日本のぶどうは外国人を怒らせるほど甘かった
始まりは、2005年に国の委託事業で“日本の食を海外に普及させる事業”の公募があり、提案した企画が採択されたのがきっかけでした。それがご縁となり、その後もアンテナショップ事業や、商談会事業、大使館公邸などでのレセプションパーティーの運営といった公的事業の受託者として、日本の食を海外に発信する事業にかかわってきました。受託事業は、年度ごとの事業で、仕様に沿って粛々と業務を遂行することが求められていましたが、私自身があるきっかけで、目覚めてしまったんです。
[株式会社JTB 法人事業本部事業推進部 地域交流事業推進担当部長 西川太郎]2005年より日本産農産物の海外輸出支援事業に取り組む。2014年にJTB主催の海外商談会を、2015年には農産物の輸出と訪日客の誘引を一体的に取り組む「J’s Agri事業」を立ち上げ、現在に至る。
マレーシアの百貨店で開催した日本産のフルーツフェアでのエピソードですが、日本のブドウを販売したところ、試食した現地の方が怒り出したんです。最初は何を怒っているのか分からなかったのですが、よく聞けば、「こんなにも甘いなんておかしい!天然と偽って、本当はアルコールや砂糖を添加しているんだろう!!」と誤解したようなのです。
確かにマレーシアに限らず香港でも、台湾でも、現地で普及しているブドウは日本産と比較すると酸っぱくて、硬い―。そもそも海外では、実ったすべての果実を出荷するのが一般的ですが、日本の農産物そうではありません。たとえば、ブドウならもっと甘く大きくするために間引きをしたり、リンゴなら味や色を良くするために、木の根元にシートを敷き、太陽光を均等に果実に当てたりとさまざまな手間をかけています。『モノづくりへのこだわり』は、日本人が長年培った気質であり、最高の技術だと気がついたとき、日本の農産物の可能性を強く感じたんです。