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ブームは終わらない?「パクチーハウス東京」に聞くパクチーのこれから

ブームは終わらない?「パクチーハウス東京」に聞くパクチーのこれから

パクチー料理専門店「パクチーハウス東京」を2007年にオープンさせた株式会社旅と平和の代表取締役社長・佐谷恭(さたにきょう)さんは、パクチーのおいしさを広めた立役者です。「絶対に失敗する」と言われてのスタートでしたが、2017年11月に開催された創業10周年イベントには、大勢のファンや関係者が集まりました。この10年間を振り返り、改めて広く知られる野菜となったパクチーの魅力とブームについてうかがいました。

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旅先で出合ったパクチーを日本でも食べたかった

パクチー

学生時代から旅が好きで、世界50ヶ国以上を旅して回った佐谷さん。旅先で仲良くなった人たちと帰国後に再会して、訪問した国の料理を出す店に集まっては旅の思い出を語り合っていました。その中で、何か物足りないと感じていました。
その足りないものこそが、パクチー。

「どの店に行っても、パクチーが使われていないか飾り程度に葉っぱが1枚のっているだけ。当時はパクチーが使われていただけで満足していたと思います。でも、パクチーを満足するまで食べられなかったから、逆に発想を飛躍させることができたのです」。

2005年にパクチー好きのコミュニティー「日本パクチー狂会(きょうかい)」を設立。さらに、交流サイト「paxi(パクチー)」を通じでネットワークを広げていきます。

「暑さに強そうなイメージがありますが、調べると実はそれほど強くないことがわかったり、パクチーを通じて自分の認識や価値観が変わることがおもしろいと思いました。旅に出ると新しい出会いや発見によって価値観が変わる体験をしますが、その感じによく似ています。旅を通じて体験できるようなことを、パクチーという食材で体験できるのではないかと考えたのです」。

パクチーをもっと楽しみたい、パクチーを通して様々な人と交流したいという思いから、飲食店「パクチーハウス東京」(東京都世田谷区)は誕生しました。

奇特な人から「先見の明がある人」へ

パクチー

パクチーハウス東京では、パクチーの追加を「追パク(ついぱく)」と呼び、無料で行っています。しかし、佐谷さんが日本パクチー狂会を立ち上げた当時は、アジア料理店に行ってもパクチーが使われていませんでした。

お店の方に、どうして出さないのかと聞くと「パクチーは嫌いでしょ」と答えが返ってきました。「いや、僕は日本パクチー狂会の会長だから」とパクチー好きをアピールすることもあったとか。

その当時と比較すると、パクチー料理店まで登場した現在の状況は、パクチーにとって大きな前進といえます。

「でも一番の変化は、僕への対応が変わったことです。以前は奇特な人という扱いでしたが、ここ2年くらいから、『先見の明がある人』とか『先駆者』とか呼ばれるようになりました。最初は、パクチー専門店を開いても絶対に失敗すると否定的な意見を言ってくる人ばかりでした」。

パクチー料理という新ジャンルを日本から発信したい

パクチー

パクチーが世界各地で食べられていることを考えると、「日本はパクチー後進国」だと佐谷さんは言います。

文献をたどると、パクチーは1,000年前から日本に存在していたそうです。ですが、なぜ日本でパクチーが広まらなかったのか理由はわかりません。しかし「すでに世界各地で食べられているパクチー料理を再現するのではなく、独自の料理へと進化させて世界に発信していきたい」と佐谷さんは考えています。

そして、「パクチー料理」という言葉を考案して研究に励むようになりました。東京都青ヶ島村特産「ひんぎゃの塩」と乾燥パクチーをブレンドした「パク塩」などのオリジナル商品の開発や、パクチーに興味のない人に来店してもらうためのきっかけとして、イベントを開催しながらPRに努めました。

パクチーが苦手な人は多いと感じますが、佐谷さんは「食べ方を間違っているのではないか」と指摘します。「たとえばピーマンの肉詰めはおいしいけれど、ピーマンにアイスクリームを詰めたら、ほとんどの人は嫌がるはず。ピーマンもアイスクリームもそれぞれおいしいのに、食べ方や組み合わせを間違えるとダメなのです。それと同じで、パクチーも食べ方次第なのです」。

パクチーを必ず使うという条件がむしろ良かった

パクチー

パクチーハウス東京の看板メニューの一つ「パク天」は、パクチーをかき揚げにしたシンプルな料理です。店で出すすべての料理にパクチーを使うということは、メニュー開発において難題ではなかったと佐谷さんは語ります。

パクチーをメインとした料理が存在していなかったため、ほとんどの料理にパクチーは入っていませんでした。なので、あらゆる料理にパクチーを入れて様々な調理法を試すことの繰り返しで、メニューを増やしていきました。

「うちはパクチー料理専門店ですから、どの料理にもパクチーが入っていないと意味がない。たとえばうちの店には『パク塩アイス』というデザートがあります。メニューとして考案する前は、パクチーのデザートはあり得ないだろうと自分でも思っていました。でも入れてみると『あれっうまい。これはいけるぞ』となりました」。

パクチーなどの珍しい食材を使って、看板メニューをと考える飲食店は少なくないはずです。ただ、珍しい食材を使えばヒットするという保証はありません。しかし佐谷さんは「要はうまいかどうか。それだけなんです」と言います。

パクチーは、まだブームの途中

パクチー

パクチー料理は2016年に、飲食店のポータルサイト『ぐるなび』が毎年1回発表している「今年の一皿」に選ばれました。つまりパクチー料理はブームとして捉えられていると受け止めることができました。そして佐谷さんも「パクチーは、まだブームです」と話しています。

メディアで紹介されることで一過性のブームが起こり、その食材が品薄になることは多々あります。流通量が十分とはいえないパクチーが一気に購入されれば、パクチー料理を出している店が入手できなくなるかもしれません。だから「メディアに紹介されなくてもいい、ブームにならなくていい」と考えていました。

そして、10年が経ってスーパーにもパクチーが陳列されているのを見かけるようになりました。八百屋に発注すればパクチーが入手できるようになり、以前と比べて流通するようになりました。

「たとえば居酒屋がブームに乗ってパクチーサラダを出しました。毎日注文されるようになったら、メニューの一つとして残ることになります。そうやって多くの飲食店のメニューに定着すれば、次は創作料理を出してみようとなります。これからパクチーは次のフェーズに進んでいくと考えています」。

パクチーが他の野菜と一緒に、当然のように店先に並ぶようになること。それこそが、本当の意味でブームが終わったことを意味するのではないでしょうか。

佐谷さんのような「楽しい・おいしい」追求を積み重ねていくことで、パクチーがメジャーな野菜の仲間入りをする日が来るかもしれません。

パクチーハウス東京

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