地域おこし協力隊ビジネスアワード受賞 国産マスタード作りへの挑戦

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地域おこし協力隊ビジネスアワード受賞 国産マスタード作りへの挑戦

地域おこし協力隊ビジネスアワード受賞 国産マスタード作りへの挑戦
最終更新日:2020年02月04日

地域おこし協力隊の隊員として、山梨県笛吹市で活動する木村早希(きむらさき)さんと八木優彰(やぎまさあき)さんは、「ワインの産地である笛吹市だからこそできる」マスタード作りに挑戦しています。年内の商品化を目指して活動する中で、総務省の「地域おこし協力隊ビジネスアワード」を受賞するなど、特徴あるビジネスモデルとして注目されている「笛吹マスタード工房」の活動について話をうかがいました。

破棄される未利用ブドウを活用した国産マスタード

マスタード

地域おこし協力隊は、人口減少や高齢化などの影響を受けている地域において、地域外から積極的に人材を受けて入れ、地域活性化につながる活動を推進するための支援制度です。

山梨県笛吹市では現在、木村さん(2016年4月に就任、写真左)と八木さん(2016年12月に就任、写真右)の2人が活動しています。

木村さんは、結婚を機にご主人の地元である笛吹市に転居することになり、地域おこし協力隊に応募。移住希望者に向けて情報配信を行う窓口業務を担当しています。一方の八木さんは、任期満了後に就農のサポートを受けられる自治体ということで笛吹市を選び、現在は地元農家の農作業を手伝っています。

それぞれに任務はありますが、2人で相談しているうちに、特産品を作りたいという思いが芽生えてきました。

様々なセミナーに参加しながらヒントを探っていたところ、ある講師から、「山梨はワインの産地だし、フレンチレストランも多いから、マスタードがおもしろいのではないか」と言われたそうです。木村さんは、「ブドウ農家さんが多い笛吹市にぴったりだ」とピンときたそうです。

調べてみると、マスタードはカラシナの種に発酵中もしくは発酵前の未熟ブドウ果汁やビネガーを加えて作られたことが始まりでした。ヨーロッパでは酸味を活かした調味料として未熟ブドウ果汁が活用されており、フランスにはこの製法で作られているマスタードがあるということもわかりました。

そして、ブドウやモモといった果物の生産が盛んな笛吹市ならではのマスタード作りが実現したら、本来ならば未利用の果物を活用できるかもしれないと2人は考えました。

調合の仕方で、味が変わるマスタード

マスタード

木村さんと八木さんは「笛吹マスタード工房」の名称を掲げ、国産マスタードの開発事業をスタート。2017年の夏からマスタードの試作に入りました。

マスタードは基本的にカラシナの種と酢、そして塩などの調味料で構成されています。酢を使ってカラシナの種を発酵させることで、独特の酸味や風味が増すのです。

笛吹市にはカラシナの生産者がいないため、市販のカラシナの種を購入し、ブドウ果汁やモモの果汁、それから様々な果物酢と組み合わせながら、試作を続けました。

「ブドウやモモなど使用する果汁によって味が違ってきますし、種をどの程度潰すのかで食感が違ってくる。さらに言えば、国産カラシナから採取した種と外国産カラシナから採取した種では味が違うと考えているので、現在畑で2種類のカラシナを育てています。まだ試作段階なので味は定まっていませんが、マスタードの奥深さを感じています」と八木さんは語ります。

他にもマスタード専門レストランに出向き、様々な国のマスタードを試食するなどして、味の方向性を模索しています。

「日本人にとっての辛子は、おでんに添える和辛子の印象が強い。洋辛子であるマスタードの使い方も限られているので、食べ方の提案も行いたいです」。

2018年の夏を目途に試作品を完成させ、地元レストランのシェフなどにアドバイスをもらいながら、特産品へと完成させていく予定です。

支援制度が終わっても、自活できるように

マスタード

カラシナは秋に種を蒔き、春先に咲いた花が枯れてから種を採取します。笛吹市内で借りている3ヶ所の畑でカラシナの栽培を行っていますが、カラシナは比較的強い植物なので、「生産がしやすいところもメリット」と八木さんは分析します。

笛吹市の特産品として国産マスタードを成長させていくことができれば、カラシナを育てる生産者が出てくることも予想できます。地元生産者の活性化だけでなく、耕作放棄地の活用にもつなげられるでしょう。

カラシナの栽培自体は、初心者でもそれほど難しくないので、千葉県のカラシナ生産者を訪ねて参考にしています。

ですが課題もあります。地域おこしの一環として国産マスタードの生産を行っている自治体や団体は極めて少なく、「特に山梨県近郊では参考にできる事例がないので、すべてが試行錯誤なのです」と木村さん。

もう一つの問題は、木村さんと八木さんの地域おこし協力隊としての任期が2018年度で終了予定であることです。「任期が終わったことで、せっかく立ち上げた事業が途絶えてしまわないよう、なるべく早い段階で成果を出したいです」。

国産マスタードを軸に6次産業化を目指すために、地元の方々に認知してもらうためのイベント開催やメディア対応など、積極的に動いていかなければいけないと考えています。ですが二人は、「まずは笛吹産のカラシナをきちんと生産し、特徴ある商品を完成させなければ」と冷静に考えています。

ビジネスモデルとして、将来性を見込まれて

マスタード

商品化はもう少し先ですが、こうした笛吹マスタード工房の取り組みが、総務省が主催する「地域おこし協力隊ビジネスアワード」に採択されました。2017年10月に発表された採択事業は、笛吹マスタード工房を含めた4事業です。

地域おこし協力隊の現役隊員やOB・OGが自治体のサポートを受けて行っている取り組みを対象に、先進的なものを採択しているビジネスアワード。採択されると、専門家からのアドバイスや、研修機会が設けられるなどのサポートを受けることができます。

こうした支援制度を活用しながら、動き始めた笛吹マスタード工房の取り組みは、食文化に彩りを添えるだけに留まりません。

笛吹市は、春先にモモの花と菜の花の饗宴が楽しめる場として、観光スポットにもなっています。菜の花と同じ黄色い花を咲かせるカラシナの栽培が増えれば、春の風物詩として観光スポットがより広域に広がるでしょう。八木さんは、「観光資源として、カラシナが春の景観を彩ることになってくれると嬉しいです」と期待を込めて話してくれました。

地域の農作物を使った特産品作りは全国各地の自治体で行われていますが、地域の特性を十分にいかした、個性豊かな特産品を生みだすのは容易なことではないでしょう。

ですが笛吹マスタード工房の国産マスタードが完成することで、ワインの産地であることや、フランス料理などワインと食事を楽しめるレストランが多い山梨県ならではの、特徴ある特産品としての可能性を十分に秘めています。

【取材先情報】
笛吹マスタード工房(笛吹市経営企画課 地域おこし協力隊)

画像提供:笛吹マスタード工房

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