ホウレンソウの種は「浸水してからまく」?
来たる冬に向けて、ホウレンソウの種をまこうと考えていたのです。寒さに強く、それどころか収穫前に霜に当てると甘みが増すとも言われるホウレンソウ。プランター栽培もできて、食卓に上がる機会も多い、まさに秋冬に育てるのにうってつけの野菜。
「ホウレンソウの種は一晩水に浸けてからまく」というのは、何かの機会に読んだ記憶がありました。ホウレンソウの種には発芽抑制物質が含まれているので、その物質を水で溶かすことで発芽が良くなるとされる方法です。
ところが、いざ栽培方法を調べ直すと、「浸水してからまく」とする記述と「浸水する必要はない」とする記述の両方を発見。また「夏まきの場合は浸水した方が良い」とする意見や「在来種は浸水してからまくが、交配種にはその必要がない」と指南する人も。
なんとなく、わかった。でも結局のところ、どれが一番いい方法なのか判断に迷う……。
という訳で、二種類の種と二つのプランターを用意して、条件を変えて種をまいてみました。
異なる条件下で発芽実験!
交配種と在来種
用意した種は、交配種の「日本ほうれん草 やまと」と在来種の「あかね法連草(※)」の二種類。「日本ほうれん草」はもともと江戸時代から栽培されてきた日本在来種ですが、この種は病気に強くなるよう改良されたもの。「あかね法連草」は山形県の在来種で、これは岩手県で採種されたものだそう。
※「あかね」は根元が赤いことに由来しており、「赤根ほうれんそう」などと表記する場合もあります。
袋から種を出してみると、見た目からして大きな違いがありました。
「日本ほうれん草 やまと」の方は小ぶりで丸みを帯びており、ピンクに色付けされていることもあって可愛らしいくらいのたたずまい。「あかね法蓮草」は東洋種特有のトゲのある針種で、指でつかむと少し痛い。戦闘力が高そうな風貌です。
事前に種を浸水させるかどうかについては、「日本ほうれん草 やまと」の方は特に言及されていませんでしたが、「あかね法連草」の方には「一夜浸水後、清水で洗い流してからまく」と注意書きがありました。
それぞれ24時間ほど水に浸けました。どちらも水に入れた瞬間は表面に浮いていましたが、一昼夜置くとほとんど全ての種が底に沈んでいます。きちんと中身が入っていて発芽する種は水に沈むといいますので、その点はどちらも大丈夫そうです。
浸水「あり」と「なし」
プランターは「捨てられるプランター」の記事で取り寄せた、再生紙でできた「エコ鉢」を使いました。
2つのプランターに鉢底石を入れて土を入れ、それぞれ4本のまき筋をつけます。一方のプランターに「日本ほうれん草 やまと」、もう片方のプランターに「あかね法連草」をまくことにして、各プランターの半分に浸水させた種、もう半分にそのままの種をまきました。
5日後、交配種の「日本ほうれん草 やまと」の方から先に芽が出ました。鉢の向きが90度回転していて分かりづらいのですが、向かって右半分の浸水した種の方から多くの芽が出てきています。
さらに2日後には、浸水せずにそのまままいた「日本ほうれん草 やまと」の種からも芽が出てきました。また、「あかね法蓮草」の方もようやく発芽。やはり浸水した種の方から先に芽が出始め、その後、浸水しなかった方からも徐々に芽が顔を出しました。
その後の成長は?
播種から16日後。どちらの種もほぼ芽が出そろいました。
交配種の「日本ほうれん草 やまと」の方は、比較的に発芽のムラは少ないように感じますが、浸水した方が早くに発芽した分だけ早く成長している様子。
在来種の「あかね法連草」の方は、むしろ浸水した方に発芽ムラがあるようにも感じられます。まくときに種が重なってしまったせいか、そもそも種の袋にも発芽率は「75%以上」とあって発芽しない種が一定の割合で含まれるせいではないかと考えました。
どちらの種も浸水した方が早く発芽しましたが、最終的には浸水したか否かに関わらず芽が出ました。ホウレンソウの発芽適温は15〜20度とされており、適温下ではあまり神経質にならなくても発芽するようです。
ただし、気温が25度以上になると発芽不良を起こすとも言われており、夏まきをする場合には芽出しをしてからまいた方がいいという意見もありました。今回まいた二種類の種も、袋の注意書きに秋まき推奨の旨が書かれています。個人的には、初心者が育てるならやはり涼しくなってきた秋にまくのが無難だという考えに落ち着きました。
残るは味の違い。種が異なるといっても発芽した見た目はほとんど同じなのですが、成長後の姿形や味に違いが出てくるのか、いまから楽しみです。
◆発芽して、後に残るは、食い意地か。次回はベランダ菜園、番外編。