津波被害乗り越え、ブランドネギの新産地に グローバルGAP取得も

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津波被害乗り越え、ブランドネギの新産地に グローバルGAP取得も

津波被害乗り越え、ブランドネギの新産地に グローバルGAP取得も
最終更新日:2019年02月26日

宮城・仙台沿岸部の井土地区は、仙台城を築いた戦国大名・伊達政宗の時代から、農業が盛んな土地です。東日本大震災時には津波の被害を受け、先祖代々伝わる土壌を失ったものの、地域の農業者たちは、震災後も良質な井土水が湧くこの地を耕し、新たにブランド長ネギの産地として再興しようとしています。震災から8年経ったいま、地元の生産組合の取り組みを取材しました。

大津波の被害を乗り越え

宮城・仙台市若林区沿岸の井土地区。太平洋の風を受ける8ヘクタールの畑では、天に向かって長ネギがのびのびと育ち、秋から冬は収穫のピークを迎えます。甘くて、焼くトロトロとした食感になる「仙台井土ねぎ」ブランドとして、地元を中心にファンがじわりと増えつつあります。

井土地区は、古くから土壌や天候条件に恵まれ、仙台城を築いたことで知られる戦国大名・伊達政宗の時代から、伊達藩の台所を支えていました。日射量が多く、夏は涼しい海風が吹くことに加えて、「ここは、水がとてもいい」と、園芸部長の大友一雄(おおとも・かずお)さんは話します。井土地区は井戸水の水質が良く、“美人輩出地区”と囁かれていたそうです。水に恵まれた農地で、レタスやホウレンソウ・コマツナなどを多く作っていましたが、2011年の東日本大震災発生を境に状況は一変します。土井地区は高さ10メートルの津波に襲われ、甚大な被害を受けました。震災前には73戸の農家が営農していましたが、家や農地、農機具を失い、農業を断念する人が相次ぎました。

新たな名物を 土壌に合った「長ネギ」で再起へ

農地集約を行い、増えていった生産組合の田畑の地図を広げる大友さん

それでも、昔から地域の宝だった良質な井戸水は、枯れることはありませんでした。滾々と湧き出る井戸水の存在は、地域の人たちの心を励まし続けました。

避難所での生活が1年ほど続いたのち、地域農業を復活させようと、15人の農家が井土生産組合を立ち上げます。離農した農家から土地を引き継ぎつつ2014年、100ヘクタール(水田85ヘクタール、畑地15ヘクタール)の農地で本格的に経営を開始しました。

畑のがれきを片付け、西日本などから土を運び入れながら畑を整備します。しかし、土壌は粘土質で水はけが悪く、農機がうまく動かないほど。さらに、整備した畑の全面積の5分の1程度しか活用できず、病害に悩まされたり、米価が大幅に下落したり…と、思うように経営ができず苦労しました。

そこでメンバーは、①稲のもみ殻から作った堆肥など、有機肥料を使った徹底的な土作りをする ②田んぼに種を直撒きすることで、田植えを省略する「直播栽培」を取り入れ、余った人手を付加価値の高い畑作作物(野菜作り)へ集中させる ③販路は直接契約を中心とし、ブランド化を推進する といった、具体策を一つずつ実行していきました。

震災後はミネラル分が増えるなど、元々の土壌と性質が変わったため、相応しい畑作作物の選定に試行錯誤します。塩分に強いとされる長ネギを選び、土地の条件に合った品種を探して、全国の産地を視察します。台風に強いものなど4品種ほどを選び、清らかな井戸水を使って種から育てる一貫栽培で生産を始めました。当初は30アールから始めましたが、栽培技術の向上を重ね、現在では東京ドーム2個分に当たる8ヘクタールで年間約200トンを生産しています。

地元のファンが増加、グローバルGAPも取得

「仙台井土ねぎ」の魅力は、県内外へ少しずつ広まりつつあります。販売先である飲食店、スーパー約40軒とは、直接契約が中心。とれたてを卸すため、鮮度は抜群で、「焼いてよし、煮てよし、柔らかくて香りも良い」と、地元の料理人からのお墨付き。取引単価は年々上昇しており、井土ねぎを使ったねぎだれなど加工品の生産・販売にも力を入れています。

昨年12月に開催した「第4回 仙台井土ねぎ祭り」では、ネギの掘り取り体験と袋詰め放題を実施。開始2時間前から行列ができ、家族連れなど約3000人が来場しました。「(元々この土地で農業をやっていた)地権者の方々にも来ていただき、『懐かしい』と言ってもらえた。土地を任せてもらったからこそ、いまがある」と、大友さんは言います。

県外にも広く安全性をアピールしようと、生産工程管理による農作物の安全確保に取り組んだ農業者や産地が取得できる国際基準「グローバルGAP」を取得しました。GAPは、2020年開催の東京五輪・パラリンピックで使用される食材調達基準とされ、この認証を受けている農作物のみ、選手村の食堂などで使うことができます。さらにグローバルGAPを取得していれば、輸出拡大も期待できます。

鈴木保則(すずき・やすのり)組合長は、「“量より質”を追い求めながら、大産地に負けないネギを作っていきたい。東京オリンピックに仙台井土ネギが出せたらうれしい」と期待します。地元で農業を学び、地元産野菜を広めたいと意気込む、20代の若いメンバーたちも迎えました。逆境から立ち上がった人々は、新たな産地創出のため、生産拡大に情熱を傾けています。

【関連リンク】
農事組合法人 井土生産組合

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