工場生産で一般家庭に普及したモヤシ
低カロリー、低価格の野菜として人気のモヤシ。モヤシとは人工的に発芽させた植物の若芽のことを指しますが、野菜としては緑豆や大豆のモヤシをいいます。原料となる豆の品種により味や香りが異なります。現在の主流は緑豆モヤシで、工場で生産されるため1年を通して流通し、いつでも食べることができます。
現在のモヤシは、輸入された豆を原料として使われていることがほとんど。緑豆は主にミャンマーや中国から、ブラックマッペはミャンマーやタイから、大豆は中国、アメリカ、カナダなどから輸入されます。また日本在来種の豆からモヤシを作る取り組みも行われています。
もともとアジア圏で古くから食用にされてきましたが、近年では欧米でも食べられるようになりました。日本最古の薬物辞典と言われる「本草和名(ほんぞうわみょう)」にモヤシの記述が見られることから、平安時代には既に存在し薬用として使われていたと考えられています。
一般的に野菜として広まったのは第二次世界大戦後です。その後、工場で大量生産が可能になったことから、広く普及しました。
鮮度の良いおいしいモヤシの見分け方
茎がシャキッとしてみずみずしいものを選びましょう。折れて切り口や根が黒ずんでいるもの、大豆モヤシなら豆が開いているものは避けましょう。
モヤシの保存方法
保存する際は袋のまま冷蔵庫の野菜室に入れます。モヤシは鮮度劣化が早く、1日でビタミンCが約30%減少すると言われています。そのため見た目には問題がなくても、なるべく早めに食べるのがおすすめです。傷がつくとさらに劣化が早まるので丁寧に扱いましょう。
残った場合は小分けにして冷凍しておくと使いやすくて便利です。冷凍したモヤシを使う時には、自然解凍すると水分が出てしまうため、凍ったまますぐに調理しましょう。
モヤシの栄養
モヤシには、疲労回復に効果があるといわれているアスパラギン酸が含まれています。
また抗酸化作用やストレスへの抵抗力を高めてくれるビタミンCのほか、カリウムなども含まれています。
モヤシの下ごしらえ方法
ザルに入れて折れないように丁寧に洗います。モヤシ特有の臭いが気になる場合は、流水にさらします。切って空気にさらすと、野菜に含まれる酸化酵素により、灰色がかった黒色に変化することがあります。そのため袋から出したらすぐに料理に使いましょう。
ヒゲ根と豆の皮を取り除くと食感が良くなります。ですがヒゲ根に旨味や風味が多く含まれているので、気にならないようなら、そのまま調理するのがおすすめです。
またモヤシが蛍光に発光する場合もあります。これは成長過程で蛍光を発する成分が作られることが原因ですが、食べても問題ありません。
モヤシのおすすめ調理方法
モヤシは和え物、炒め物、おひたし、サラダ、ラーメン、焼きそばなど様々な料理に使用できます。茹でる時はシャキシャキとした食感が失われないようにさっと茹で、茹でた後にザルにあげて冷ますと水っぽくなりません。
蒸し煮にして、ドレッシングや豆板醤などで和えると簡単に常備菜が完成します。炒め物にする時は、シャキッとした食感を残すため、水気を切り手早く強火で炒めましょう。
モヤシの種類
大豆もやし
豆が付いた状態のモヤシです。コクがあり、ナムルなどに使われます。
発芽大豆
芽が出たばかりの大豆です。豆特有の風味が強いので、茹でたり、蒸したりして食べるのがおすすめです。
ブラックマッペ
ケツルアズキのモヤシです。細めですが風味が強く、別名「黒豆もやし」と呼ばれています。
根切り
ヒゲ根が取り除かれた状態のモヤシです。食感と見た目が良いのが特徴です。
大鰐温泉モヤシ(おおにわおんせん)
青森県大鰐町の大鰐温泉で生産されるモヤシ。通常の工場生産されるモヤシとは異なり、350年以上前から続く昔ながらの製造方法を守って作られている伝統的なモヤシです。
地域在来の小粒種である「小八豆(こはちまめ)」で栽培している「豆モヤシ」と、ソバモヤシの2種類があります。温泉熱だけで地温を高め、温泉水を使用して昔ながらの土耕栽培を行っているのが特徴です。7日間かけて長さ30センチ以上まで育てます。長さだけではなく独特のうま味とシャキシャキとした歯ごたえが良い品種です。
一時期は後継者不足に陥り、生産が途絶えるのではと心配されていましたが、大鰐町が後継者の確保に乗り出したことで生産が継続されました。現在ではブランド化を目指し、2012年6月に地域団体商標として登録されています。
日本人にとって身近な野菜であるモヤシは、和食、中華など様々な料理に利用されています。冷凍しておけばすぐに使えるので、ぜひ毎日の食卓に使って楽しんでみてはいかがでしょうか。
参考:「野菜と果物の品目ガイド~野菜ソムリエEDITION」(農経新聞社)