命をおいしくいただく冬 アイガモ農法のその先に密着
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生産者の試み

命をおいしくいただく冬 アイガモ農法のその先に密着

命をおいしくいただく冬 アイガモ農法のその先に密着
最終更新日:2019年04月03日

アイガモ農法は、アイガモを害虫駆除や除草に用いる稲作の農法ですが、夏の間大活躍したアイガモは稲刈りの後どうなるのでしょうか。 実は、田んぼから引き上げたアイガモをどうするかは、農家にとっての課題の一つ。そこで、鹿児島で27年間アイガモ農法で米作りを続ける橋口孝久さんの取り組みを、息子である“そーやん”こと橋口創也さんにレポートしてもらいます。そーやんさんはマイナビ農業で人気のシリーズ「畑は小さな大自然」でもおなじみ。アイガモ農法のその先にある「命をおいしくいただく冬」に密着します。

アイガモ農法で大活躍のアイガモ、冬はどうなる?

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。みなさんはアイガモ農法という農法を聞いたことがありますでしょうか。田んぼにアイガモを放すことで、害虫や雑草を食べてもらい農薬や除草剤がなくても稲を育てられるという農法です。
実は、僕の父が営む橋口農園では27年間この農法でお米作りをしており、僕は幼いころからその様子を身近に見て育ちました。
今回は父の取り組みを通じて、普段お見せすることのない田んぼから引き上げられたアイガモたちのその後をご紹介します。

アイガモ農法歴27年! 父の紹介

僕の父、橋口孝久です。左にあるのはアイガモ供養の石碑

橋口孝久(はしぐち・たかひさ)
鹿児島市にて水稲5ヘクタール、野菜1.3ヘクタールの栽培を行っている。出身は水俣病の影響があった地域。自身の身体からも通常の2倍の有機水銀が検出された体験などから、安全な食べ物を当たり前に食べられる社会を目指して、有機農業を始める。1991年よりアイガモ農法を取り入れ、かごしま合鴨米生産クラブの代表も務める。

アイガモ農法とは?いつ始まったの?

お米作り体験に来る子供達が、 アイガモの雛を田んぼに放しているところ

まずアイガモとは家禽であるアヒルと野生のマガモを掛け合わせた品種のことを指します。肉が多くとれるアヒルと肉の味がおいしいカモを掛け合わせることで、肉の量も多く味も良いことが特徴です。アイガモ農法とは田んぼにこのアイガモを放し、アイガモに害虫や雑草を食べてもらうことで、農薬や除草剤を使わずにお米作りをする農法です。

もともとアヒルやカモを飼い、水田に放す文化はベトナムや中国などの方にあったようです。日本には平安時代ごろに中国大陸からアヒルやアイガモが入って来て、日本でも家畜として定着し、その後豊臣秀吉が推奨したとして知られています。

現在主流になっているアイガモ農法の基礎を確立したのは、福岡で農業を営んでいる古野隆雄(ふるの・たかお)さんであると言われており、父も古野さんから直接この農法を学んでいます。田んぼを網で囲み、外敵から守るとともにアイガモをその中で肥育する「合鴨水稲同時作」として、国外にもこの農法が広まっています。

冬のアイガモはどうなる?

アイガモの雛は田んぼの稲とともに育っていく

アイガモ農法で使われるアイガモですが、実は毎年同じものが使われるわけではありません。最初から大きいアイガモを入れると、稲を踏み潰したりしてしまうためです。
毎年春になると卵を孵化させるか、雛を買って来てこれを田んぼに放します。そして稲とともに雛も田んぼで育ち、お米が実る頃に成長したアイガモがお米の実を食べてしまわないよう、田んぼから引き上げます。
 
引き上げられた後のアイガモは法律的に自然に放すことが禁止されているため、そのほとんどは農家自身が解体を行うか、食肉処理場で解体してもらうことになります。食肉としても一年を越してしまうと肉が固くなってしまうため、産まれた年の秋から冬の脂ののったタイミングが一番おいしいとされています。ただし引き上げてそのままだと肉の量が少ないため、食肉として販売するために、穀物飼料などを使ってしばらく肥育します。

アイガモの処理の課題

父がアイガモを解体している様子

アイガモ農法を行う農家にとって、田んぼから引き上げたアイガモをどうするかが課題の一つになっています。なぜなら、アイガモ農法で米作りをしているからと言って、自分で解体できる農家ばかりではないからです。
また、数が多すぎて、とても自家消費できる量ではないことも問題です。アイガモ農法では1アールあたり1~2羽のアイガモが必要です。1 ヘクタールであれば最低100羽。これを食肉処理場に引き取ってもらい、お金を払って自家消費用に解体してもらうか、買い取ってもらうことになります。しかし、採算が合わずに合鴨の食肉処理をやめてしまう場所が増えているのです。その理由として、日本で食べられているアイガモ肉のほとんどは安価な輸入品であるため、どうしてもそれより高くついてしまうことで売り先の確保が難しいことが挙げられます。

鹿児島でも唯一存在していた合鴨の食肉処理場がやめてしまったことをきっかけに、それでは自分でやるしかないということで、父が2年前にアイガモの食肉処理場を作りました。父が育てたアイガモの他にも、他のアイガモ農家の食肉処理も依頼され、11月〜2月の間は一週間に1〜2回ほどの頻度で毎回60〜100羽ほどの解体を行います。解体した生肉は真空パック・瞬間冷凍した状態で農家さんに渡しています。

アイガモ肉は鮮度が落ちないように、解体後すぐに真空包装と瞬間冷凍を行う

アイガモのオススメの食べ方

我が家のごちそう、アイガモの丸焼き

肝心のアイガモ肉の味ですが、ひいき目なしにとてもおいしいです。鶏肉と違い赤身なので肉自体の味が濃く、水鳥ならではの豊富な脂身に旨味が詰まっています。たまにそば屋などで鴨肉を食べる機会があると思うのですが、それとは全く別物と思ってください。今までこんなに美味しいアイガモ肉は食べたことがないとみなさんおっしゃる方も多いです。

鶏肉と違って固くなりやすいので、調理法は少しコツがいります。うちではよく一口サイズにきり、塩コショウ・にんにくを混ぜ込み下味をつけてから、炭火で焼いて食べます。ただフライパンなどで小さく切ってから焼くとパサパサして固くなりやすいので、その場合は塊のままこんがりとローストしてからスライスして食べるのがオススメです。

またより食べやすいようにということで、燻製したものの販売も行っています。普通は調味液につけてからチップで燻(いぶ)すものが多いですが、シンプルに塩とコショウだけで味付けし、桜の丸太を使って5時間かけてじっくり燻すというこだわりのやり方で作っています。これもとてもおいしくて酒のつまみに最高です。

アイガモ農法で使われたアイガモ肉は一般にあまり流通していないので、手に入れるのはなかなか難しいかも知れません。入手したい場合はアイガモ農法をしている農家に直接尋ねてみるのが早いと思います。また橋口農園のオンラインショップでも販売しています。
今後、橋口農園ではよりアイガモの命を無駄にせず、また、より多くの方にアイガモの肉のおいしさを伝えるため、生産の拡充と販路の拡大をしていきたいと考えています。アイガモ肉の加工は、橋口農園の冬の仕事の柱となりそうです。

橋口農園

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