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放棄地を活用した地域貢献 農作物を化粧品に活かす(2/3)

放棄地を活用した地域貢献 農作物を化粧品に活かす

一般社団法人JCC(ジャパン・コスメティックセンター)は、美容・健康産業による地域経済の活性化を目的に、2013年に佐賀県唐津市に設立された産学官の連携組織です。最近では、耕されなくなった放棄地から、ミカンの花を摘み取り、植物エキスを抽出しています。化粧品原料を生み出し、農家の新しい収入の形を目指す取り組みが注目を集めています。JCCチーフコーディネーターの小田切 裕倫(おだぎりひろつぐ)さんに話をうかがいました。

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生産者とメーカーをつなぐ役割 化粧品で社会貢献

6次産業

イチゴ農家を例にあげると、イチゴの収穫が終わったあと収入を上げるために、捨ててしまう茎や葉を化粧品の原料に転換するなど、いくつかの選択肢の提案を行います。

「農家の相談を受け、新たな価値を生み出せるように支援していきます。また、メーカーから『こういう原料がほしい』といった要望を聞いて、マッチングを行い、農家とメーカー双方をつなぐ役割を担っています。

イチゴの例で、茎や葉に当てはまるような副産物に付加価値を持たせるためには、軸となる農産品が魅力的であることも大事になってきます。自然栽培にこだわって産地のブランド化を進めたり、エリア全体で指導推進することも重要になってきます」。

これまでJCCが手掛けた成功例は、ざっと20例ほどあります。近年の例では、老舗の化粧品メーカーやオーガニックコスメメーカーでも採用されています。

「メーカーサイドでは、『化粧品で社会貢献をする』ということに積極的になっているような風向きが感じられます。生産者は、食品を生産する時とは違い見た目や味にこだわらずに出荷でき、メーカーからは常に一定のニーズがあることが強みだと思います」。

放棄地解消の一手 コスメブランド「ネロリラ ボタニカ」

空から見た放棄地

佐賀県はミカンの一大生産地で農地が多いことから、少子高齢化に伴い、それだけ農地の放棄地が増えてきているということも意味します。通常は計画的に更地にするのですが、その余裕がなくなってきているというのです。

「放棄地は全国的な問題です。人の手が農地に入らなくなると、作物の病気が発生したり、果実を狙った鳥獣による被害も増えてしまいます。放棄地は意外と街に近い場所にあり、隣り合って農業を営んでいるという場合もあります。放棄地は周辺住民にとって、大きな懸念材料でもあるのです」。

このミカンの放棄地の問題解消のために、自然に近い状態になったミカンの花から、エキスを取り出して化粧品の原料にするというプロジェクトがスタートしました。

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「たまたま怪我をして働けなくなり、農地が放棄地になってしまったという方がいたんです。けれども、ミカンの枝からはアロマのプチグレン、花からはネロリが採れることが分かっていました。だから自分たちで草刈り鎌を買い、荒れた畑の雑草を刈り取り、開墾してミカンの木を取り出しました。そのミカンの木から枝や花を採取し、大学のラボで提携することで、化粧品として使える品質なのかを見極める研究が始まったのです」。

結果として、アロマ効果の非常に優れたものが抽出されました。こちらはトップメイクアップアーティストの早坂香須子さんが手掛ける『ネロリラ ボタニカ』(株式会社ビーバイ・イー)というオーガニックコスメブランドのコンセプト成分「ジャパニーズネロリ」として採用されています。

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