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実証実験をとおして見えてきた今後の課題とは?【平本さんのスマート農業日記#6】

連載企画:平本さんのスマート農業日記

実証実験をとおして見えてきた今後の課題とは?【平本さんのスマート農業日記#6】

神奈川県の農業活性化に励む「平本ファーム」代表の平本貴広(ひらもと・たかひろ)さんが、自らの取り組みをさらに前進させる一助としてスマート農業に挑戦する様子をお届けする連載。第5回は、栽培ナビゲーションサービス「e-kakashi(いいかかし)」の開発者の一人であるPSソリューションズの戸上崇(とがみ・たかし)さんにe-kakashiを導入した事例を伺いました。最終回は平本さんと戸上さんに、スマート農業を導入してみて感じた手応えや今後の課題について話していただきます。

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e-kakashiを導入して見えてきたこと

農業

──昨年の夏、平本ファームの敷地内にハウス農園BASE(ベイス)を建て、e-kakashiの実証実験を開始。キュウリの栽培を終えましたが、実際にe-kakashiを導入してみてどうでしたか?

平本:2カ月キュウリの栽培をしただけなので、まだわからないことだらけですが、e-kakashiの可能性は実感しました。

最近は気候変動がすごいから、作付け計画も難しくなってきています。
例えば、7、8年前は夕立が降ったらキャベツの定植をしていましたが、このところ夏に夕立すらなくなってきている。冬は冬で雪の量が半端じゃないし。

祖父や父の代は、だいたい例年“この時期に種をまけば、この時期に収穫できる”っていう一定の作付けをやっていた。だけど今はそのとおりにやってもうまくいかないですね。

経験や感覚に頼るクセがなかなか抜けないのですが、e-kakashiのデータをうまく利用できればよりリスクを回避できると思いました。
でも実際はまだ勉強中で、グラフの読み方がイマイチ理解できていないです(笑)。

戸上:そこはやっぱりまだ、生産者のみなさんと我々ベンダーにギャップがあるんですよね。
今回の実験での一番の収穫は、平本さんにe-kakashiを使っていただいて、“どこがわからないのか”を知れたことです。

私の頭の中には、植物に光が当たり成長して、そこにさまざまな環境データが関わっていき……というイメージが浮かんでいるんですよ(笑)。でもそこが伝わっていないんだなと。
この連載の第3回でもお話ししましたが、どういうデータを見れば何がわかるのかという、植物目線でお話しする機会を設けていかないと、科学的農業は広がっていかないのかなと思います。

誰でも簡単に使うことができるサービスに

農業

──いろいろなデータを収集することができるe-kakashi。農家さんが使いこなすには?

戸上:弊社が持っているアルゴリズム(計算の方法・手順)で、施設園芸と露地栽培でどのデータを中心に見るべきか、ある程度大別できます。
あとはそれをマニュアル化して「ここを見てください」とお伝えできれば、そんなに難しいことはなく使用していただけるはずです。
今後の課題にしていきたいですね。

平本:あとで膨大なデータを渡されてもどうしていいかわからないけど、e-kakashiはデータ処理をクラウド上でしてくれるので、その場でわかることがたくさんあるんですよね。
毎日の栽培にすぐに生かせるところもいいですね。

次回はカラーピーマンに挑戦

──次はBASEでカラーピーマンを栽培するそうですね?

平本:チョコレート、ライムグリーン、ホワイトなど変わった色のピーマンもやろうと思います。今まで露地ではカラーピーマンを作ってきましたが、ハウス栽培は未知との遭遇です。夏野菜なので、どう環境を作り上げていくかが重要。
e-kakashiのデータを見ながら換気や暖房で温度調整をしたり、水やりのタイミングをはかったりしていきます。

ハウスでうまく作っていけたら、食感も軟らかくて彩りも鮮やかなピーマンができると思うので、調理の幅も広がるはず。
子どもたちにも興味をもってもらえる楽しい食育イベントなども絡めて、地元農業の活性化の第一歩にしていきたいです。

戸上:キュウリ栽培で、どのデータを見ていただければいいかだいたいわかってきました。なので、カラーピーマンの栽培からは我々がもっと寄りそって、このデータはこういうことに意味があるんですよとか、整った環境を作るためにこういうデータを見るといいですよとか、より二人三脚の取り組みにしていきたいです。

我々が持っている理想的な考え方と、平本さんがこれまで培われてきた経験を融合していけたらと思います。

平本:そうですね。スマート農業の導入を通じて、私が目指す地元農業の活性化の足がかりができました。これからも一緒に頑張りましょう!

* * *

平本さんと戸上さんの目線をとおして、全6回でお伝えしてきたスマート農業。
製品やサービスの説明を読むだけではわからなかった、リアルな声を聞くことができました。
農業向けIoTソリューションは、農家さんの毎日をサポートする、より身近な存在になっていくかもしれません。これを機にスマート農業の導入を考えてみてはいかがでしょうか?

【取材協力】
平本貴広
PSソリューションズ「e-kakashi
 

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