ぬいぐるみで油断しない! 想像以上に怖い動物”クマ”
アニメ、漫画、絵本やマスコットでおなじみのクマは、のんびりしていて優しそうなイメージですが、実はとても危険な動物です。日本にはヒグマとツキノワグマが生息し、ヒグマは北海道に、ツキノワグマは本州と四国の山地(森林)に分布しています。近年は異常気象などによるドングリ等の食料不足や環境の変化のため生息地を離れ、人里に近づくことが増えました。このときに人と出会ったり、農作物などに被害をもたらしたりしているのです。
クマは聴覚や嗅覚が優れ、鋭いツメと大きな歯を有し、力が強い動物です。時速40km以上で走ることができ、水泳や木登りも得意という高い運動能力を持っています。こんなクマと突然出会い、引っかかれたり、押し倒されたりしたら、人間はたまったものではありません。冬眠前に食料を蓄える秋の時期は、特にクマの出没に注意が必要です。(※2)
※1 全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(平成28年):農林水産省
※2 クマに注意!:環境省
クマが農作物に及ぼす被害をデータで追う
農林水産省の統計によると、クマによる農作物被害量は1990年頃から徐々に増え続け、2010年の被害金額は約60億円に上ります。これは、1990年と比べると約4倍にも膨れ上がっています(※3)。
クマはドングリなどの木の実が好物なので、果実、飼料作物などの農作物に被害が及んでいます。果実は地域によって異なりますが、主なものとしてカキ、クリ、リンゴ、さらにブドウやモモなど、高価なものが多いため、被害金額はかなり大きくなります。飼料作物で被害が多いのは、家畜の飼料用に栽培されるトウモロコシ(デントコーン)で、北日本での被害が多く見られます。(※4)
また、直接クマと遭遇した際に起きる人身被害も後を絶たず、農家にとってクマの存在は大きな驚異となっています。
※3 クマ類の保護管理の現状:農林水産省
※4 クマによる被害:WWF
クマから農作物を守るための方法とは?
クマによる農業物被害を防止するためには、まずはクマを簡単に近づけないよう農地周辺の環境整備を行うことが大事です。周辺の草刈りを徹底して、クマの隠れ場所をなくし、野菜や果実の廃棄物など、えさとなるものを放置しないよう心がけて、クマを里に寄せつけないようにします。
また、クマは聴覚が優れ、人の接近をいち早く察知しますので、農地に人のいない時間帯もラジオなどの音を使って威嚇を続けます。作物の収穫時期に合わせて、電気柵を使うことも効果が期待できます。使いまわせる簡易型の電気柵でもじゅうぶんで、手前に1本副線を張り、8千ボルト以上の電圧を流すと、さらに効果が上がります。その際、漏電を防ぐための草刈りや電圧チェックもこまめにする必要があります。(※5)
クマによる被害を防ぐため、以前からさかんに駆除が行われてきましたが、クマを呼び寄せる原因をなくさない限り被害は続きます。農家にとっては、クマが出没してしまう環境を改善することが、大切に育てた作物と自らの命を守るための最良の手段といえるでしょう。
上記の情報は2018年3月20日現在のものです。