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売上も経常利益もUP!?人手不足の緩和を期待される「農業のIT利用の実態」

売上も経常利益もUP!?人手不足の緩和を期待される「農業のIT利用の実態」

少子高齢化が進む現代の日本では、建設業やサービス業など、様々なジャンルで労働力不足が大きな課題となっています。そして人手不足に悩むのは、農業界も同じでしょう。そんな現状の解決策となり得るのが、農作業現場でのITの利用です。「農業現場のIT利活用」の調査結果から、どのくらい農業にITが取り入れられているのか見てみましょう。

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労働力不足の解決策として期待される施設・機械の増強やIT化

IT

2017年度の農業景況調査によると、雇用状況DI(※)は全体で▲34.6。2015年の▲26.3、2016年▲33.6と比べて、年々悪化していることが判明しました。

※DI(Diffusion Index = 動向指数)…前年と比較して、雇用状況の実績が「過剰である」の構成比から「不足である」の構成比を差し引いたもの。数字が小さいほど、不足している状況を表す。

「労働力が不足している」と回答した人に、どのような対策を検討しているか聞いたところ、54.9%と最も多かった回答が「施設・設備・機械の増強」でした。次いで、給与等受入体制の見直しによる「労働条件の改善」(43.7%)、「組織の省力化・効率化」(25.8%)となりました。

労働力不足への対策

労働力不足の対策として、「ITサービスの導入」と回答した人はわずか15.0%でしたが、実際にITサービスが農業の現場でどのくらい取り入れられているのでしょうか。

農業従事者の約半数がITを利用

個人で、ITサービスを利用している人は43.5%でしたが、法人では60.6%と高く、全体では49.4%と約半数がITを実際に活用しています。

ITサービスの利用状況

ITサービスを導入している人を業種別に見てみると、利用率が78.8%と最も高かったのは採卵鶏(※)で、ブロイラー(64.3%)、養豚(63.0%)、施設野菜(54.9%)などが続きます。逆にITサービス導入率が低い業種は、稲作(都府県43.1%、北海道42.4%)、露地野菜(43.8%)などが挙げられます。

※採卵鶏(さいらんけい)…卵を産ませるために改良・育成されたニワトリ。

 

売上・農業所得もアップ IT利用のメリットとは

ITサービスの導入によって期待されるものは、人手不足を補うだけでしょうか。実は、ITサービスを利用している経営体の方が、利用してない経営体に比べて売上高、経常利益が増加している、という調査結果が出たのです。

IT利用有無に係る売上高増加率の比較

ITサービスを利用している個人の売上高増加率は、サービスを利用していない場合は11.8%に対して、13.7%と1.9ポイント差。法人については、サービスを利用していない場合19.5%に対して、22.6%と3.1ポイントの差をつけています。

IT利用有無に係る農業所得(経常利益)増加率の比較

さらに農業所得(経常利益)については、法人の場合はITサービス利用によって、280.8%も増加しており、ITサービスを利用しない場合に比べて、高い成長性があることを示しています。

農業所得の増加率が高い業種としては、施設野菜、施設花き、きのこ、酪農、肉用牛、ブロイラーなど、施設利用により生産を行う業種が特にITサービス利用によるメリットが大きいようです

IT導入の初期投資額

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売上も経常利益も上がる、メリットの大きいITサービスですが、導入へのハードルを高くしているものの一つに初期投資のコストやリスクがあるでしょう。ITサービスを導入する場合、どのくらいの投資額が必要なのでしょうか。

「ITサービス導入で想定する初期投資の規模はどのくらいですか?」とたずねたところ、約6割の人が100万円未満と回答していました。ITサービスというと高額で大規模な場合を考えることがあるかもしれませんが、ソフトウェアの導入などは比較的小額での導入が可能です。資金面で負担の少ないところから、ITを利用したいと考えている人が多いようです。

ITサービス導入に当たっての初期投資の想定規模

また業種別にみてみると、畑作については「100万円未満」と回答した人より「100万円以上1,000万円未満」と回答した人の割合が高く、耕種の大規模経営である程度の規模の投資を考えている場合が多いものと予想できます。5,000万円以上の高額投資については、酪農や養豚などの畜産分野での回答が多く、機材、設備、飼養管理等の大規模導入が考えられます。

ITサービスの利用は、その分野に詳しくない方にとって、敷居の高い分野と感じられるかもしれません。ですが高齢化や人手不足の問題を解決すると同時に、作業を効率化できて、売上・経常利益を上げることに繋がると言えるでしょう。

「今後ITサービスを利用したいですか?」という質問に対して、「利用したい」と答えた人は、個人では63.8%、法人では75.1%にものぼっています。ITをうまく取り入れることが、農業界全体の未来を明るいものにしていくものと期待できるでしょう。

2018年1月 日本政策金融公庫調べ

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