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「儲かる農業」〜クラウドファンディングを活用! 新しい資金調達とは~

連載企画:儲かる農業特集

「儲かる農業」〜クラウドファンディングを活用! 新しい資金調達とは~

農業経営にとって大きな課題となるのが「資金調達」。土地だけではなく、トラクターやコンバインなどの農業機械、ビニールハウスなどの設備費用、人件費まで、農業事業には年間を通してさまざまなコストがかかります。そんな中、“クラウドファンディング”を通して、農地の整備や農業機械の調達にかかる費用を得た千葉県四街道市の水稲農家・ファームさきくませさん。今回は、「資金調達」における選択肢と活用例について、代表の栗山治(くりやま・おさむ)さんにお話を伺いました。

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新規就農者の「資金調達」。最初はどうやって行う?

5月に行った田植えの様子。歩行田植え機での田植えが必要な圃場も

2016年に全国新規就農相談センターが行った調査(※)によると、就農1年目にかかった費用の平均は569万円で、内訳として機械・施設等への費用が411万円、種苗・肥料・燃料等への費用が158万円という結果になりました。さらに、就農5年目以上になると費用平均は661万円に。これから新規で農業を始める方はもちろん、継続して農業を行う場合も資金面での課題はつきものです。

県のホームページから情報を収集するなどして、実家が所有していた土地で、2011年から水稲農家を始めたという栗山さん。「国や地方自治体が行っているスタートアップ型の新規就農者向けの制度もありますが、例えば、“5年後にコストを差し引いた上で250万円の収益をあげなくてはいけない” “5年後に農業で生活が成り立つ実現可能な計画を立てること”など、制約があるんです」。栗山さんの場合は慎重に検討した上で、新規就農者向けの助成は受けなかったのだそう。

1年目は歩行型の手押し田植え機で田植えを行っていたそうですが、徐々に面積を広げていくようになると、手押し式ではなく20馬力のトラクターなど、使用する農機具も変化していきます。
「何年かやっているうちに近隣の農家の方と親しくなり、使っていない田んぼを貸してもらえるようになりました。そうして扱う農地が拡大されていくにつれ、所有する農機具も馬力の大きいものへ変わっていきました。36馬力のトラクタは120万円で安く購入しました」

※ 新規就農者の就農実態に関する調査結果 -平成28年度-(PDF):一般社団法人全国農業会議所 全国新規就農相談センター

クラウドファンディングという選択肢

田んぼを眺める栗山さん

2015年、もともと0.5ヘクタールだった田んぼを、3ヘクタールまで広げた栗山さん。新しく獲得した農地に休耕田があり、その再生のために資金が必要だったことや、農地拡大による運営費の不足などを受け、知人から紹介されたことをきっかけに、「クラウドファンディング」をスタート。“千葉県の耕作放棄地を再生させ、もう一度稲穂を実らせたい!”と呼びかけ、資金を得ることに成功しました。

「クラウドファンディングから得た資金をもとに、ニューヨークで個展をした版画家の友人がいて。『やってみたら?』と言われたことがきっかけでした。農業は常に“自分で作ったものを売ること”が前提としてあります。今回クラウドファンディングによって資金を得ることから、応援してくれている方にどのような形でお返しできるか、ということを考える良いきっかけになりました」

出資してくれた人の中には、全く面識のない人もいたそうです。2015年に行った1回目のクラウドファンディングでは目標金額25万円に対し、34万円の援助が。さらに、2016年に行った2回目のクラウドファンディング“千葉県四街道にお米を育てる農業法人を作ります!!”では目標金額25万円に対し、44万円のサポートが得られた栗山さん。資金は、法人立ち上げ費用のほか、耕作放棄地の整備費、農機具の調達費、けん引免許所得費用などに充てられたとのことです。

「ただ資金を獲得するだけではなく、クラウドファンディングを通して“応援してくれる人がいる”と感じることができたし、周囲がどのように自分のことを見ているのか、客観的に自分を見つめ直すこともできました。もちろん、クラウドファンディングだけに資金面を頼ることにはかなりリスクがありますが、改めて今自分ができることについて考える良いきっかけになったと思います。これからも地元でお米作りをし、地域の人たちと協力しながら農業を続けていきたいと感じました」

事業拡大における「資金調達」の方法

ファームさきくませの田んぼ

栗山さんはこれまで、JAが行っている農業融資「アグリマイティー資金」によって180万円の資金を受け取り、コンバインの購入費用に充てました。他には、四街道市が行っている認定農業者向けの助成金制度で、農機具の4分の1の資金援助を受けたそう。

「農地拡大など、規模が大きくなるにつれてその分コストもかかります。今年は黒字の見通しが立っているため、余裕資金を人件費などに充てていく予定です。黒字を出すまでに数年がかかりましたが、今では規模が10ヘクタールを超えるなど、事業規模を拡大することができたため、販売先などから声が掛かるようになりました。現在はGAP(農業生産工程管理)を取り入れようか検討中です。作業を分割化して管理することで、人選などもよりスムーズになるのではと考えています」

国が行っている就農者向けのスタートアップ資金や融資、助成金については、「先を見越してよく考えること」が大事だと栗山さんは話します。農業についてのノウハウをあらかじめ勉強してみたり、準備資金を貯める方法を考えたり、最初は兼業で徐々にスタートさせたりするなど、自分なりの方法を模索することが大事なポイントとなるようです。

「助成金などのスタートアップ資金のみに頼るのではなく、周囲の農家の方とコミュニケーションを取り、営農に実際いくらコストがかかるかということや、農機具の調達法などの情報を得ることも、資金のサポートを得る上で大切なことです。農家同士でのつながりはとても大切で、ノウハウの共有や、作物が枯れてしまったときにどう対処したらいいのかなど、アドバイスを受けることで救われたことがたくさんありました」

 
「クラウドファンディングを通して生産者と消費者の距離が近くなった」と栗山さんが話すように、周囲と協力し、「自分のやりたいこと」をクリアにしていくことで、資金のサポートを得るきっかけとなります。「荒れている農地をなんとか維持したい」「生産効率を上げて農業を辞めなくてよい環境を作りたい」という栗山さんの思いは、クラウドファンディングという新しい方法をうまく活用したことで認知度が広まり、これからの事業拡大に向けた大きなステップとなったようです。

 
ファームさきくませ -くりやまさん家のコシヒカリ-

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