天然資源から生み出される石灰窒素
石灰窒素は、石灰石を原材料とするカルシウムカーバイドに窒素を反応させて製造する緩効性の窒素肥料であり、同時に農薬としての登録も取得しています。
デンカ社が福岡県・大牟田工場で生産を開始したのは創業翌年の1916年。その6年後には原材料である石灰石が採れる黒姫山と、主に雪どけ水を利用する自家用発電所(生産には膨大な電力が必要)を擁する新潟県・青海工場が建設され、そこでも生産が始まりました。自社資源を生かし、1世紀以上にわたって農家のためにこの貴重な資材を作り続けています。
農薬から肥料へ変化
農薬・肥料・土づくりという3つの役割を一つの資材でまかなえる。そこに石灰窒素の最大の特徴があります。主成分はカルシウムシアナミドで、土壌中の水分と反応してシアナミドに変化。殺虫、除草、殺菌といった農薬効果を発揮します。農薬の役割を果たした後、肥料成分に変化するので、農薬成分は残留しません。このシアナミド、古くから牧草や緑肥として用いられていたマメ科の「ヘアリーベッチ」で作られていることが2003年に発見され、話題となりました。デンカ社が作り始めるよりずっと前から自然界には存在していたのです。
肥料としては尿素からアンモニア態窒素へ変化して、粘土粒子に吸着され土壌中に長く存在できることから、流亡しにくく環境にやさしい肥料といえます(上図参照)。これらの効果により平成25年10月に石灰窒素は、持続農業法(※1)に定める「肥効調節型肥料施用技術」で使用できる肥料に認定されました。
(※1)正式名称:持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律
石灰窒素マスターのコマツナ農家
「長い期間効き続ける石灰窒素を基肥として使っていれば、栽培に時間がかかる冬野菜でも追肥の必要はほとんどありません」
そう話すのは、埼玉県三郷市でコマツナを栽培する牧野祥起(まきの・よしかつ)さん。デンカの石灰窒素の愛用農家の一人です。牧野さんの畑ではフレッシュグリーンのコマツナが1年中溢れんばかりに育ち、長年にわたって安定した売上を得ています。
「基肥」とは種まきや植え付けの前に混ぜ込む肥料で、いわば栽培の基礎となるもの。これに土づくりを兼ねて石灰窒素を使えば肥料効果が長く続き、葉物野菜の色つやが良くなることが経験的に知られています。石灰窒素のような、短期的に見れば効果が分かりにくい土づくり資材は経費削減の対象になりがちです。ましてや一般的な化成肥料に比べて高めとなればなおさらです。
しかし、安定した収穫量を長く維持したいのであれば土づくりは無視できない課題。「確かに高いのですが、追肥する必要がなくなる場合が多いので経費全体の中で考えれば、むしろコストを抑える結果になると思います」と牧野さん。石灰窒素で土壌の体力づくりを図るメリットを話してくれました。
マルチ活用できる農家の強い味方
収穫期を長くする
牧野さんはコマツナ以外にも、夏から秋にかけては枝豆、冬から春にかけてはキャベツ、ブロッコリー、ホウレンソウを露地で栽培しています。冬野菜は育つのに時間がかかるため、途中で肥料が切れないよう、植え付けの前に石灰窒素を振っておいたところ、栽培後期まで効果が持続し、収穫し続けることができたそうです。「以前、ブロッコリーの畑で石灰窒素をまいてないエリアがあったんです。そこでは肥料が切れて生長が止まり、作物は大きくならなかった。その違いは今でもはっきり覚えています」(牧野さん)
腐熟促進効果で堆肥づくりも
石灰窒素には有機物の腐熟促進効果があるため、昔から堆肥づくりに使われてきました。石灰窒素に含まれるアルカリ分が腐熟に伴って生成する有機酸を中和することで、微生物が働きやすくなり、腐熟が進む環境にしてくれます。牧野さんも自家製の堆肥づくりに石灰窒素を利用しています。わらを積み重ねて石灰窒素を振って水をかけ早く腐らせ、踏み固めたものを積み替えながら堆肥を作っています。
ハウスでも活用可能
今までハウス内で石灰窒素を使用することはなかった牧野さん。デンカの営業マンに勧められて試しに使ってみたら、露地同様の効果を実感したそうです。「雑草をむしっても、次から次へと生えてきて大変な手間でしたが、石灰窒素には除草効果もあるため作業が楽になりました」と、思わぬ効果にも驚いたという牧野さん。
石灰窒素はハウスでも使えるのです。原料に由来する独特の臭いを嗅ぐと、「土壌消毒剤と同じようにガス抜きが必要なのでは」と不安になる方もいますが、そもそもガスは発生していないので心配ご無用です。
ずっと使える農地のためにも
「ライバルを増やしたくないので本当は秘密にしておきたいんですが」と笑いながらも、快く取材に応じてくれた牧野さん。長年愛用する石灰窒素マスターとして、ノウハウは完璧かと思ったら「完璧なんてあり得ません。毎年、課題が必ず生まれるから農業は面白い。おいしい野菜づくりのために石灰窒素もさらに効果的な使い方があるのではないかと研究中です」と話してくれました。
最後に今後のテーマを伺うと「子供が継ぎたいと思える農業」と、素敵な笑顔で明答です。
活力ある農地を、次の代まで引き継いでいくためにもデンカの石灰窒素は欠かせません。
デンカ株式会社 エラストマー・インフラソリューション部門アグリプロダクツ部
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