景勝地の松林を守る!枯葉の堆肥で育てる「松野菜ブランド」 – マイナビ農業

マイナビ農業TOP > マーケティング > 景勝地の松林を守る!枯葉の堆肥で育てる「松野菜ブランド」

マーケティング

和歌山

景勝地の松林を守る!枯葉の堆肥で育てる「松野菜ブランド」

景勝地の松林を守る!枯葉の堆肥で育てる「松野菜ブランド」

最終更新日:2018年09月10日

和歌山県美浜町にある景勝地「煙樹ヶ浜(えんじゅがはま)」では、堆積した松の枯葉が松の生育を妨げるという問題を抱えていました。そこで、松の枯葉を堆肥化して野菜を栽培する取組みをはじめたのです。枯葉を減らして松の生育を良くすることで景観を守ります。そして松葉で作った野菜をブランド化し、地域活性化を目指しています。今回は、その活動を支える、煙樹ヶ浜松葉堆肥ブランド研究会に話をうかがいました。

  • twitter
  • facebook
  • LINE

松林の保全から始まった「松野菜」プロジェクト

松野菜ブランド

和歌山県美浜町には、長さ約4.5kmもの松林が浜辺に続く「煙樹ヶ浜」があります。日本の「名松百選」にも選ばれており、その景観は現代に至るまで見事に保たれています。そして美浜町周辺を潮害や風害から守ってきました。

松の枯葉はかつて、かまどや風呂の焚きつけに使用されていました。しかし、電化製品などの普及により使用されなくなり、枯葉が松林に堆積されてしまいました。その結果、松の生育を妨げる事態になったのです。

「煙樹ヶ浜」の景観を守るため、役場職員と農家は話し合いの場を設けて、松の枯葉を有効利用できないか話し合いました。そこで松葉を使った堆肥で野菜を栽培しようというアイデアが出て、平成18年より取り組みを開始されました。

翌年の平成19年には試作1回目の松葉堆肥が完成。野菜の発芽実験に合格後、試験的にキュウリの栽培を行いました。そうして試行錯誤を重ねた結果、松葉堆肥で育った初の「松野菜」となる「松キュウリ」が完成したのです。

「松葉堆肥」ができるまで

松野菜ブランド

「松野菜」の栽培に使用する松葉は、周辺住民や地元小学生が中心となり、毎年10トンほど集められます。その後、全体がまんべんなく発酵するように重機で1度〜2度撹拌し、石灰窒素入りの籾殻(もみがら)を加えて発酵を促進させます。約1年5ヵ月かけて堆肥化し、本堆肥を利用した発芽試験に合格すると「松葉堆肥」の完成です。

「松野菜」の取り組みは、松枯れの軽減など松の生育環境の保全につながっています。また津波や高潮、潮風などを防ぐ防潮林としての機能を保つのに一役買っています。松葉集めを通じて住民の環境意識が向上したり、交流が活発になるなど、地域の活性化にもつながっています。

現在、「松野菜」を栽培しているのは町内にある13の農家。「松キュウリ」だけでなく、「松トマト」「松イチゴ」も栽培されていて、野菜のバリエーションも少しずつ増えています。

「松葉は環境にも優しいバイオマス資源(※)であり、その堆肥を撒いた土壌は通気性、保水性に優れ、植物の根に良好な環境を作り出します。その働きもあり、松野菜は味に深みがあっておいしいと評判です。松野菜は環境だけでなく、人にも優しい野菜なんです」(ブランド研究会事務局)。

※再生可能な生物由来の有機性資源のこと。

「松野菜」ブランドを県外へも積極的にPR

松野菜ブランド

「松野菜」が完成した平成19年頃、煙樹ヶ浜松葉堆肥ブランド研究会の前身となる団体が和歌山県知事と意見交換をする機会を得ました。そこで松葉堆肥の説明や「松キュウリ」を提供したところ、知事からブランド化や、PR活動に協力をいただけることになりました。

地元スーパーで販売や、ケーブルテレビの「eo光テレビ」にて紹介されて、「松野菜」への注目度が高まりました。そして平成20年度には本格的にブランド化を進めていくための活動計画を立案。「松キュウリ」だけでなく、「松トマト」の作付けや販売にも着手します。

収穫した農作物は「松キュウリ」「松トマト」として地域ブランド化を確立させました。産地直送ならではの鮮度を強みとして、地元スーパーやサービスエリアなどで販売をスタートしました。

さらに平成21年には、「煙樹ヶ浜松葉堆肥ブランド研究会」を設立。それまで松野菜の活動は農家団体によって行われていましたが、取り組みをより活性化させたい思いから、新たな団体を立ち上げたのです。

研究会では「松野菜ブランド」の成分分析や残留農薬検査を行い、品質保持に大きく貢献しています。また、松葉堆肥の生産をはじめ、松葉集めで使用する備品の整備、PR活動などブランドを支える活動を幅広く行っています。

平成23年には「松イチゴ」の栽培も始まり、松野菜ブランドの認知度は年々広がっています。最近では東京都にある和歌山県のアンテナショップや、大阪府の大丸百貨店のイベントに出品しました。

今後の展望は、販路拡大とプロジェクトの安定化

松野菜ブランド

「松野菜」の取り組みを安定させるには、今以上に販路を広げることが必要不可欠です。そのために、煙樹ヶ浜松葉堆肥ブランド研究会ではブランドの価値向上を目指して販売促進向けに、「煙樹ヶ浜」松林のイメージキャラクターを作成しました。農作物のパッケージにシールを貼付するほか、東京都や大阪府など県外のイベントに着ぐるみのキャラクターが参加しています。そして「松野菜」の取り組みを積極的にPRしています。

「松野菜の宣伝活動をきっかけに、美浜町を知ってもらう機会が増えました。パンフレットを見て問い合わせてくださる方も多くなりました」(美浜町役場職員)。

現在、ブランド研究会はPR活動と平行して、松葉堆肥の増産に力を入れています。そして、松葉堆肥を使用する農家を増やして「松野菜」の大量生産を目指しています。

「松野菜」の取り組みは、景観を保つとともに地域住民を守る防潮林としての役割をもっています。一方で「煙樹ヶ浜松林」の保全と、地域活性化にも貢献しています。地域が抱える問題を、アイデア1つでプラスに転じたこの事例に学ぶことは多いのではないでしょうか。

和歌山県美浜町煙樹ヶ浜松葉堆肥ブランド研究会
和歌山県日高郡美浜町和田1138-278 美浜町役場内
0738-22-4123

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE

関連記事

カテゴリー一覧