酷暑で酒米の生育はどうなる?【きき酒師の漫才師が泉橋酒造にツッコミ!Vol.1】 – マイナビ農業

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酷暑で酒米の生育はどうなる?【きき酒師の漫才師が泉橋酒造にツッコミ!Vol.1】

酷暑で酒米の生育はどうなる?【きき酒師の漫才師が泉橋酒造にツッコミ!Vol.1】

最終更新日:2018年08月30日

ヤッホー!!世界で唯一のコンビ揃ってきき酒師の漫才師「にほんしゅ」です!大好きな日本酒にまつわる活動や漫才をするうちに、日本酒の原料「酒米」への興味が膨らみ、田んぼへの愛情まで湧いてきた僕たち。こうなったら「酒米作りをする蔵元」さんに話を聞きに行くしかない!今回は20年以上前から首都圏の住宅地近くで広大な自社田を持ち、様々な酒米を育てる「泉橋酒造」を直撃。優しくダンディな社長がなぜ自ら酒米を育てるのか、彼のいう「種の証明」とは何か、徹底的にインタビューしてきました!

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今年の酷暑。酒米への影響は?

蔵の目の前に広がる酒米の田んぼについて解説する橋場社長

8月の初めの炎天下、新宿から急行で50分ほど電車に揺られ、海老名駅に到着。駅前は大きな商業施設が立ち並び、大いに賑わっています。
「こんなところに酒米の田んぼなんかあるんかな?」と歩き始め数分。住宅地を抜けたところまぶしいほどの鮮やかな緑!きらきらした田んぼを背景に、泉橋酒造の社長、橋場友一(はしば・ゆういち)さんがダンディかつ爽やかな笑顔でお出迎え。いつもニコニコしながら深い話をしてくれる大好きな蔵元さんです。
インタビューのスタートはやはり今年の天気の話から。この異様な暑さで酒米は大丈夫なんですか!?美味しいお酒を仕込めるんですか!?

橋場さん!橋場さーん!今年の夏の暑さ!酒米は大丈夫なんですか!?

あさやん

橋場

大丈夫です!
いや、嘘はやめてくださいっ!!

あさやん

噓ちゃうやろ(笑)!心配な気持ちは分かるけど。橋場さんすみません。
でもこの暑さでも本当に大丈夫なんですか?これだけ7月から晴れが多いと水の確保も大変そうですけど。

北井

橋場

うちの蔵がある海老名は水が豊富なエリアなんです。丹沢山系の水や富士山の山中湖の水も海老名へ来る。こんな暑さが続いても神奈川のダムの貯水率はほぼ100%です。
騙されませんよ!

あさやん

ちょっと落ち着けって!
すごいですね。水の心配がないから海老名は田んぼが多いんですね。

北井

橋場

ただ、今年はとにかく暑いので田んぼに水のかけ流しをしてあげています。
源泉かけ流しみたいで贅沢ですね(笑)。

北井

橋場

豊富な水のおかげですね。
なんか、温泉の源泉かけ流しみたいですね(笑)。

あさやん

それさっき言うたから!
今年は暑さも記録的ですけど、梅雨明けも早かったですよね?

北井

橋場

早すぎです!(笑)
え?梅雨?あったかな?ってくらいでしたもんね。

あさやん

橋場

観測史上最も早い6月の梅雨明けでしたね。
早すぎる梅雨明けは稲にどんな影響が出るんですか?

北井

橋場

稲の丈が伸びませんね。でもこれは台風が来ても倒れにくかったり、味への影響も特にないのでそんなに悪いことではないんです。
そうなんですね!

北井

そこをなんとか悪いことも言ってください、社長!

あさやん

なんでやねん!悪いことはないほうがええやろ。

北井

橋場

いや、本当に悪いことがなくて(笑)。稲は日光が欲しくて太陽に近づこうと背が伸びるんですけど、今年は梅雨も短くて日光が十分で背が伸びる必要がないんですね。
なるほど!

北井

橋場

あと、稲穂が出るのが早いですね。早稲(わせ)系の神奈川の酒米「楽風舞(らくふうまい)」の出穂がいつもお盆ぐらいなのが、昨日(8月3日)すでに出穂していましたね。今年の状況をまとめると、元々水は豊富で、日光も十分で、稲は成長のために頑張る必要がない、という感じです。
稲にとっては好条件が整ってるんですね。

北井

ゆとり教育ならぬ、ゆとり米ですね(笑)。

あさやん

橋場

そうかもしれませんね(笑)。
では失礼します。

あさやん

いや、まだ取材終わってへんねん!

北井

そもそも酒米作りから取り組むきっかけは?

その名も勇ましい「雄町(おまち)」を栽培!この品種は非常に古い

そもそも自分たちで作ったお米でお酒を仕込む酒蔵さんってかなり珍しいと思うんですけど、どんな経緯があったんですか?

北井

橋場

蔵へ戻る前に大学を卒業してから証券会社で1995年まで3年間サラリーマンをしていたんです。
実家の蔵を裏切ったんですね・・・(泣)。

あさやん

違うわ!
蔵を継ぐ前の社会勉強みたいな感じですね。

北井

橋場

そうですね。大阪勤務中の1994年に、「夏子の酒」という酒蔵の娘が自分で酒米を育てるドラマが放送されていて、あれは印象深かったな。
僕は漫画で読みました!「夏子の酒」めちゃくちゃ面白いですよね。

北井

最高の爆笑ギャグ漫画ですよね!

あさやん

いや、ギャグマンガちゃうわ!“感動する”っちゅう意味の面白いやから。

北井

橋場

あと、1995年にお米の流通の法律が変わって(※1)、簡単に言うと自分の田んぼで作ったお米でお酒が造られるようになった。
橋場さんの頭の中でどんどん米作りへの追い風が吹いてますね(笑)。

北井

橋場

その年にはWindows95も発売されて、僕はパソコンはわりと得意だったからホームページを作ったら「酒蔵がホームページを作ったぞ!」と新聞の取材が来た時代でした。
今だと考えられないですね(笑)。

北井

橋場

そこで試しにホームページに田植え体験を企画として載せてみるとたくさんの応募が来て・・・
橋場さん!意外に考えてますね!(ニヤリ)

あさやん

意外ってなんやねん!
素晴らしい行動力ですね!

北井

※1 1995年に食糧管理法が廃止され、「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(食糧法)」に引き継がれた。食糧管理法は戦時中の1942年に制定され、食糧(主に米)の生産・流通・消費を政府が管理するという内容。

酒蔵として生き残るための“栽培醸造蔵”

銘柄にも使われているトンボがトレードマークの泉橋酒造

じゃあ米作りから酒造りをやろう、となったのは自然な流れだったんですね?

北井

橋場

そうですね。ただ、精神的にはちょっと追い込まれてましたね。
と、言いますと?

北井

橋場

蔵へ戻った当時は“地酒蔵として消費者に選ばれること”を何かやらなきゃ!という気持ちが強かったんです。その方法として行きついたのが「米からやろう!」ということでした。
生き残りのためでもあったんですね。橋場さん、意外と考えてますね(ニヤリ)。

あさやん

なんで偉そうやねん!

北井

橋場

実際、切実に生き残りを考えなきゃと思っていました。蔵へ戻る1995年頃は、昔ながらの酒屋さんの業態がどんどんと変化して、コンビニやお酒のディスカウントショップや専門店へと変わっていく時代になっていました。過去と同じことをやっているだけではまずいことになるのは見えていましたから。
お酒を売ってくれていた酒屋さんがどんどん無くなるのは怖いですよね。

北井

橋場

お米について取り組みはじめたら地元・海老名の農業も考えるようになりました。「やたら田んぼが多いよなぁ・・・」って(笑)。歴史を調べると、海老名は大昔からとても農業が盛んな地域だとわかって、ますますその気になっちゃって。
1995年に蔵へ戻ってすぐ米作りを始めたんですか?

北井

橋場

そうですね。1996年から米作りをはじめ、徐々に収量を増やし、2000年から自分たちの作ったお米で仕込んだお酒が売れるようになっていきました。『酒造りは米作りから』をモットーとして、自分の畑で作ったブドウでワインを造るように、“ドメーヌいづみ橋”として本格的スタートしたわけです。
ドメーヌいづみ橋?!
カッコつけすぎでしょう!

あさやん

そんなことないわ!
日本酒の世界にもこの考え方が広がっていってますよね。

北井

橋場

自分のところで酒米を育てる蔵元は増えてますね。うちは今では「栽培醸造蔵(※2)」と名乗っています。これはうちの登録商標なんです(笑)。

※2 栽培醸造蔵とは農業から醸造まで責任を持って行なう酒蔵のこと(参照:泉橋酒造HP「泉橋の酒造り」

「種の証明」が未来の米作りと酒造りにとって重要

水稲試験栽培中の品種一覧。気になる種を取り寄せて試験栽培することも

お米作りから取り組む酒蔵さんも徐々に増えつつある中で、これからどんなことが大切になっていきますか?

北井

橋場

米作りにおいてこれから大切なのは「種の証明」ですね。日本酒にもトレーサビリティの重要性が高まっていると思います。
おっしゃる通り!トレーサビリティは大切ですね。漫才にも取り入れてます。

あさやん

トレーサビリティの意味わかってへんやろ!
「種の証明」ですか。

北井

橋場

「山田錦」などの有名な酒米の品種だけでなく、ほかの酒米も細かなルーツをしっかり証明していくことで、消費者の皆さんに安心してもらえますよね。地酒としての価値を高めることにも繋がればもっと良い。日本酒や酒米を通して農業やお米への理解を深めてもらうためにも、これからさらに大切になると思います。
ふむふむ、僕も橋場さんと全く同じこと考えてました。

あさやん

噓つけよ!トレーサビリティの意味もわかってへんのに。

北井

橋場

例えば『神力(しんりき)』という古くからあるお米だけでも細かく分けると日本中に50種類以上もあるようです。
えぇ!?そんなにあるんですか?

北井

橋場

なので、しっかりと出所を確かめるために種を取り寄せ、自社田で植えて答え合わせのようなことをしています。正式に神川県の品種として産地品種銘柄(※3)にしたいんです。法律的にも瑕疵がないようにしたいと思っています。
なるほど。つまり・・・うーん ・・・

あさやん

いや、あさやんにはまとめられへんやろ!話もちゃんと聞いてへんのに。

北井

犬でいうと、ちゃんと血統書つきかどうかみたいなことですね?

あさやん

橋場

そういう感じです。
ちゃんとまとめられるんかい!!

北井

※3 農産物検査法に基づいて農林水産省が指定するもの。これは都道府県ごとに定められており、検査機関が行う米穀検査に合格すると、「●●県産コシヒカリ」など、その産地・品種と産年の証明を取得できる。

農業

蔵の前に広がる青々とした酒米の田んぼを見ながら「今年はトンボがちょっと少ないような気がするんだよねー」と柔和な笑顔で話してくれる橋場さんの瞳には、日本酒だけでなくお米や農業自体の未来が見えているように感じました。
 
◆次回は「稲刈編」。田んぼの土へのこだわりなどをお伝えします。(11月初旬公開予定)
 
泉橋酒造株式会社
泉橋酒造

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