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農家と料理人を繋ぐサービス「シェフズクリップ」 珍しい野菜を適正価格で販売

農家と料理人を繋ぐサービス「シェフズクリップ」 珍しい野菜を適正価格で販売

野菜のプロである農家と、食材のプロといえる料理人を繋ぐサービス「シェフズクリップ」。会員登録をした料理人に、市場では出合えない珍しい野菜や農家の情報を配信し、農産物の販売も行うというユニークな取り組みだ。運営する株式会社タベル・プラス株式会社(愛知県名古屋市)の佐藤久美子(さとう・くみこ)代表にお話を聞いた。

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「野菜のブティック」を目指して

タベル・プラス図鑑

有料会員の元へ定期的に届く「図鑑」

大トロなす、フルーツカブ、国産グレープフルーツ。スーパーマーケットでは見かけることのない名前の野菜や果物が、色鮮やかな写真とともに「図鑑」をにぎわせる。市場には出回りにくい、珍しい農産物の生産現場を訪ね、栽培の過程や農家の人柄を丁寧に取材し、料理人へ情報発信するサービス「シェフズクリップ」。

農家と野菜自体を写真やイラスト入りで紹介する「図鑑」を、有料会員の元へ定期的に郵送する。おすすめの調理法や、農家からのメッセージなども添える。関心のあるものをファイリングすれば、自分だけの一冊を作れる。料理人からは、客に見せながら食材を詳しく説明でき、より深いコミュニケーションのきっかけになると好評だ。

図鑑のダイジェスト版は、アプリを通してスマートフォンからも閲覧できる。気に入った野菜は会員価格で購入できるほか、農家の紹介や野菜探しの相談にも応じる。

目指す姿は、料理人一人ひとりの理想に合った野菜をマッチングさせる「野菜のブティック」だと、サービスを運営する佐藤さんは話す。

現場で知った、料理人と農家双方の課題

タベル・プラス株式会社の佐藤代表

佐藤さんは大学卒業後、会員制リゾートホテルの会社に13年間勤務。食への探求心が高い人たちを満足させるため、趣向を凝らしたメニューの考案と食材探しに悩むシェフたちの姿を見てきた。退職後、直売所の新規施設開業や、愛知県の中山間部・奥三河のブランド化事業に関わる。そこで、農家側には、販路の拡大が難しいという課題や、適正価格での取り引きが出来ないことで経営難に陥るという現実を知った。

両者のニーズを汲み取り、引き合わせることが、豊かな食文化や持続可能な農業の発展の手助けに繋がるのではないかと、「シェフズクリップ」の構想を思いついた。ビジネススクールに通ってプランをブラッシュアップし、40歳でタベル・プラス株式会社を設立した。

「大トロなす」との出合い

佐藤さんにとって、印象的だったというナス農家・佐々木さんとの出会い

取り扱う野菜は、実際に農家の元を訪れ、現場を見学し、想いをヒアリングした上で決める。佐藤さんにとって印象的だったのは、現在は「シェフズクリップ」で「とみちゃんの大トロなす」として人気商品になった、設楽町のナス農家・佐々木富子さんとの出会いだ。

佐々木さんが作る、愛知県の伝統野菜「天狗なす」。特徴は、「人の顔くらい大きい」こと。市場に多く流通している千両なす(中長なす)は、着果から10日程度で収穫できるのに対し、約1カ月掛かってしまう。さらに、千両ナスは1本の木から80~100個が収穫できるが、天狗なすは大きさを維持するため15~20個しか穫れない。

にも関わらず、販路が限られているため、ほかのナスと大して変わらない値段で売られるという、農家にとっては、「作れば作るほど赤字になる」代物。天狗なす保存会会長の佐々木さんでさえ、生産を続けることに難色を示していた。ただ、加熱するととろけるような食感になりその真骨頂を発揮する。一口食べた佐藤さんは、「肉にも負けない主役になれる野菜」だと感じた。

佐々木さんを囲むイベントで、シェフが特別に作った大トロなすを使った料理。佐々木さんは感激のあまり、涙していたという

商品価値を確かめようと、ホテル勤務時代の人脈を活かし、知り合いのシェフに使ってもらい感想を聞いたところ、各所から「ものすごく良い食材」と絶賛された。佐々木さんから生産を続けるための適正価格を聞き出し、その特長を表す「大トロなす」の名で、サービス上で販売したところ、完売することができた。

とあるリゾートホテルの料理人は、理想の料理を表現できるとこのナスにほれ込むあまり、佐々木さんと会った際に、日ごろの感謝を込めて大トロなすを使ったフルコースを振舞った。佐々木さんは、ナスを使ったスープなどシェフ渾身のメニューはもちろん、普段機会のない「お得意先との対面」に感激していたという。

「大事な娘を嫁に出す」ような気持ち

佐藤さんは、「作り続けてもらうために、適切な価格で販売をしたい」と、農家の販路拡大の手助けを志す。一方で、料理人に最高の食材を提供するため、注文に応じて美味しさがベストな状態の野菜を収穫・発送し、翌日に届けるなど、消費側のニーズにも応えている。

特定の料理人とのマッチングは、農家のモチベーション向上や、農産物のブランディングにもつながるという。シェフズクリップに関わる農家は、食材に厳しい料理人向けて、まるで「大事な娘を嫁に出す」ような緊張感と感慨をもって出荷する。プロに認められ、やる気に繋がったという声も集まるという。

料理人からの感想や要望は、農家へフィードバックする。同時に、農家や産地の現状を料理人に伝えることで、双方向の繋がりづくりに努めている。

佐藤さんは、「少量多品目野菜と、それを作る農家の熱意を知らせることで、食の多様性の価値を理解してもらいたい」と意欲を見せる。その思いの周りに集ったプロとプロの絆が、日本の食文化をより豊かにしていく。

タベル・プラス オフィシャルサイト
https://taberuplus.me/
シェフズクリップ サービスサイト
https://chefsclip.me

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