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オランダ農業は日本と何が違うの? 〜人材編~

連載企画:オランダ農業の現場から

オランダ農業は日本と何が違うの? 〜人材編~

大規模かつICT化された施設栽培で、農業先進国と言われることが多いオランダ農業。私は「トビタテ!留学JAPAN」(官民協働海外留学支援制度)7期生として、オランダのナスの農家で6カ月、パプリカの農家で3カ月研修をしていました。前回の記事では、オランダの流通について説明しました。今回は、オランダの施設栽培の従業員やマネジメント方法などを私の研修先を例に出しながら紹介していきます。

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オランダ農業の労働力

オランダの施設栽培と日本の施設栽培を比較して、圧倒的に違うのはその規模です。私は2つの農場で研修をしていたのですが、一方は8.4ヘクタールで、もう一方の農家も5カ所のハウスで農場経営をし、合計20ヘクタールの面積でした。これだけの大きさを誇るということは当然それだけの労働力も必要となってきます。
その労働力について、最初の研修先を例に出しながら説明していきます。その農場の面積は8.4ヘクタールだったのですが、働いている人はだいたい40人程度で、繁忙期には70人から80人ほどの人数になります。このうち、オランダ人は15人程度で、人事、会計やハウスのマネージャーや物流のマネージャーなど何かしらの役職をもっています。

現場で収穫をするポーランド人などの労働者たち

労働力は、ポーランド人など主に東ヨーロッパからくる出稼ぎ労働者となります。オランダの他にもドイツ、イギリスなどの西ヨーロッパの労働力は、このように東ヨーロッパから来る出稼ぎ労働者で賄われているようです。東ヨーロッパの最低賃金は日本円に換算すると時給約400円から500円程度です。これに比べ、オランダの最低賃金は日本円で時給1000円以上になり、東ヨーロッパからくる出稼ぎの労働者たちにとって、作物の収穫などの単純な作業でもかなりのお金になります。

働きに来る事情は結婚式の資金を貯めるためや車を買うためなどさまざまなものがあり、母国では警察官や消防士や雑誌の編集者をやっていたような人も働いていました。夏休みの季節になると、ポーランドなどの学生は大学に行く費用を稼ぐために農場に働きにきます。

収穫量や作業量によって、必要な労働力の数も変化していくので、農場の人事担当者によって、人材派遣会社とのやりとりの中で労働力の調整を行っています。

この仕組みで驚いたことを紹介します。
例えば、木曜日に「来週の月曜日から10人の人手が欲しい」と人材派遣会社に依頼すると、次の月曜日からその人数会社に連れてきてくれるというものです。
労働力が欲しいときに、すぐに確保できるという仕組みにはびっくりしました。
オートメーション化され効率化されていると言われているオランダの施設栽培ですが、現時点でどうしても収穫作業と梱包作業には大量の人手が必要になるようです。

ITによるマネジメント

労働者は自分の番号を割り振られ、携帯している端末で各作業の開始と終了時に作業場の端末や収穫したボックスなどをスキャンする。これにより、誰がどこでどのようなことをしていたかが把握できる。写真は終業時に端末を戻しているところ

労働者たちの労働時間や成績などの仕事の成果は可視化され、現場ではそのデータを基にマネジメントしています。何キロ収穫したか、面積あたりどれくらい収穫できたか、労働者の平均に比べてどれくらいか、さらには、収穫物の重さを設定することにより、適正な大きさのものを収穫できているかなど、全てコンピューターによって情報を管理し、それにより労働者たちの成果を可視化しています。

話を聞くとこのコンピューターによるマネジメントシステムは、ほぼ全てのオランダの施設栽培の農家が導入しているそうです。そのほとんどが環境制御総合機器メーカー大手の「Priva」社や「Hoogendoorn」社などです。

誰が時間あたりどのくらい収穫したかなどの労働の成果が全てコンピューター上で把握できるようになっている

研修中によく見た光景を紹介します。
休み時間になるたびに、ポーランド人の労働者たちは自ら事務室に入り、コンピューターで自分がその時にどれだけ仕事をしていたかを確認しています。自分の作業結果がすぐにコンピューター上に表示されるため、労働者同士、どちらがいい成果をあげるか勝負しています。
成績によって、労働者たちは時給に加えてボーナスをもらえるので、お互いに数字を意識し合いながら競い合っています。
成績を可視化し、労働者の間で競わせることによって、収穫などの単純な作業でもモチベーションを保たせているようです。

多様な働き方

分業化された結果、農場の中に、人事と会計と経営のオフィスがあり、農場だけでも多様な職種が存在する

オランダの農業現場は多様な働き方があります。少し紹介しましたが、農場内では、会計や人事、ハウス担当、ロジスティック担当者など分業化が進んでいます。また、農場以外でも協力を前提としたシステムが構築されていて、植物のコンサルタントのような栽培担当から、個人でスーパーと通じているバイヤーまで、各専門分野の人たちが広く農業に関わっています。

私の研修先には、農家を引退した後、以前使用していたハウスをレンタルし、今は現場のアドバイザーとして働いているKeesさんという人がいました。農家として現場につきっきりで働くことはできないけれど、アドバイザーとして、パートタイムで働いているそうです。一人で何でもやるというよりも、協力が前提という考えのもと、分業化をきっちりと行い、誰がどの役割を担うかが明確に決まっているオランダの農業だからこそ、こういった働き方ができるのかなと思いました。
次回は、オランダ農業現場の経営について書いて紹介していこうと思います。
 
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