ムクドリの生態
ムクドリの特徴
街路樹や電線など身近な場所でよく見られるムクドリは、日本全国に生息しているスズメ目ムクドリ科の鳥で、日本では1年を通じて見られます。全長が平均24センチほどの黒褐色の体に、首から頭とおなか周りに白色が混じり、オレンジ色の足とくちばしが特徴です。
雑食性のムクドリは田んぼや畑に被害を与える害虫も食べていたので、昔は益鳥として知られていました。しかし、1960年代以降からナシなど果樹園の果実への食害が深刻化。群れでの行動によるフンや鳴き声の騒音被害も増え、現在では害鳥と位置づけられることが多くなっています。
ムクドリの性格
ムクドリは、少々やんちゃで活発な性格を持つ鳥です。縄張り争いや餌の取り合いでは、ほかの小鳥と喧嘩することも珍しくなく、図々しさを発揮して自分より大きな動物の餌を奪おうとする大胆さもあります。
その一方で、警戒心が強く、天敵であるカラスやタカから身を守るために大きな群れを作ります。一羽が危険を察知すると、群れ全体に警告を共有し、数百~数千羽が一斉に逃げ出す連携力も特徴的です。
また、ねぐらとして駅前の街路樹など人が多い場所を選ぶことがあり、賢く適応力のある一面も見られます。
ムクドリによる被害状況
鳴き声による騒音
ムクドリは夕方になると街路樹や電線に集まり、仲間同士で盛んに鳴き交わします。「ギャーギャー」「ギュルギュル」といった大きな鳴き声は、100羽以上の群れともなると相当な音量となり、近隣住民にとって騒音問題に発展します。特に都市部では明るい街灯の下で活動を続けるため、夜間でも鳴き声が収まらず、不眠やストレスの原因となることがあります。
糞尿による汚染と悪臭
群れで集まるムクドリは大量の糞尿を一斉に排泄します。街路樹の下や電柱の周辺、住宅地の庭やベランダ、ムクドリのフンにより駐車場の車が汚されるなどの被害が発生し、清掃に手間やコストがかかるという問題も報告されています。また、ムクドリの糞尿には病原菌が含まれている可能性があり、放置するとオウム病やクリプトコックス症などの感染症を引き起こすリスクもあります。
農作物への食害
雑食性のムクドリは果実や穀物を好み、果樹園や畑に飛来して被害を及ぼします。特にサクランボ、ナシ、ブドウなどの収穫期を迎えた果物が標的となり、群れで襲来することで短時間で大きな損失を招きます。一部の品種は糖度が高いため特に狙われやすく、農家にとって深刻な問題です。
家屋への巣作り
ムクドリは繁殖期になると家屋の隙間やエアコンの配管、雨戸の戸袋などに巣を作ります。巣があることで糞尿による汚染や騒音被害が発生するだけでなく、巣に寄生するトリサシダニやワクモが住居内に侵入し、人に吸血被害をもたらすことがあります。これによりアレルギーや感染症が引き起こされるリスクも高まります。
都市部への集中と人間生活への影響
ムクドリは天敵から身を守るため、都市部の街路樹や電柱をねぐらに選ぶことがあります。そのため、人間の生活圏と重なる場面が増え、結果として人々に迷惑をかけるケースが目立っています。特に都市化の進展によって自然環境が減少したことがムクドリの行動範囲を制限し、被害を増加させる一因となっています。
おすすめの駆除・撃退方法
天敵を利用した対策
ムクドリの天敵であるフクロウやタカの模型を設置する方法は、多くの自治体でも活用されています。特にフクロウの模型を街路樹に設置することで、ムクドリがねぐらとして利用しなくなる例が報告されています。効果を持続させるには、設置場所や時間帯を定期的に変える工夫が必要です。また、天敵の鳴き声を発するスピーカーも併用すると効果が高まります。
防鳥ネットやバードスパイクの設置
ムクドリが止まりやすい場所には、防鳥ネットやバードスパイクを活用しましょう。防鳥ネットは30mm程度の網目の細かいものを選び、軒下や戸袋などの侵入口をしっかりと覆います。バードスパイクは、ベランダの手すりや室外機に設置することでムクドリが止まるのを防ぎます。これらは物理的にムクドリの侵入を防ぐ効果が高い方法です。
強剪定で住処を排除
ムクドリがねぐらとして利用する街路樹や庭木の枝を短く切る「強剪定」を行うことで、身を隠せる場所がなくなり、その木に寄り付かなくなります。特にねぐらとなっている木の枝を適切に整えることで、ムクドリが安心して群れる環境を取り除くことができます。
大音量や光での追い払い
ロケット花火や爆竹、大音量スピーカーを使用してムクドリを驚かせる方法も効果的です。電子制御の爆音機や光を反射するCD、LEDライトなどを使ってムクドリを不快にさせることができます。ただし、これらは一時的な効果に留まることが多いため、繰り返し実施する必要があります。
巣の撤去とダニ対策
ムクドリが巣を作った場合、繁殖期が終わった後に早めに巣を撤去しましょう。巣に寄生しているダニや細菌が室内に侵入するのを防ぐため、撤去後には薬剤を散布して消毒することをおすすめします。
プロの駆除業者への依頼
自分での対策が難しい場合は、プロの駆除業者に依頼することも検討してください。業者は巣の撤去やその後の清掃、消毒、侵入防止柵の設置などを行います。複数の業者から見積もりを取り、価格やサービス内容を比較して選ぶと良いでしょう。
まとめ
時代と環境の変化に伴い、昔は農作物を守る益鳥と言われていたムクドリが、今では害鳥として扱われるようになったのは少し寂しい気もします。しかし、実際に被害に遭われている農家にとってはそんな感傷に浸っている場合ではないでしょう。群れで農地にやってくるムクドリには、さまざまな対策を組み合わせて上手に対応していくことが大切です。
参考
鳥種別生態と防除の概要 ムクドリ(PDF):農研機構
野生鳥獣被害防止マニュアル 鳥類編(PDF):農林水産省 p.20「1章[5]ムクドリ」