中国が原産の動物で、これらの地域における多様な自然生息地に適応して生息しています。主に熱帯雨林、山岳地帯、農地周辺などで見られ、その分布範囲は非常に広いといえます。

他の地域へと拡散していった経緯としては、人間の活動による輸出や観賞用ペットとしての取引が挙げられます。特に日本では、天然外来種として定着し、農作物への被害や家屋への侵入が問題となっています。

ハクビシンの生息場所

ハクビシンは主に岩穴や木の洞といった場所を生息地としていますが、人間の家屋の屋根裏や物置などの建物内部に巣を作ることがあります。
屋根や壁に穴があいていれば、そこから侵入して屋根裏をねぐらとして使用し、倉庫や空き家などは恰好の棲家となります。屋内で糞尿をして異臭や害虫を発生させる原因となり、家の柱などを破壊することもあります。

夜行性で行動し、昼はねぐらとなる暗い場所に潜み、夜に餌を求めて移動します。

雑食性で果実を好む

ハクビシンは雑食性の動物であり、幅広い食物を摂取しますが、特に果実を好む傾向があります。これにより、果樹園や家庭菜園においては作物への食害が発生することが少なくありません。
特に農家にとってのハクビシンの被害は深刻です。ミカン、モモ、ブドウなどの果実類を特に好み、人気のない田畑を見つけては農作物を食い荒らすのです。ハクビシンはかなり頭が良く、環境への適応能力や学習能力が高いため、山間部の郊外区域だけでなく、都市部での生息数も日本全国で増えてきました。(※2)

ハクビシンによる被害の例

ハクビシンは棲家を転々と変えるため、前述したように住宅への被害が多く見られています。また、見た目のかわいらしさとは裏腹にかなり凶暴な動物で、噛みつかれたり、引っかかれたりするなどの外傷を負う可能性があるほか、これにより感染症を起こすという二次的被害の危険性もあります。ここではハクビシンによる被害例について詳しくみていきましょう。

家屋内への侵入による汚染、家財の損壊

ハクビシンが家屋内に侵入してしまうと、天井裏の汚染や家財の損壊などの恐れがあります。ハクビシンの糞尿が天井裏などに放置されると健康被害のリスクも高まりまるほか、糞尿には寄生虫や細菌が含まれていることがあり、これらが空気中に舞い上がることで、アレルギーや呼吸器系の疾患を引き起こす恐れがあります。

天井裏の汚染を示す兆候としては、糞尿のにおいや黒ずんだシミ、異常な湿気やカビの発生などが挙げられます。これらの兆候を早期に発見し、適切に対処することが重要です。

これらの問題を軽減するためには、まずはハクビシンの侵入を防ぐことが最も重要。天井裏や壁の隙間をしっかりと封鎖すること、定期的な換気を行って湿気を減らすこと、そしてカビ防止用の除湿器や抗カビ剤を使用することが対応策として挙げられます。また、定期的に天井裏を点検し、糞尿の兆候を早期に発見して適切に清掃することも効果的です。

農作物への食害

ハクビシンは果樹や家庭菜園に深刻な被害をもたらします。果実や野菜を好んで食べるため、家庭菜園で育てた作物が被害を受ける場合があります。特に熟した果物や新鮮な野菜は、ハクビシンにとって魅力的な食料源となり、収穫前に被害を受けるケースが多発しています。
これらの影響を最小限に抑えるためには、効果的な予防策の導入が不可欠です。次の章では、ハンターの遠藤さんに、具体的な対策方法について詳しく解説してもらいます。

【ハンター直伝】効果的なハクビシン対策5選

ハクビシンから農作物を守るためのポイントを猟師の遠藤さんから聞きました。
ハクビシンは体が小さいためイノシシのような大きな動物とは違って「防ぐ」対策の難易度はやや高いのですが、捕獲の難易度は低いといいます。
また、ハクビシンのほかにアライグマ、タヌキ、アナグマも似たような性質を持っており、対策や使用する捕獲器も基本的には同じ。このような動物による被害に困っている場合は、一度に対策することができます。

特に効果的な対策方法を5つ紹介してくれました。

■遠藤夏日さんプロフィール

2020年より有害鳥獣駆除に従事。イノシシを中心に年間約100頭の有害鳥獣を捕獲している。近年は、捕獲個体の肉・骨・皮の資源活用にも取り組み、命を無駄にしない持続可能な活動を目指している。

1. ハクビシンを寄せ付けない環境をつくる

ハクビシンを寄せ付けないために気を付けたいことは、下記の通りです。

果実は早めに収穫する
電気柵やワイヤーメッシュを設置する
生ごみや廃棄する農作物を放置しない
こまめに草刈りや環境整備をして視界を広くする

「果実を収穫しようとしたタイミングでハクビシンに食べられた」という話は、農家さんからよく聞かれる悩みです。できるだけ早く収穫したり、生ごみや廃棄する農作物を放置しないよう気を付けたり、「餌がないこと」をアピールすることが大切です。
ハクビシンは体が小さく、フェンスや網をくぐり抜けてしまいますが、電気ショックには弱いです。地面から近いところに電気柵を張り巡らせると、ハクビシン対策になります。

2. 捕獲器を活用する

ハクビシンの侵入を防ぐのは難しいですが、イノシシなどの大きな動物に比べると、捕獲する難易度はそこまで高くありません。ホームセンターでも捕獲器が販売されており、比較的安価で購入できます。
捕獲には原則免許・許可が必要です。ただし、被害の状況によっては「許可は必要だが免許は不要」という場合もありますので、自治体のルールを確認しましょう。

設置場所としておすすめなのは、畑の周りや、ハクビシンが通った痕跡のある場所です。
餌としては、果物や卵、生ごみなどがよく使われます。猟師の間では「アライグマはキャラメルコーンが好き」と言われていることから、ハクビシンの捕獲時にもキャラメルコーンを活用している人もいます。
餌を選ぶ際に「日持ちするか」「猫に食べられないか」という点を重視する場合は、りんごは使い勝手が良い餌のひとつです。頻繁に餌の交換をしなくとも、1~2週間はもつためです。ハクビシンは魚やサラダチキン、魚肉ソーセージも好きですが、これらは猫が食べてしまうので、一長一短でしょう。

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3. 音・光などの忌避装置を試す

畑の周囲にソーラー式のセンサーライトや音波装置を含めた忌避装置を設置することも考えられますが、持続的な効果があるかは疑問が残るところです。音や光による効果は一時的なものです。電気ショックを与える方が効果を期待できます。

4. 行政の防除事業を活用する

自治体でハクビシンの防除事業を行っている場合があります。対策や捕獲器の設置などさまざまな支援がありますので、困っている場合は一度自治体に相談してみましょう。

5. 害獣駆除のプロに依頼する

許可を得ると自身でも駆除できますが、害獣駆除のプロに依頼することもできます。ハクビシンの駆除は、イノシシなどの大きな動物の駆除に比べると対応している業者が多くあります。行政の対応では満足できない場合は、民間の害獣駆除業者に依頼するのもひとつの手です。

まとめ

ハクビシンは農作物や家屋に甚大な被害をもたらす野生動物です。果樹を荒らしたり屋根裏に住みついたりと、生活環境に深刻な影響を及ぼします。しかし自治体の防除事業や民間の業者を活用したり、自身で捕獲したりすることもできるので、まずは個人レベルでできることから取り組んでみましょう。

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