食卓に欠かせないほうれん草
ほうれん草は、ややクセがある野菜ですが、うまみと栄養価が非常に高い代表的な緑黄色野菜です。葉がうすく切れ込みが深く入った東洋種と、厚くて丸い葉が特徴の西洋種の2種類が存在し、現在おもに市場に流通しているのは東洋種と西洋種の交配種です。
ほうれん草といえば、必ずアク抜きが必要というイメージがあるかもしれません。近年では、下ごしらえが不要でアクの成分であるシュウ酸が少なく、サラダとして生食できる品種も誕生して人気を集めています。
ほうれん草の原産地は現在のイラン付近の西アジアと言われており、イスラム教徒によって世界に広められたと考えられています。日本には中国を経由して16世紀頃に東洋種がもたらされ、19世紀半ばの江戸末期にフランスから西洋種が伝わったとされています。
ほうれん草が日本中で使われるようになったのは、高度経済成長の頃。それからずっと私たちの食卓には欠かせない葉物野菜として重宝されています。
美味しいほうれん草の選び方は?
色味
鮮度が高くておいしいほうれん草は、緑色が鮮やかです。色合いがみずみずしくて、濃い色の葉っぱが密にたくさん生えているものを選びましょう。また、鮮度を確認するためには、表面だけでなく裏側もきちんと鮮やかな色かどうかを確認すべきです。
ハリ
鮮度の良いほうれん草は、全体的にハリがあるように見えるでしょう。葉でも茎でも、しわがなく垂れ下がっていないものは新鮮な証拠です。例えば、茎を見た時に、しわが寄っていなくてしっかりとしてハリのあるものは、鮮度が高いことが分かります。
根本
新鮮でおいしいほうれん草は、根本がピンク色をしています。束になって売られているものは、根本を切り取った断面にみずみずしさが残っているか確認しましょう。断面の水分が豊富で乾燥していないものを選ぶのがポイントです。また、株が大きく切り口が大きいものを選ぶと良いでしょう。
ほうれん草に含まれる栄養は?
鉄
ほうれん草は、緑黄色野菜の王様とも呼ばれています。この野菜に含まれる代表的な栄養素は、鉄です。
月経などのある女性にとっては、鉄分の多く含まれるほうれん草は、貧血防止の効果が期待できます。
ビタミンC
ほうれん草で摂取できる栄養素で、次に有名なのはビタミンCです。ほうれん草には、鉄などのミネラルだけでなく抗酸化作用の高いビタミン類もバランス良く含まれています。特に、冬採りのほうれん草は、夏採りのものの3倍ものビタミンCが含まれると言われています。
βカロテン
ほうれん草には、βカロテンがたくさん含まれています。ビタミンCと同様にβカロテンにも抗酸化作用があり、がんや老化と闘うための免疫作用や皮膚の健康など、さまざまな効果が期待されています。
ほうれん草の保存方法は?
ほうれん草を保存するときは、乾燥しないように湿らせた新聞紙で包んでポリ袋に入れてから冷蔵庫の野菜室に入れましょう。ほうれん草のような葉物野菜は、畑にある状態と同じように根を下にして保存するともちがよいと言われています。
長く保管しすぎてしおれてしまった場合は、冷水につけることで蘇生することができます。ビタミンなどの栄養素は時間の経過とともに失われていくので早めに調理するのがおすすめです。
冷凍のほうれん草は栄養がない?
冷凍食品や冷凍野菜などには栄養素がない、もしくは少ないと、誤解されていることがよくあります。しかし、冷凍された食品には、常温の時と同じようにたくさんの栄養素が含まれています。
水溶性のビタミンCやカリウムなどを除くと、冷凍ほうれん草には、鉄分やβカロテンなどがそのまま残されています。なので、傷んでしまう前に冷凍したり余った分を冷凍したりすれば、生のほうれん草とほぼ同様の栄養を取ることができます。
最近では、冷凍ほうれん草の商品もよく売られています。長期保存ができ、調理もより簡単になるのでとてもおすすめです。
ほうれん草の旬と時期は?
ほうれん草は年間を通して市場に出回っています。どの季節でもおいしくいただけますが、冬採れのほうれん草は他の季節のものに比べて栄養価が高く旨味や甘みも強くなり、冬に食べると風邪の予防などに効果が期待できます。
ほうれん草の下ごしらえの方法は?
アクが強い野菜なので、基本的には調理の前に下茹でする必要があります。
きれいな色に下茹でするコツ
きれいな緑色に茹で上げるには、たっぷりの熱湯で茹でることが大切です。沸騰したお湯にほうれん草を根から入れ、再度沸騰してから1〜2分でザルにあげます。すぐに冷水でさらします。冷めたら根元から揃えて束にし、水気をしっかり切ります。水にさらし過ぎるとせっかくのうまみや風味が無くなるので注意しましょう。
炒めてアク抜きする方法
ほうれん草を炒め物にしたいときは、下茹でせずにアク抜きする方法があります。フライパンに油を熱し、ほうれん草を入れる前に塩をひとふり入れ、炒めた後にほうれん草からでた水分を捨てます。
電子レンジでもOK?
近頃は電子レンジを利用して、調理の時短をする人が増えています。ほうれん草の加熱やアク抜きなどの下ごしらえも、電子レンジですることができます。
水にさらすだけでもOK
時間の無い時にすばやく調理したければ、ほうれん草を軽く洗ってしばらく水にさらしておくだけで、簡単なアク抜きができます。
そもそもアク抜きって必要?
できれば、ほうれん草のアク抜きのためには、塩を入れた熱湯で数分茹でるべきです。その理由は、ほうれん草には酸性度の高いシュウ酸という物質が含まれているので、取り除くのが望ましいからです。このシュウ酸はカルシウムと結びつくことで、結石の原因になります。
そのため、ほうれん草のアク抜きは、面倒ですが毎回必ず行った方が良いでしょう。
ほうれん草の効果的な食べ方は?
茹で時間は1〜2分
ほうれん草の茹で方には、コツがあります。まず、たっぷりの水を用意して、塩をひとつまみ入れましょう。そして、熱湯にほうれん草を立てるようにして入れて、根元から茹でるようにします。
この時、熱に弱いビタミンCなどが失われないようにするためにも、長く茹ですぎないことがポイントです。1〜2分程が、含まれている栄養分や食感を保つためにちょうどよいゆで時間です。
根本も食べる
ほうれん草を茹でたり炒めたりする時には、忘れずにピンク色をした根元の部分も加えましょう。
なぜなら、この部分はマンガンなどの有用なミネラルが豊富に含まれているからです。定番メニューのほうれん草のおひたしを作る時も、根本の部分は捨てずに入れましょう。
タンパク質や油を一緒に摂る
ほうれん草に含まれる豊富な栄養素をより効果的に摂取するためには、肉や大豆などのタンパク質や油分と一緒にとることが大切です。
おひたしなどの他にも、肉や魚などと共に和えたり炒めたりするメニューも取り入れてみると良いでしょう。
例えば、ほうれん草と肉や魚をバターでソテーすれば、手軽においしくたっぷりの栄養をとることができます。
ほうれん草をおいしくするワンポイントは?
乳製品と相性抜群
ほうれん草は牛乳や生クリーム、チーズなどの乳製品やベーコンなどの動物性の食材と非常に相性がいい野菜です。和食以外にも積極的に取り入れるようにしましょう。
ほうれん草は根の赤い部分も食べられる?
ほうれん草は根が赤いほどに甘みが強いと言われています。赤い部分はアクの元であるシュウ酸が多く含まれていますが、栄養もたっぷり含まれているので、下茹ですれば赤い部分もおいしくいただけます。
常備菜にして日々の献立に
ほうれん草は日々の献立を、 一品増やす常備菜に最適です。胡麻和えやおひたしはもちろん、ごま油と塩で味付けしてもおいしくいただけます。
ほうれん草は家庭菜園できる?
プランターで育てられる
鉄やビタミン類などが豊富なほうれん草は、家庭菜園で育てる野菜としても人気があります。
大きめのサイズのプランターと市販の培養土などを用意すれば、比較的寒い気候の土地でも簡単に育てられます。
1ヶ月程度で収穫
ほうれん草の生育には、暑さなどに気を付けることや土壌が酸性にかたよらないことなどが大切です。これらに注意して育てられれば、1ヶ月もすれば無事に青々としたおいしそうなほうれん草が収穫できるでしょう。
ほうれん草の種類は?
サラダほうれん草
アクが少ない生食向けの品種。茎が長めで葉が丸くやわらかいのが特徴です。
ちぢみほうれん草
地面を這うような姿で育つほうれん草です。葉が厚く凹凸があって甘みが強く、加熱調理に向いています。
赤軸ほうれん草
茎が赤く、葉が尖っています。生食できるのでサラダにもおすすめ。
日本ほうれん草
根が赤く葉の切れ込みが深いのが特徴です。やわらかな食感で食べやすく、加熱調理に向いています。
ほうれん草はとにかく万能な野菜。和食にも洋食にも冷蔵庫にあればいつでも使える、家庭料理には欠かせない存在です。加熱しておひたしやソテーにするものおいしいですが、サラダほうれん草もぜひ試してみてはいかがでしょうか。
参考:「野菜と果物の品目ガイド~野菜ソムリエEDITION」(農経新聞社)