遮光率99.99%の暗闇でつくる白いお茶「白葉茶」とは

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生産者の試み

遮光率99.99%の暗闇でつくる白いお茶「白葉茶」とは

遮光率99.99%の暗闇でつくる白いお茶「白葉茶」とは

最終更新日:2018年08月22日

ペットボトルの普及とメーカーの技術革新により、私たちは急須がなくても1年中おいしいお茶を楽しめるようになりました。一方、お茶農家は価格低下や販売ルートの確保に苦しんでいます。そんななか、新しいタイプのお茶で勝負をしているのが静岡県袋井市の安間製茶。高校教師、Webライターを経て茶農家に婿入りした異色の経歴を持つ代表の安間孝介(あんま こうすけ)さんに、新しいお茶の秘密と販売戦略について伺いました。

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苦境に立たされる茶業界

山に囲まれた袋井市の茶畑。傾斜がきつい場所は手摘みをする

お茶の価格は10年前から4割減

静岡県袋井市出身の安間さんですが、茶農家になるまでは地元でお茶をつくっていることも知らず、専らペットボトルのお茶派だったといいます。茶農家転身のきっかけは、当時恋人だった茶農家の娘である奥さんが急須でいれてくれた一杯のお茶。初めて味わうお茶のうまみに衝撃を受け、翌日には急須を買いに行ったほどでした。「わざわざ急須でいれて飲みたくなるお茶をつくりたい」。奥さんのご両親の代で終えようとしていた茶農家を継ぐ決意をした瞬間だったといいます。
しかし、茶業界は想像以上に苦境に立たされていました。
大手メーカーは、安価な番茶からまるで急須でいれたかのような風味を引き出すことに成功しており、そうした技術革新に比例するように茶農家や販売店の需要は減少。価格は10年前に比べると4割(1700円/kg)も下がっていました。
生産者が手間ひまかけてつくったお茶の価値が、どんどん下げられている――。
現実を目の当たりにした安間さんは思いました。「自分でお茶を商品化し、ブランディングして自らの手で売るしかない。商品に幅を持たせるためにも色んな品種のお茶をつくろう」。
とはいえ静岡の茶農家の大半は「やぶきた」という品種で、ご多分に漏れず安間製茶も100%やぶきた茶。
一から新品種を育てるとなると、何年もかかります。そんな考えを巡らせていた時に出会ったのが、白いお茶「白葉茶(はくようちゃ)」でした。

飲む人に衝撃を与える白いお茶

白葉茶(左)と普通のお茶(右)葉の色から明らかな違いが分かる

農家の基礎を学ぶために通った農業学校で、安間さんが研究テーマにしていたのが「白葉茶」でした。茶農家さんが「たまたま遮光資材が重なっている部分の茶葉だけが白くなった」。と研究所に持ち込んだ茶葉を調べると、日光が遮られることで色が白くなっただけでなく、普通のお茶と比較して最大で約3倍、玉露と比べても約2倍にアミノ酸が増えていることが分かりました。また、苦み成分のカテキンは50~80%減少し、苦みのほとんどないお茶でした。安間さんは12品種のお茶で比較実験を行い、その研究発表は農林水産大臣賞を受賞。これをきっかけに、静岡県農林技術研究所茶業研究センターの協力を得ながら安間製茶でも白葉茶をつくることにしたのです。
また、幸いなことに被覆白葉茶(※)は、品種に限らずどの茶畑でも被覆をすることで白葉茶にすることができます。頭を悩ませていた“一から品種茶を作る”という手間も省くことができました。
※覆いをかけ遮光して栽培した白葉茶。白いお茶にはこのほか、突然変異の枝を挿し木で増やして新品種とする「白葉品種」と、お茶の葉を弱発行させ乾燥させた中国茶「白茶(ハクチャ・パイチャ)」がある。

暗闇でつくられるお茶

全て手作業で遮光材をかける

白葉茶は理論上、99.99%以上の遮光率がないと白くなりません。遮光率98%の市販の遮光材を3重掛けにすることで、ようやく99.99%以上の遮光率になります。日光を完全に遮ることで、うまみのもとになるアミノ酸成分であるテアニンのほか、普通のお茶にはほとんど含まれていないアスパラギン、アスパラギン酸、そしてエナジードリンクにも含まれているような成分であるアルギニンが増えます。こうした理由から、見た目はもちろん味も通常のお茶とは全く異なり、口に含むと玉露のようなうまみと独特の出し汁のような風味で、喉ごしはすっきりしていながらも、いつまでも続く余韻が忘れられない味わいに仕上がります。

薄い色からは想像がつかない強い旨味を感じる

販売戦略とブランディング

白葉茶は希少です。遮光資材を手作業で3重掛けするという手間もさることながら、光を遮ることで芽が伸びなくなり、被覆するタイミングが早すぎると収獲量が大幅に減ります。逆に被覆が遅すぎると葉が白くなりません。「日本一といってもいい位手間をかけているお茶だからこそ、この大切な白葉茶を、どこで誰にどう売ってもらうかを考え抜きました」。
安間さんは、今までの落札制ではなく、白葉茶を気に入ってもらえる販売店を自分で探すことから変えました。「発信力のある人や場所に託し、自分は少量だけ残して予約制で受けた方がいいと思いました。パッケージも考え直しました。白葉茶は高価なお茶として売り出しているので、来客や特別な日に飲むお茶として少しずつ楽しんでもらうことを想定して小分けにするなど、飲む人のシーンに合わせて考えています」。

銀座、そしてモンゴルへの進出

茶農家仲間とモンゴル視察へ

販売先として、新しいものへの感度が高い人が集中する銀座も注目しており、中でも生産者の情報をしっかり出してくれるカフェや販売店へ営業しているそうです。また昨年にはモンゴルにも進出をはじめました。「海外といっても、お茶と親和性が高そうな国には既に大手メーカーが参入している。そこで面白いと目をつけたのがモンゴルです。モンゴルには日本とは全く異なる独自のお茶文化があるのですが、寒さが厳しい地域のため、お茶をはじめとした飲み物には決まって砂糖が入っています。そんな食文化が原因で成人病が問題視されていることを知り、これからは糖分や塩分が入っていないお茶の需要がくるんじゃないかと思い、打って出ることにしました」。ところが初回視察では“うまみ”という概念がない国ではなかなか難しいことを実感したそうです。「対策として、成人病への効果が期待できるカテキンが多く含まれた番茶を採用したり、主食の肉に合うフレーバーをつけたりするなど改良を重ねて次の視察の準備をしています」。
安間さんがこうした挑戦をし続ける理由は、販路の拡大だけではないといいます。
「白葉茶にしてもモンゴル進出にしても、それだけで儲けようとは思っていません。こうした挑戦をきっかけに、安間製茶の普通のお茶を知ってもらいたい。そして、袋井市で美味しいお茶をつくっていることをもっと知ってもらいたいんです」。
安間さんの新しい挑戦は続きます。

安間製茶

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