マイナビ農業特集 座談会 良い商品をどう売るか ~ブランディング、営業手法を語る~Vol.1 – マイナビ農業

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マイナビ農業特集 座談会 良い商品をどう売るか ~ブランディング、営業手法を語る~Vol.1

マイナビ農業特集 座談会 良い商品をどう売るか ~ブランディング、営業手法を語る~Vol.1

最終更新日:2018年09月25日

誰にも共通の悩み、「どう売るか」。マイナビ農業では、気鋭の若手農家に集まっていただき、自由な発想で実践している、独自のプロモーションについて語り合っていただきました。
梨の直売率が99%という阿部梨園のマネージャーとして各方面から注目される佐川友彦さん。150種もの野菜を有機栽培して売り出している柴海農園の柴海祐也さん。自身の生んだブランド牛を6次化にも乗り出しながら育む長谷川農場の長谷川大地さん。4コマ漫画や動画などで積極的にPRするくらうんふぁーむの渡邉泰典さん。
4名による座談会を、全4回の連載特集で、お届けします。

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第一回

■参加メンバー
若手

「いろんな顔を持つといろんな事業をミックスできる」(渡邉)

渡邉さんのイチゴの販促には、イラスト化した自身の姿。かわいいキャラクターが目を惹く

渡邉:宮崎県日南市、くらうんふぁーむの渡邉です。地元は東京ですが、農業がしたくなって2015年に大学を辞め、宮崎に移住しました。生産品目はイチゴです。売り方はまず、自分がイチゴになること。髪の毛を去年は緑、今年は真っ赤に染めて、来年はイチゴっぽくツートーンで(笑)。

一同:(笑)。

渡邉:知名度が命かなと思っているので。ホームページで発信したり、YouTuberもしています。あと、もともと広告会社にいてイラストも描ける嫁がホームページ上で、くらうんふぁーむのことを4コマ漫画にして描いています。4コマで農家の暮らしを発信してるのは日本でうちだけです。

柴海:千葉県印西市にある柴海農園の柴海です。2009年から、有機無農薬で150種類くらいの野菜を栽培しています。渡邉さんは、コンテンツ力がすごい。

渡邉:嫁がすごいんですよ(笑)。僕は何もできないんです。YouTubeでしゃべるだけ。某テレビショッピングを真似て動画を作ったりして。いろんな代名詞を作るのが僕の一つのテーマ。農家でもあるのですが、同時に、パフォーマーとして皿を回していたり、学習塾で教えていたりもします。いろんな顔を持つといろんな事業をミックスできると思っていますね。僕のTwitterを見て、4コマを読んで、注文してくれた方がいました。嬉しかったですね。

長谷川:売りはほぼ直販だけですか?

渡邉:だけですね。2作目ですが、まだまだ技術が足りず量が取れてないだけですよ。

柴海:2作目って、自分は一番つらかったな。1年目は意外と簡単に作れたけれど、2年目は全然うまくいかなかった。

渡邉:栽培と直販は1年目より進化したんですよ。けれど、贈答用県外発送は思ったより伸びなかったですね。1 年⽬は、就農前にクラウドファンディングで収穫前のイチゴを先⾏販売しました。「助けてください」みたいな。それが 2 年⽬には、情で買ってもらった⼈たちが離れたこともあり。

佐川:1年目には、ご祝儀みたいな意味もあったかもしれませんね。

渡邉:買ってくれる人は知り合いが8割という現状。これから先「助けて訴求」だったら続かない。

「良い『点』をつないでいく」(長谷川)

若手

長谷川:栃木県足利市で70年近くやっている長谷川農場の長谷川です。畜産牛をメインに、二毛作農で米と麦、野菜はアスパラガスとタマネギを作っています。もともとの売り方は、すべて農協出荷でした。今、2代目としてやっている父には、相場が崩れても耐えられるだけの生産力があれば食えるという持論がありました。ですが、それだと誰が食べているかも分からないんですよね。地域密着型農業をやっているのに、地元で食べられる商品がないことが私にはショックで。私は星野リゾートに勤めていましたが、2013年に就農して、地域密着のブランド牛を作りたいと思い、足利マール牛という牛を商標登録しました。現在700頭飼育をしています。

柴海:多いですよね。

長谷川:畜産の業界では中堅クラスですよ。せめて1000頭までは増やしたい。700頭だと年間の出荷頭数に直すと300頭くらい。月に20頭ほど。仮に大きいスーパーから契約を取れても生産が追いつきません。
それよりも、良い「点」をつなぎたい。例えば飲食店へ卸すにしても、農場も見てくれて、ちゃんと料理してくれる料理人と付き合いたいです。
紹介されたら、1回食べに行かせてもらって、この人なら大丈夫だなと思うところにサンプルを送るという方法でやっています。時間はかかります。うまく売れているわけではないんですよ。面倒くさいし、もっとうまいやり方あるだろうと思いつつも、ブランドのイメージを大事にしたくて、そんな方法でやっています。

「特別なことはやらず、決められたやり方を煮詰める」(佐川)

若手

佐川:栃木県宇都宮市の阿部梨園の佐川です。うちは代表の阿部英生(あべひでお)が3代目です。贈答用の梨を作って、全体の99%を直売で売っています。先代の時点で直売優先に切り替えていて、お客様の基盤は以前からありました。今も、多くのお客様が軒先に買いに来てくれます。直売は最も粗利が高いのも事実ですが、お客様に対面で喜んで買ってもらうということを一番のモチベーションにしています。結果的に、卸売に出すルートや、系統出荷は、以前より減っています。
自分たちから営業かけることはほぼありません。長谷川さんと同じように、お声がけをいただいて、お付き合いが始まる感じです。広告を出すわけでも、地域イベントに出るわけでもない。一度買ってくださった方には翌シーズンも案内を出します。「他の方に食べてもらいたい」という「贈答の連鎖」をできるだけつなげて、お客様を増やすようにしています。特別なことはやらず、決められたやり方をいかに煮詰めていくかですね。

長谷川:営業したくないわけではないですよね。栃木県に、とても影響力のある、素材を大切にするシェフがいるオトワレストランさんという店があります。どうしても使ってほしくて、初めて営業に行きました。

佐川:オトワレストランさんには、うちも洋梨を使っていただいたことがありますよ。「音羽さんが使っているなら」と、他の取引先が増えるくらい影響力があるお方ですね。

長谷川:つながっている方もレベルが高くて。大事に食材を使ってくれています。良い「点」には、変なつながりが生まれないんですよね。

佐川:うちも、地元でブランド力の強い東武百貨店さんとの取引には、代表の阿部も「ぜひ扱ってほしい」という姿勢でした。扱ってくれることで、商品にお墨付きがついて直売のお客様も喜んでくれました。他所のブランドをお借りしたり、お互いに共有し合う部分はあるかなと思います。

まとめ)拡大させていくために考えること

若手

広げていくから苦労がある。多くの方に、知ってもらいたい、食べてもらいたいと思うからこそ、工夫をします。拡散させるツールが充実した今日、渡邉さんは動画やSNSなどを使いながら、独自のプロモーションをしていました。参加者が語る、広げていく姿勢に得るものはあります。
苦労を続けられる、モチベーションはどこにあるのか。そこにあった、実にシンプルなキーワードとは。第二回もお楽しみにどうぞ。
第二回に続く)

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聞き手・執筆:三坂 輝

《若手農家「良い商品をどう売るか」対談シリーズ【全四回】》
マイナビ農業特集 座談会 良い商品をどう売るか ~ブランディング、営業手法を語る~

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