マイナビ農業特集 座談会 良い商品をどう売るか ~ブランディング、営業手法を語る~Vol.3

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マイナビ農業特集 座談会 良い商品をどう売るか ~ブランディング、営業手法を語る~Vol.3

マイナビ農業特集 座談会 良い商品をどう売るか ~ブランディング、営業手法を語る~Vol.3

最終更新日:2019年01月16日

誰にも共通の悩み、「どう売るか」。マイナビ農業では、気鋭の若手農家に集まっていただき、自由な発想で実践している、独自のプロモーションについて語り合っていただきました。
梨の直売率が99%という阿部梨園のマネージャーとして各方面から注目される佐川友彦さん。150種もの野菜を有機栽培して売り出している柴海農園の柴海祐也さん。自身の生んだブランド牛を6次化にも乗り出しながら育む長谷川農場の長谷川大地さん。4コマ漫画や動画などで積極的にPRするくらうんふぁーむの渡邉泰典さん。
4名による座談会を、全4回の連載特集で、お届けします。

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第三回

■参加メンバー
若手

第一回の様子はこちら
第二回の様子はこちら

「農業って結局一人」(渡邉)

若手

佐川:渡邉さんは就農するときの苦労を、4コマにしたり、ガラス張りのフルオープンくらいのかたちで見せていましたよね。むしろ、借りたばかりの汚い畑も見せるようにして。

渡邉:お金が無かったので、廃墟みたいな耕作放棄地を借りました。前の方が捨てたままのビニールなど、3t ユニック車で6台分くらいのゴミがありました。思っていたより金がかかりましたよ。ちまちましたのも多かったです。「友達が来るから、スコップも3つ買わなきゃ」とか。
そうやってオープンに見せていますが、農業って結局一人じゃないですか。農業してるとずっとイチゴと付き合っている。作物は話してくれないし、見て感じなきゃいけない。日本語を忘れるんですよね。

長谷川:僕も牛のお尻だけ見て、一日終わるときがありますよ(笑)。

柴海:渡邉さん、生産者の顔になったよね。

渡邉:嬉しいです。初めて農家さんのところに行ったのが、柴海さんのところだったんですよ。覚えてますもんね。半袖半ズボンで行って。

柴海:こいつなめてんなと(笑)。

佐川:「生産者の顔になった」と言われて嬉しがるメンタリティがいいですよね。生産者になること自体を喜べるかは大事なポイント。そっちを喜べないと、どれだけ売れても仕方ないですよね。

「イメージを、自分の言葉でストレートに伝える」(柴海)

若手

柴海:自分の場合、ブランディングはあまり考えていなかったんです。もっと打って出たいと思ったときに、人に相談したら「良い苗字してるんだから名前に出しなよ」「せっかく良い野菜を作ってるんだからイメージを考えた方が良い」とアドバイスされました。自分は400年続く農家でもあって。そこで、もともと名乗っていた屋号から、柴海農園というストレートな名前に変えたんです。良いものがあるなら、より喜んでもらうためのイメージ戦略のように、自分の背景なども全部込めて。

佐川:個人農家だと、ありきたりな「◯◯農園」が嫌で名前を変えたり、個性を入れようとしたりする人が多いですよね。柴海さんは、逆の出戻りパターン。

長谷川:柴海さんのような例は聞かないですね。柴海農園は、すごいしっくりくる名前です。

柴海:自分じゃ分からないのかなって。例えば、阿部梨園では、阿部さんがすごく良い梨を作って、佐川さんがどう伝え、売るかを考えて、成功されている。農家で生産やっていると、そこまで考える余裕が無いというのが正直なところかもしれないですね。
私の場合は、幸運にもそういう方と会えて指摘いただいて、自分の思いが伝わりやすくなりました。どのようにしてお客様へイメージを、自分の言葉でストレートに伝えるかだと思います。思いが無いと意味がないと思うんです。

佐川:うちは、ホームページとかカタログとか今は僕が作っています。中の人が作れば、自分たちの表現したいことがお客様に伝わりやすいだろうという期待はあります。

「値上げは誠実に説明する」(佐川)

佐川さんの阿部梨園ではパッケージにもこだわる。写真は宝石箱をイメージした化粧箱

佐川:ノウハウのオープン化は、阿部梨園の販売に影響がなくてもやるくらいのつもりでやっています。もともと100%近く完売できているので、これ以上、お客様に来ていただいても梨がありません。業界向け、生産者向けに発信する情報ですし。だから、そこで収益を出そうという話ではない。短期的な売り上げでなくて、「栃木で頑張っている阿部梨園」を覚えてもらうことが5年後10年後に効いてくるのかなと思っています。価値があるとわかっていても誰もやってこなかったこと、それに手を上げた勇気を認めてもらえたら嬉しいです。

渡邉:100あって100売れてますという状態だと、これから先はどうするのですか。生産量の絶対量を増やすのか、販売単価を500円から700円に上げるようにして伸ばしていくんですか。

佐川:両方チャレンジしています。去年に新しい畑を作ったので、生産量はいずれ増えますが、数年の待ち時間がかかります。そこは果樹のつらいところで、生産規模を急には増やせないですね。急に増やせたとしても、技術やスタッフも追い付かない。無理には規模で攻めません。スケールアップがむずかしい以上は、買いやすくしたり、おいしくしたり、自分たちの付加価値活動をお客様に認めていただき、しっかり上積みを増やしています。
正直、単価は過去5年くらい、毎年上げています。地域で最高くらいの価格帯でやっています。ですから、直売で売り切っているだけではなくて、一番高いのに一番多く買ってもらっていることを誇りに思っていますね。

柴海:何%ずつくらいあげるんですか。

佐川:一律何%とかではなく、品種や商品ごとに微調整しています。常連さんには、1箱100円上げただけも「また今年も上げたのね」って言われるんです。けれども、そこで「高くしてすみません」と頭を下げるだけだったら、説明できていないことになります。「その分これだけ頑張っているんですよ」と説明できることが、僕のいる意味そのものです。価格表をちゃんと掲示して、価格差を説明して、誠実な対応を心がけています。その辺は悩みながらですし、上げて売れ行きが伸びないこともあります。場合によっては、売りたい商品を値下げすることも戦略的にはありますね。バランスとりながら。
値段を理解して買って下さる方とつながっていきたいです。薄利多売ではなくて高付加価値で。常連さんに対して、心苦しい部分はゼロではないです。

まとめ)真摯で誠実に歩いていくこと

若手

単価×客数=売上。もっとも簡単な公式です。売上アップを考えたときに、量を増やしていくこと、単価を上げていくことを考えるのは一般的でしょう。しかし、実際は単純にはいきません。畑を拡大させるにも、単価を上げるにも、慎重に誠実に進める佐川さんの姿勢には学ぶものがあります。
あの手この手を考える若手農家たち。次回はいよいよ最終回です。どうぞお楽しみに。
(第四回に続く)

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若手

聞き手・執筆:三坂 輝

 
《若手農家「良い商品をどう売るか」対談シリーズ【全四回】》
マイナビ農業特集 座談会 良い商品をどう売るか ~ブランディング、営業手法を語る~

 
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