ヌートリアとは?
ヌートリアの特徴
ヌートリアはカピバラに似て愛くるしい大型ネズミで、オレンジ色の前歯が特徴です。第二次世界大戦の頃、軍服用の毛皮養殖のために日本に輸入されたものが戦後に野に放たれて国内各地に棲み着き、今も繁殖が続いている南アメリカ原産の特定外来生物です。
ヌートリアの生態
もともと南アメリカの河川に生息しており、流れの穏やかな河川や沼地を棲家とし、泳ぎがとても得意です。基本的には夜行性で、前後の脚には鋭い爪があり、最大で直径30センチメートル、奥行き6メートルほどの巣穴を作ります。一夫多妻制で、凄まじい繁殖力を持つのも特徴の一つです。
カピバラとの違いは?
ヌートリアとカピバラを見分けるポイントは「尻尾」と「体長」です。ヌートリアには尻尾がありますが、カピバラには尻尾がありません。また、カピバラは120センチ前後の体長があるのに対し、ヌートリアは40~60センチ前後と比較的小柄です。性格はのんびり屋のカピバラとは違い、ヌートリアは凶暴でかむ力も強いとされています。
引用:環境省「特定外来生物ヌートリア」
ヌートリアによる甚大な被害
農作物への被害
ヌートリアによる農作物への被害は甚大で、その被害額は全国で1億円とも言われています。ヌートリアは草食動物で、主に水辺の農作物や地下茎などを好んで食べるため、稲やカボチャ、白菜、大根、ニンジンなど、国内の多くの農作物が被害を受けています。
人への被害
また、土手や堤防などに穴を掘って巣穴を作ったり、水面上に植物を集めて浮巣にしたりするため、貴重な水草の食害による生態系への影響が懸念されています。また、田んぼや河川などが荒らされる被害、電源ケーブルなどをかんで断線させるなどのインフラ被害も発生しているようです。
被害拡大の要因
ヌートリアの被害報告が増えてきている要因として考えられるのが、繁殖力の高さ。ヌートリアは年に2~3回繁殖し、1回あたり5匹程度の子を産むため、まさにネズミ算式に増えているというわけです。
ヌートリアを捕獲・駆除する有効な方法
ヌートリアの対策としては、防御柵を使った侵入防止のほか、箱わなを使った捕獲などが挙げられます。それぞれ解説していきます。
被害状況を確認する
水辺から遠くない農地で農作への被害が出始めたら、ヌートリアの痕跡を探してみましょう。水かきのある足跡や、巣穴、水辺の植物がかじられてバラバラになって浮いている様子などを見つけたらヌートリアによる被害の可能性が高いです。
防止柵を張り、侵入を防ぐ
有効な侵入対策は、田畑の周りに防御柵を設けること。その場合、柵の高さを60センチ以上に設定し、柵板のつなぎ目を完全に密閉することが重要です。高さが90センチ以上あるものだと、なお安心です。注意すべき点としては、1カ所でも脆弱な場所が見つかると、ヌートリアは学習してその部分に集中して侵入します。柵の下にネットを敷いて、下からの侵入を防ぐなどの工夫も必要です。
箱わなを使って捕獲する
根本的な解決策としては、捕獲を進めることも効果的。ヌートリアを捕獲するには、頻繁に行き来する移動経路を探し出し、箱わなを使用するのが一般的です。棲家となる水辺に木材などで足場を作り、箱わなを設置するのも効果があるでしょう。
ただし、ヌートリアは国から特定外来生物に指定されているため、手続きや許可なく捕獲・飼育・運搬することは原則として法律で禁止されています。
こうした法律上の制約もあって繁殖に駆除が追いつかず、いまだに生息数が増え続けているヌートリア。日本の農作物と生態系を守るため、自治体と連携した綿密な計画と早急かつ適切な対策が必要となっています。
天敵を使った駆除方法はない
国内にはヌートリアの天敵がおらず、かわいらしい見た目から人間が餌付けしてしまうこともあり、日本の環境に適応して驚異的に繁殖範囲を広げています。そのため、天敵を用いた駆除方法はないのが現状で、上述の対策などによって農作物への被害を防ぐ必要があります。
捕獲の際は伝染病に注意
ヌートリアはレプトスピラ症などの伝染病を媒介する可能性があります。捕獲した際には、かまれたり引っかかれたりしないよう手袋をつけて作業するなど注意を払うとともに、マメに捕獲機材の消毒なども行っておきましよう。
まとめ
ヌートリアは一見するとかわいらしい見た目ですが、南アメリカ原産で日本の環境に適応し、驚異的なスピードで勢力を広げています。その被害が確認される農家や地域では、自治体の協力や許可を得ながら、箱わななどを使った対策に取り組むことが大切です。人への被害が懸念されるため、接近や餌付けは避け、確実な捕獲や防御策に努めましょう。