灰色のスリムなボディ。関東以西では冬に要注意!
都市部でもよく見かけるヒヨドリは、「ヒーヨヒーヨ」と鳴くことから名付けられたとも言われている野鳥です。古くから日本に住んでいて、平安時代や鎌倉時代には貴族などに飼われていたという記録があり、その巣は縁起物とされていたそうです。ハトよりやや小さい灰色のスリムな体、ボサボサとした頭が特徴で、よく見ると気の強そうな風貌をしています。
ヒヨドリは人に懐くこともできる賢い鳥です。大きな動物には警戒心が強いものの、自分より小さな鳥には攻撃するなど気性が荒い面も見られます。冬季は南に渡って越冬するため、関東以西に個体数が増え、農作物への被害が多発しています。冬季の1~3月、かんきつ類の果樹とキャベツなど露地野菜への被害が多いのがヒヨドリならではの特徴です。
被害は年によって変動! かんきつ類やキャベツをくちばしでえぐる
鳥類による農作物への被害金額はカラスの次に多いヒヨドリですが、被害量は年ごとに増減しています。これは、ヒヨドリが好んで食べる果樹の豊凶の変動が年によって大きいこと、また、関東以西へ移動する個体数も年によって変動するためと考えられます。
ミカンなどのかんきつ類は、果皮の厚くないものを狙い、細いくちばしでちぎったり、つついたり、差し込んだりして中身を食べます。キャベツなどの露地野菜は、外葉を食べた後に、結球部をえぐり取るという被害状況が報告されています。これらの痕跡は昆虫による被害とは明らかに異なるため、ヒヨドリの被害と認識した上での対策が必要となります。
色や音では効果続かず……ヒヨドリの対策方法は?
ヒヨドリには、本能的に避け続ける色や音といったものが存在しません。なので、被害への対策として色や音で威嚇する方法は難しく、状況によってある程度の効果しかないと考えてください。威嚇する際は、道具の種類や位置、組み合わせを頻繁に変えて、ヒヨドリに慣れさせないことが大事です。
最も確実なヒヨドリの被害対策は、防鳥ネットを使って農地への侵入を防ぐことです。ネットはヒヨドリのサイズに合わせて網目が30ミリ以下のものを用い、作物と接しないように農地周辺に設置します。
テグスは避けて飛行されてしまう可能性があるため、あまり効果が期待できません。三重県の農業研究所では、手で簡単に切れる裁縫用のミシン糸を畑に張りめぐらせることで、低コストかつ効率的にヒヨドリによる食害率を下げることができた、という報告もあります。
平安貴族に可愛がられていたヒヨドリも、現代の農家にとっては農作物を荒らす害獣でしかありません。まずは、生ゴミ、廃棄果実などの放置をなくしてヒヨドリが集まらない環境を作ること、加えて年変動のあるヒヨドリの動きを念頭に置いて対策を練ることが、農作物への被害を防ぐ第一歩になりそうです。
次回も農家にとっての憎らしい天敵、意外な害獣をご紹介します。
参考
野生鳥獣被害防止マニュアル 鳥類編(PDF):農林水産省
p.14「1章[2]ヒヨドリ」
p.76〜79「3章[2]糸を使ったウンシュウミカンのヒヨドリ食害対策」
鳥類の生態と被害対策─カラスとヒヨドリを中心に─(PDF):独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構
上記の情報は2018年6月21日現在のものです。