ターゲットを絞ることで、顧客が見えてくる
自分たちの農産物をアピールするためには、他の生産者との差別化も重要です。福島さんは、「お客様に自分たちのことをどこで知ってもらうのか」「自分が生産している農作物の魅力やこだわりを、どうやって理解してもらうか」「自分の農産物を選んで、最終的に買ってもらうにはどうすればいいのか」といった購入までのプロセスを想定した、工程をつくることをアドバイスしています。
また、インターネット上では実際に手にすることができない農産物の魅力を、言葉で伝えなければいけません。例えば、「甘いみかん」の場合は味の特徴を表現したり、産地をアピールしたりと伝え方の工夫も必要になります。
「品種などの情報を掲載しているけれど、どんな人がターゲットになっているのかよくわからないアプローチを見かけることが多いです。まずターゲットとなるお客様を具体化すること。そしてターゲットに合わせた言葉を選ぶことが差別化につながります」。
生産者と購入者が顔を合わせることがないインターネットだからこそ、生産者の顔を出して安心して購入してもらうことも大事です。
「様々な試行錯誤を重ねて生産していることを、知ってほしいという思いがあります。あえて汚れた作業着の写真をインターネット上にのせたり、スーツを着た写真を掲載するという個性的な農家さんもいます。写真の見せ方も統一すると、他のサイトとの比較となり個性を出すことにもつながります」。
農業=ビジネスと捉えて冷静に考える
インターネットショップの運営は、SNSなどの活用よりもさらにハードルが上がります。始める前にデメリットも心得ておくべきでしょう。デメリットを挙げるなら、「初期投資と固定費、費用がかかること」です。
低予算で制作してくれる業者もありますが、ホームページの作成を業者に依頼すれば、数万~数十万円の初期費用が必要になります。さらに運営を続けるための固定費も必要です。
自分たちで運営するのは難しいからと、ECモールなどに出店すれば、固定費がかかります。ECモールの場合は広告費をかければ、トップ画面などユーザーの目にとまりやすく、売れやすいポジションに掲載することはできます。それはどれだけ広告費を投じたかであって、農作物自体が評価されたとは言えません。
「当然ですが、インターネットショップを作っただけでは売り上げにはつながりません。自社運営の場合は、自分たちで集客して顧客リストを集めるところからスタートするので、結果が出るまで時間がかかります。生業的な感覚で農業や通販に取り組んでいて、経費や利益を追求するビジネス感覚に乏しいと成功は難しいですね」。
「大事なのは、『農業=ビジネス』と捉えて経営感覚を持つこと」だと福島さんは語ります。