共感がプロジェクトを推し進める
現在、クレアファームは県内10ヶ所に農園を構えますが、当初は農地を借りることすら困難でした。農業未経験者の西村さんには貸し手がおらず、農業従事者不足が深刻でありながら、新規参入へのハードルは高いという矛盾に突き当たりました。それでも、西村さんの熱意に打たれて次第に協力者が増えていったそうです。
「農園の土地を貸してくださったのは、『これは地域のためになる』と共感してくださった方たちです。プロジェクトを進めるために、共感が必要なものを呼び集めてくれるのだと感じました。様々な問題はありますが、これは誰にとって必要なのか、社会的意義は何なのかを真剣に考えることで方向性を見誤ることはありません。
今の時代、たまたま大儲けなんてうまい話はどこにもありません。利益を出すためには、コツコツとした努力の継続しかありません。そして、利益よりも大事な意義があるから続けられると思っています」。
栽培においては、生産技術面でのサポートを国内外の専門家に依頼し、設備投資を行いました。そして日本の風土でも比較的育ちやすい品種を厳選するなど工夫を重ねてきたのです。2015年から毎年開催している収穫祭では、自分たちが収穫したオリーブをその場で搾り、できたてのオリーブオイルの美味しさを多くの人たちにPRしています。
今後は、オリジナル商品の拡充だけでなく、オリーブの収穫やオリーブオイル作りを楽しめる観光農園にしていきたいという目標があるそうです。
また、このプロジェクトで培ってきた6次産業のアプローチは、あらゆる農作物に応用できます。「他の農作物を生産する生産者とも手を携えていきたい」と西村さんは語ってくれました。
静岡県産オリーブオイルを、スプーンでひと匙すくって飲んでみてください。オリーブをノンフィルターで絞ることで、青々しい香りと、混じりけのない純度の高さが感じられます。
「うちのオリーブオイルを使うと、他では買えないと言ってくださる方が多いです」と西村さんは語ります。
6次産業化に向けた仕組み作りもさることながら、静岡県で高品質な農作物を生産し続けてきた農家の皆さんへの敬意、そして地元愛が農業を活性化させていると感じました。
画像提供:株式会社クレアファーム