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農家が教えるスモモの栽培方法 あまぁ~い完熟スモモを食べるため!

鶴田 祐一郎

ライター:

連載企画:農家が教える栽培方法

農家が教えるスモモの栽培方法 あまぁ~い完熟スモモを食べるため!

完熟スモモを食べたことがありますか? 栽培者の特権である完熟スモモは、知る人ぞ知るあま~い果実です。市販のスモモは、日持ちさせる必要があるため未熟果の収穫になってしまい、酸っぱいイメージがあるかもしれません。しかし一度完熟のものを食べれば、もれなくファンになってしまう魅力がスモモにはあります。完熟スモモを味わうため、栽培を始める際のポイントをお伝えします。

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「果樹なら何を植えたら良いかな?」と聞かれた時、筆者はスモモをお勧めすることが多いです。モモよりも手間がかからないという点も魅力ですが、栽培していなければ味わうことのできない濃厚な甘さの完熟スモモに感動する人が多いためです。
下図がスモモの栽培暦になります。

スモモ

基本的に11~12月に剪定(せんてい)と元肥散布をすれば、初夏にスモモがなると思っていて大丈夫です。モモのように袋かけをしたり、細やかな薬剤散布を繰り返したりせずとも収穫に至ることができます。
ただし、育てやすい分、植物体自身がとても丈夫で、モモに比べかなりの長寿命(50年はゆうに結実し続けることが可能)となります。比較的広い面積が必要になるので植え付ける場所に注意しましょう。鉢植えで小さく栽培して数年間だけ楽しむのも一つの手ですね。

植え付け

品種の選択

スモモは一本ではあまり結実しません。同じバラ科サクラ属(ウメ・アンズ・サクラ・モモなど)の花粉でも受粉することがありえますので、日本において一つも実を付けないということは起こりにくいのですが、やはりスモモ同士の交配にはかないません。ここは黙ってスモモを2品種は植え付けましょう。場所がないようであれば、接ぎ木という手法を使って違う品種の木をつなげば一本の木でもよく結実します。
主要な品種として以下を紹介します。

大石早生(おおいしわせ):最も栽培の多い品種(2015年、農林水産省調べ)。栽培容易で多収。ソルダムと受粉相性が良い。

ソルダム:大石早生よりも大玉で、完熟果は美味。大石早生と受粉相性が良い。

サンタローザ:花粉を多く持っており、授粉樹に最適。果実色も綺麗で美味。

貴陽:近年ブームの、モモのような超大玉で高糖度の高級取引される品種。苗木の値段は変わらないためホームセンターに大量に並び、近年植え付ける人が多いが、結実が難しく、人工受粉が必須。同じく大玉の“太陽”と並んで“ならずの太陽・貴陽”と揶揄(やゆ)されるので、家庭果樹での安易な導入は注意!(相談がとても多いのです。ハリウッドやバイオチェリーという品種が授粉用花粉の採取に良いという報告を聞いています)

他にもたくさん品種がありますので、受粉の相性だけは必ず確認して購入してください。
大石早生とソルダムの相性の良さから、古い品種ではありますが、この2セットがいまだに一番人気です。

時期と手順

スモモの植え付け時期は春先だと説明されていることも多いのですが、栽培暦にもあるように、モモやスモモの根は2月から動き始めます。実は3月や4月に植えると、あまり1年目の生育にはよくありません。
寒冷地で厳寒期に枯死してしまうような環境でもなければ、秋植えの11月頃がベストです。

スモモ

有機肥料1キロ(8-8-8換算)、石灰資材500グラム、牛ふんや腐葉土などの堆肥資材15キロ程度を植穴に施し植え付けます。植え付けた後は、高さ50センチくらいまで切り詰めましょう。こんなに切って良いの!?と最初は不安に思うでしょうが、切り詰めた方が枝の発生も良く、後々の枝づくりも楽になります。

スモモ

植え付け時に50センチ高で切った場合の1年目秋の様子(品種:ハリウッド)

肥料

元肥は11月下旬~12月頃の、落葉した時期に散布します。肥効の狙いは2月中旬の根の活動から始まって3~4月の新梢(しんしょう)伸長期にかけてのものです。5~6月にあまり肥料が効きすぎると、果実がなかなか熟さなかったり、ひどい場合には生理落果を引き起こしたりしてしまいます。
少し早いように感じますが、時期からあまり遅れすぎないように気をつけましょう。
有機肥料8-8-8(数字は窒素・リン酸・カリウムの含有率)で計算して、成木一樹あたり約5キロ程度。パラパラとまきながら木の外周を一周すると大体そのくらいの分量になります。
果実がたくさんなっている6月や7月に肥料を欲しているように見えるかもしれません。よほど弱っているようであれば5月に追肥をしますが、基本的に必要ないでしょう。栽培暦では外しています。
スモモ収穫後の8月頃、“お礼肥(おれいごえ、おれいひ)”とも呼ばれるお疲れ様の意を込めた追肥を施します。有機肥料8-8-8で、おおよそ1キロ程度の散布です。
なんらかの原因で実がならなかったスモモには、お礼する必要はありません。スモモはとても勢いのある果樹ですので、勢いが強すぎて結実していないというパターンが多いのです。お灸(きゅう)を据える意味でも“おやつ抜き”の方が来年に期待できます。

剪定

スモモの管理の中で主な作業は、基本的にはこの“剪定”と次項の“摘果”になります。
バラ科サクラ属の果樹栽培は、比較的剪定作業に重きを置くことが多いのですが、家庭果樹の場合は主に以下の3点に注意をして、毎年トライ&エラーを繰り返しながら楽しんでいってください。

徒長枝(立ち枝)外し

勢い良く真上に伸びている太い枝を徒長枝(立ち枝)と言います。花があまりつきませんし、日当たりも悪くなります。残しておくと木が高くなるなど良いことはあまりないので、家庭果樹においては基本的に全て切除します。

スモモ

先端の切り詰め

基本的にウメ、スモモ、モモ、アンズなどのサクラ属果樹の剪定では、ほぼ全ての枝の先端を切り詰めます。元気の良い枝は先端1/6ほどを切り、弱々しい枝は1/4くらいまで切り詰めます。

スモモ

主枝の方向を定める(木の形をコントロールする)

主枝とは、木の骨格となるメインの幹です。

スモモ

主枝(赤く印をつけた枝)が真っすぐ伸びたスモモ(大石早生10年生)

上の画像を見ると、生え際から右斜め上に真っすぐ主枝が伸び、その主枝から果実のつく細い枝が伸びています。奥にもう一本の主枝が見えますが、この大石早生には3本の主枝があります。近年は扱いやすい2本主枝が主流ですが、場所に余裕がある方は4本主枝くらいまで増やすことができます。
どんな太い幹も、最初は先端の細い枝でした。つまり、先端の切り方一つで木の形が変化していきます。
植物には“頂芽優性”という、先端の芽に養分を優先して送る性質があるため、どの位置で切るかによって、先端の芽の方向が決定します。その方向は、すなわち、その木全体の行く末を決めるのです。

スモモ

基本的に、木の内側を向いた芽を先端に残してはいけません。必ず外側の、自分の伸ばしたい方向の芽を先端に残して切り詰めましょう。

夏期剪定

栽培暦を見ると、スモモは8月頃に“花芽分化”と言って、来年の花芽をつくります。
しかしその時期にはすでにスモモの木は徒長枝だらけになっているはずなのです。徒長枝がたくさん茂っていると、下位にある、作業効率が良く充実した花芽を持つ枝に光が当たらなくなってしまいますから、花芽分化の前までにこの徒長枝だけを切除しておくと来年の花芽も増え、冬の剪定も楽になります。

摘果

スモモ栽培においてはメインの作業になるのですが、剪定ほど難しく考える必要はありません。満開後25日程経過すると、受粉に成功して大豆大に膨らんだ実と、失敗して小さいまま軸が黄色くなっている実を簡単に分別できるようになります。
確認できるようになったらできるだけ早い段階で果実の数を減らしてしまいます。そうすることでより大きく、より甘い果実を収穫することができるようになります。
実と実の間がおよそ15センチ、握りこぶしがスッポリ間に収まるような間隔を目安に果実を外していきましょう。ハサミを使うと便利ですが、素手でも可能です。

スモモ

病害虫

スモモはモモほど病害虫に悩まされることはありませんので、無農薬でも不可能ではないのですが、全滅や枯死を避けるためにも最低限の防除はしておきたいところです。

アブラムシ:主に4~5月に発生が多いです。せっかく出てきた新梢がアブラムシに覆われてしまい枯れることがあります。少量でも発見したら早めの薬剤散布を心掛けましょう。

毛虫類:主に6~9月の気温が高い時期に大発生することが多いです。大発生すると、葉が完全になくなるまで食害を続けますので、少なくとも8月の花芽分化時期までは注意して駆除を心がけましょう。果実を収穫し終えても、果樹は来年の花芽作りに頑張っています。

シンクイムシ他:スモモは、せっかくたくさん実った果実を摘果するのがもったいなくて、多めに残しがちです。実と実がくっついた状態のまま熟すと、その隙間にガの幼虫が入り込み、果実を食害していきますので、しっかりと摘果しましょう。
灰星病:果実にカビが生えて腐る病気で、梅雨時期の発生が多いです。頻発するようであれば、最寄りの農協や専門家のいるような園芸店などに行って「灰星病が出るのでEBI系の殺菌剤をください」と伝えましょう。特効薬です。

ふくろみ病:幼果のときに果実が奇形になる病気。アケビのような形態にふくらむのですが、越冬した菌によるものなので、落葉時期の12~2月に「石灰硫黄合剤」の散布を心掛けると良いでしょう。

樹上完熟の魅力を知れば、きっとあなたもスモモに対する思いは変わるはずです! ちょっとでも気になった方は、気軽に育ててみてはいかがでしょうか。

 
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