革命的なアスパラガス栽培に全国から注目
訪れたのは千葉県成田市の圃場。太陽もまぶしい2018年4月下旬のある日、50名近くの方々が集まりました。
お目当ては、1年で採れるアスパラガス「採りっきり栽培®」の実態を見ることです。
東京都や栃木県など関東圏だけでなく、遠くは広島県から来た方もいます。
アスパラガスの収穫に3年がかかる理由
アスパラガスは土から生えてきた茎(若茎)が収穫部位です。
太く育てて収量を上げるには根っこが大事。根っこは太い貯蔵根と細い吸収根に分かれており、吸収根がたくさん出るほど水分や養分を吸収します。そして貯蔵根が養分を蓄え、株は大きくなっていくのですが、1年目ではまだ小さいまま。大きくするためには3年がかかります。定植すれば10~15年は収穫できるのですが、栽培期間中は病害虫防除が必要になる上、手間暇もかかります。
また、暖地ではハウス栽培が必須のため設備投資のコストもかかります。
「採りっきり栽培®」はこうした不安を解消するべく、1年目の株養成だけですべてを採り切る露地栽培として研究開発されたものでした。
「1年目のアスパラガスがこんなに太いなんて!」
2016年の発表以来、着実に歩みを重ねる新しい栽培法
「採りっきり栽培®」は明治大学農学部農学科野菜園芸学研究室とパイオニアエコサイエンスの共同研究により実現しました。
2016年5月の発表会以来、同大と同社は圃場見学会などのイベントを何度も開催。この日のイベントでも、主に説明に当たったのは研究開発を中心になって携わってきた明治大学農学部農学科専任准教授の元木悟(もときさとる)さんです。
新たな作物の一つとしての選択肢
参加者にはすでに「採りっきり栽培®」を取り入れている農家もいらしていましたが、今後の検討のために来たという農家も多数集まりました。
パイオニアエコサイエンスの園芸種子部・川崎智弘(かわさきともひろ)さんは「これまでの参加者は『採りっきり栽培®』をすでに始めていたり、何回もいらしている方ばかりでした。今回、初めて来た方が多いのは興味を持つ方が増えているということ」と話します。
アスパラガスは、日本では北海道を筆頭に本州、四国、九州とまんべんなく収穫できます。「採りっきり栽培®」は、水田転換畑でもできるため、さらに選択肢も広いと言えるでしょう。
圃場見学を終えて、栽培セミナーへ
生産者や元木さんの説明などを聞きながら、1時間ほど実際の圃場でアスパラガスの元気な萌芽を目の当たりにした後は、栽培セミナーに移りました。
そもそもなぜ、1年での収穫が可能なのか。
アスパラガスの定植は、霜の被害を避けるため5月ごろが一般的です。これに対し「採りっきり栽培®」の定植は3~4月ごろ。早く植えることで長く育てられるため、1年目から太いアスパラガスが収穫できるのです。
早植えでも霜の被害を避けるポイントは「専用ホーラー」
早植えでも栽培できる理由は、通常よりも15cm深く苗を植えることで地温を確保できるから。これを可能とするのが10cm径の穴、およびさらに深くに苗が植えられる3cm径の穴を1回で掘ることができる専用の植え付け器=ホーラーです(明治大学で特許出願済み)。これによって苗の周りに壁が作られ、外気の影響を受けにくくなることで地温が保たれ、霜の害を避けることができます。
セミナーでは、こうした「採りっきり栽培®」はもちろん、アスパラガスの作型や防除のタイミング、凍霜害の見極めや対処について丁寧に説明。参加者の男性は「踏み込んだ話が聞けて、勉強になりました」と感想を話してくれました。
今後の農家の大きな期待を担う「次世代アスパラガス」
長野県職員だった元木さんが、当時担当していたのがアスパラガスでした。
「従来は収穫が少なかった3~5月の時期に採れるアスパラガスができれば、農家の収入が上がるのではと考えたのです」。
平均単価を調べると4月は少し高いそうで、「ブランド化すればさらに高く売れるのでは」とも考えているとのこと。
川崎さんも「キロ単価で優位に立てますし、何よりもどこでも作れてたくさん採れることで、新鮮なものを地元の人に食べてもらえます。アスパラガスは野菜の中でも“足が早い”ため、近くで採れるに越したことはありません。地場産であることの価値は高いと思います」と語ります。
翌年用に残す必要もないため、できたものはすべて収穫。作業効率にも優れます。
セミナーの機会などを今後も設け、たくさんの人に作っていただく
アスパラガス栽培の可能性を広げた新しい「採りっきり栽培®」は、新規就農でアスパラガスを始める際にも心強い存在となるでしょう。
パイオニアエコサイエンスでは、土壌や水・植物の分析を行い、農家へのアドバイスも行っています。見学会やセミナーなどのイベントは今後も続けていく予定だそう。
「手間がかからないのがいい」~参加者の声
情報交換できるのが、こういうイベントのいいところ
イベント中、参加者の声をうかがいました。
栃木県から参加したという柳姉妹は、2人でアスパラを栽培しているそうです。
「ハウス栽培で作っていましたが、昨年、明治大学でのセミナーに参加してこの『採りっきり栽培®』を取り入れました。とにかく手間いらずなのがいいですね」とのこと。
埼玉県所沢市から参加した野口さんは昨年から、東京都府中市から参加した村越さんは一昨年から、ともに「採りっきり栽培®」を実践していたと言います。
「祖父の土地にアスパラを植えたのは、周りがやっていなかったから。ただその分、情報が少なくて…こうしたイベントで同じアスパラ農家と情報交換ができるのは嬉しいですね」(野口さん)
「僕も情報が少ない中で栽培していますが、パイオニアエコサイエンスさんも明治大学さんもすごくアドバイスしてくれてとても助かっています」(村越さん)
パイオニアエコサイエンスの川崎さんも明治大学の元木さんも「農家の皆さんは情報を求めていると思います。これからもできる限り伝えていきたいですね」と口を揃えています。
パイオニアエコサイエンスでは月に数回、生産者向けのオンラインセミナーを開催しております。
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