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雑草は根から抜いちゃダメ!? 草刈りの新常識【畑は小さな大自然vol.4】

雑草は根から抜いちゃダメ!? 草刈りの新常識【畑は小さな大自然vol.4】

こんにちは、暮らしの自然菜園コンサルタントのそーやんです。今回のテーマは「雑草は根から抜いちゃダメ!?」です。これから夏本番。草刈りが大変な時期になってきます。普段、皆さんは雑草を根から抜いていませんか? 実は雑草の根を残して刈ることで、土が軟らかく栄養豊富になり、だんだん刈るのが楽な雑草が生えるようになるという不思議なことが起こるのです。根から取った方が良い雑草もありますので、最後まで読んでいただき、ぜひ試してみてください。

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なぜ根っこから抜いてはいけないのか


なぜ雑草を根から取らない方が良いのかというと、雑草を抜くたびに土が締まって硬くなっていくからです。土が固くなると、固い土でも繁殖できるような雑草が生えて来やすくなります。このような雑草は根の張りがとても強いのが特徴です。つまり、根から抜くことを繰り返すことで、草取りがだんだん大変になるという悪循環に陥る危険性があるのです。もちろんこれは程度の問題ですので、少しくらい抜いてしまっても、すぐに土が硬くなるというものではありません。
では、なぜそうなってしまうのか、根の本来の役割を知って考えてみましょう。

根の本来の役割


植物の根の役割は、「土から栄養を吸うこと」と答えられる方が多いと思いますが、実はそれだけではありません。「土を掘り進め、軟らかくすること」も重要な役割なのです。そうすることで、その植物自身も根を張りやすくなりますし、次の世代の子孫もそこで根を張ることができます。
さらに、光合成で作った糖分を根から出して微生物を集め、彼らが住みやすい環境を土の中に作るという役割を持っています。つまり、土の中で微生物と植物がお互いに協力し合いながら、住みやすい土を作っているのです。それがまた、野菜が育ちやすい土の環境にもつながっていきます。

枯れた後の植物の根は、微生物たちによって分解され、土の栄養となります。また、根があった部分は土の中でトンネルのように空洞として残るので、土がフカフカになっていくのです。根から抜いてしまうとこの空洞は生まれないので、土が少しずつ締まっていきます。

土の環境が変わると、生える雑草も変わる


このように植物たちは根を使って、微生物たちと協力して土の中に住みやすい環境を作っているのですが、より住みやすい環境になってくると、実は生える雑草が変わってきます。これはちょっと難しい言葉で説明すると「植生の遷移」という現象です。耕作放棄地も最初は小さな雑草が生えますが、何十年と放っておくと、だんだんと森になっていくというのと同じような現象です。畑でも同じように土の環境が変わると、少しずつ生える雑草が変わるのです。

つまり雑草の根っこを残して切ることで、土がフカフカになり、フカフカの土を好む微生物や雑草が増えます。このような環境で生える雑草は、根の張りが浅く、背が低く、柔らかいのが特徴です。こういう性質の雑草は草刈りするのにも楽ですし、野菜の生育の邪魔になりません。このような雑草が生える環境になってくると、畑の手入れはかなりしやすくなります。

ハコベは野菜と共生しやすい雑草の一つ

耕すことでも土はフカフカになったように思えますが、それは一時的なものなので、根本的にそして長期的にフカフカな状態を保つためには、根っこを残した草刈りが必要になります。またこれに合わせて前回の記事で少し紹介した、雑草・落ち葉マルチを行うと3〜4ヶ月でかなりフカフカで栄養豊富な土ができていきます。

前回の記事はコチラ:梅雨は畑仕事のヤマ! コツを知って乗り越えよう【畑は小さな大自然vol.3】

お勧めする草刈りの仕方

確実に根元の下を切るのがコツ

基本は、根を残して「根元より下」を刈ることです。特に葉っぱが細長いイネ科の雑草は「成長点」と呼ばれる成長が始まる部位が根本にあります。ですから、これより上の位置で刈ってしまうと、またすぐに成長してきます。この位置よりも下で、鎌を少し土に入れて根をできるだけ残すように刈っていくことが大事なポイントになります。慣れないうちは時間がかかるかもしれませんが、慣れると雑草を抜くよりも速く楽にできるようになるので是非マスターしていただきたい刈り方です。

できるだけ根は土に残しておく

少しでも根元が残っているとまたすぐに伸びてくる

「根を残しておくとまた生えてくるのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。確かに生えてくるものもあります。ただし種類が限られていますので、次の章でご紹介するものだけを例外として覚えておいてください。

根を取り除いた方が良い草

ヨモギなどの地下茎で増える植物は根からとる

根を残しておくと、また生えてくる植物は大きく分けると次の2種類あります。
まずは地下茎という地面の下で茎を伸ばし繁殖していく植物。代表的な雑草としてヨモギ・チガヤ・スギナなどがあります。次が、球根で生えてくる雑草です。球根で生えてくる雑草よりも地下茎のものが圧倒的に多いので、まずは地下茎の雑草を覚えておきましょう。これらの雑草は野菜よりも強い雑草なので、野菜の近くに生えている場合は根っこごと抜いた方が良いです。

地下茎が生えなくなる土づくり

先ほどご紹介した「植生の遷移」の原理で、土がフカフカで豊かな状態になれば、自然と地下茎の植物は減っていきます。そういうわけで、今回ご紹介した草刈りとともに、土づくりを同時に行うことが根本的な対策となります。いくら毎回地下茎の根っこを取り除いていたとしても、土自体が硬くて痩せている状態であれば、また繰り返し地下茎の植物が生えるようになってしまいます。

次回のテーマはこの土づくりについて詳しく書いていきます。肥料に頼りすぎず、土の力そのものを育てていくことで、生える雑草も柔らかくなって草刈りが楽になるだけでなく、病気や害虫・連作障害の被害にも会いにくくなっていきます。またミネラルのバランスも整うので、野菜の栄養価も高くなっていきます。お楽しみに!

次の記事:肥料が不要に!? 地力を高める3つのポイント【畑は小さな大自然vol.5】
 

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  1. マイナビ農業編集部(勇崎) より:

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