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育苗のメリットとは? 必要な物や作物別の育苗期間

育苗のメリットとは? 必要な物や作物別の育苗期間

「苗半作」「苗八分作」といった言葉は「苗の出来がその作を左右する」という意味の格言です。良い作物をつくるには、丈夫で良い苗づくりが欠かせません。自分で育苗すると、苗を購入する際の目利きも養われます。今回は、育苗のメリットを振り返りつつ、育苗に役立つ便利な道具や資材、作物別の育苗期間などについて紹介します。

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育苗とは?

育苗とは、畑に種を直接まいて育てるのではなく、育苗ポットなどの容器である程度成長するまで育てることをいいます。畑とは別の場所で、環境を整備して育てることによって、雨風や気温といった自然の影響を受けにくくなり、丈夫で良い苗を作ることができます。

苗が丈夫になると?

丈夫な苗は、移植した際にも活着しやすく、多少の悪天候でも生育が停滞しにくくなります。
果菜類の場合は、限られた土のなかで育てて根の過剰な伸びを抑制することで、地上部と地下部のバランスを整えることができ、実つきがよくなります。

育苗のメリット

種には個体差があり、すべての種が発芽するわけではなく、発芽したものがすべて健全に育つとは限りません。育苗をすることで、素性の良い種子から育った苗のみを選別して畑に植え付けることができます。移植する前にある程度大きく育てておくことで、雑草よりも生育が早くなり、草に負けにくくなります。

また、一括して温度管理もすると、本来は発芽しにくいような季節でも苗がつくれます。これらのほかにも、いくつかのメリットがあります。

管理の手間が少ない

種を直接畑にまくと、干ばつや豪雨によって発芽しにくくなったり、鳥害の被害にあったりするなど、リスクが高まり、これらを防ぐにしても広い畑では管理が大変です。育苗は、限られた空間で一括管理できることで、少ない労力でも自然環境から苗を守ることができるので、管理の手間が少なくなります。

初心者でも育てやすい

作物が発芽しやすい環境をつくれるため、畑に種を直接まいて栽培するよりも育てやすくなります。畑に移植した後も、生育度合いがそろいやすいというメリットがあります。苗の生育度合いに個体差があると、栽培管理がしにくくなってしまうため、収量や品質低下の原因となってしまいます。

育苗中に畑で他の作物を育てられる

育苗している間、空いている畑で他の作物を育てることができるため、同時により多くの作物を育てたいという方にもおすすめです。

育苗を始めるために必要な物

まずは育苗培土のほか、育苗をするのに最低限必要な育苗ポットやトレーといった苗を育てる容器を揃えましょう。

果菜類のように、寒い時期から育苗をする場合には加温するための道具があったほうがいいですが、植えるのが遅くなってもよいなら、外気温が上がってから種をまけばいいわけで、絶対に必要ということではありません。

育てたい作物や育てる時期によって、必要な道具は違うので、種袋を見ながら個別に確認してください。

育苗培土

育苗ポット用の土を育苗培土といいます。発芽や生育に適しており、あらかじめ肥料成分が配合されているため、袋に表示されている期間中は施肥の必要がありません。排水性や保水性、通気性に優れた物がおすすめです。

編集部おススメの育苗培土

園芸用育苗培養土「土太郎」/住友林業緑化株式会社

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「土太郎」(容量:30L・1000L)は発売から30年以上、全国のプロ生産者を中心に愛用されている園芸用育苗培養土です。天然河川由来の“スミリン粒土”を主原料に、独自の有用微生物や活性炭などの高品質副資材が添加されており、優れた物理・化学・生物性を併せ持つ植物に最適な生育環境となっています。

果菜類、葉菜類、観葉植物など園芸作物全般にご利用いただけます。その他、ネギ用、水稲用など各種専用培土のラインナップもあり、住友林業緑化の培養土シリーズは要チェックです。        

住友林業緑化株式会社

園芸用育苗培養土「土太郎」


編集部おススメの肥料

アヅミン、アヅ・リキッド413、レコルト/デンカ株式会社

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腐植酸苦土肥料「アヅミン」(固形)は発売以来60年以上に渡り、高い根張り効果などが生産者の方々の支持を集めてきました。
この効果の根源は、独自製法による水に分散しやすい構造の腐植酸。同社ではこの着想をもとに、腐植酸液状複合肥料「アヅ・リキッド413」を開発し、健苗づくりや活着促進効果などで好評を博しています。

さらにこのほど、含有している腐植物質が作物への活性が高く、かつ幅広いpHで溶解するフルボ酸である「レコルト」を開発。こちらも多くの生産者の健苗づくりに寄与しています。

デンカ株式会社

健全な苗づくり、活着促進に


育苗ポット

植木鉢のような形状の容器を育苗ポットといいます。素材がポリエチレンやポリ塩化ビニル製の「ポリポット」のほか、ピートモスなどの土に還る自然素材で作られた「ジフィーポット」などがあります。

これらはホームセンターの園芸コーナーや、通販などでも購入でき、サイズや色もさまざまです。同じ品目を複数品種育てる場合は、ポットの色を変えるなどすると分かりやすく、管理しやすいです。

編集部おススメのポリポット

そのまま植えられるエコポット ジフィーポット / 株式会社サカタのタネ

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引用:株式会社サカタのタネ

植え付けの際にゴミが出ない、土になる天然素材ポット。ポットごとそのまま植え付けOKです。ポット内部に新しい根が次々と伸び、活発な根群(ルートボール)を形成します。ルートボールをそのまま植えられるジフィーポットは、根を傷めることなく生育が抜群。草花、野菜の育苗にオススメです。

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育苗トレー

苗をたくさん作りたい場合は、育苗ポットがいくつもつながっているような育苗トレーがおすすめです。ポットが連なった「連結ポット」や、より細かく大量に植えるための「セルトレー」などがあります。根巻き(根がポットに沿って張りすぎ、定植後の育成を阻害すること)がしにくく根が均一に伸びるタイプのトレーを使用することで、より丈夫な苗を育てられます。

編集部おすすめの育苗トレー

根巻防止セルトレイ/タキイ種苗株式会社

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引用:株式会社サカタのタネ

天候不順や畑の状態が悪く、計画通りに定植が進まない状況でも苗が老化させることなく、苗を管理することができます。根巻防止効果があるため、夏季の葉菜類の育苗では1~2日程度、育苗期間がやや長くなる場合があります。

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育苗箱

白菜

育苗箱は、種まき、挿し木・挿し芽の育成に使ったり、中に育苗ポットを並べて管理したりといった、さまざまな使い方があります。特に、種が大きく育苗ポットでは育てにくい作物を育てるときや、同時にたくさんの同じ苗を育てたいときに役立ちます。

畑のウネで育苗するいわゆる「地床育苗」と同様に、同じスペースでも育苗トレイよりもたくさんの苗が育てられますが、移植の際に根が切れるというデメリットもあります。そのため、移植のダメージに強いネギやタマネギをたくさん育苗したい時などに向いています。

(発芽)育苗器

加温式の育苗器があると、発芽適温に満たないような寒い時期でもさまざまな苗をつくることができます。育苗期間が80日程度と長いナスやピーマンなどの果菜類を5月頃に植えるには必須の道具ですし、他の作物でも栽培期間の幅が広がります。

昔はプロ農家用の大きなものしかありませんでしたが、近年は家庭菜園にも向く小型の育苗器も登場しています。

園芸マット

園芸マットは、マットの上にポットやトレーを並べて、同時に複数の苗の温度管理をすることができます。防水性がある物や、土中の温度を感知して、温度の過度な上昇を防ぐ機能がある物もあります。

編集部おススメの園芸マット

農電園芸マット / 日本ノーデン株式会社

「農電園芸マット」は農園芸用に特別に開発された安全で使いやすい加温用電気マットです。プロの農家さんから家庭園芸まで、幅広い用途にお使いいただけます。広げて通電するだけでOKなので温湯暖房や電気温床線などと比べて施設の手間が大幅に省け、マットの組み合わせで必要な広さが選べます(動画引用:日本ノーデン株式会社)。

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覚えておきたい!育苗の手順

育苗の手順

育てる作物によって育苗時期が異なるため、よく確認したうえで計画的に種まきをします。種まきから苗ができあがるまでの管理にもいくつかのコツがあるので紹介します。

1.土の湿度が均一になるように土に水を含ませる

培土は乾燥した状態で販売されていることが多いです。また、湿り気のある培土でも開封後は少しずつ乾燥していきます。乾燥した培土は水を弾くため、かん水した際に土が浮いて流亡したり、ムラが出てしまうため、あらかじめ土に水を含ませます。

2.育苗ポットなどに土を詰める

苗の生育を揃えるには、土の量を均一にすることが肝心です。不均一だと、培土中の養分量や水持ちがそれぞれ違ってくるので生育が不揃いになります。特に育苗トレイの場合は、トレイの縁(ふち)に近いところの土が少なくなりがちなので、注意が必要です。

3.植える作物に適した深さに種をまく

種には、それぞれの品目に適した播種深度があります。一般的には種の大きさの2〜3倍の深さといわれています。播種穴を深くしがちな育苗ポットにまく場合は、覆土の量も考慮しつつ、深くなりすぎないように注意します。

4.軽く土をかぶせたら水をやる

種が隠れるように覆土をしたら、土の水分が飽和状態になるくらいたっぷりと水をやります。育苗ポットも育苗トレイも同様に、底の穴から水が流れてくればOK。

一度にたくさん水をやるのではなく、コーヒーを淹れるときのように、覆土が浮く寸前でいったん止め、数回にわけてかん水します。

5.土が乾かないように注意し、温度管理をして発芽させる

発芽までは最初にやった水を乾かさないように管理したほうが発芽が揃いやすくなります。真夏は乾きやすいので直射日光を避けますが、発芽後は、できるだけ早急に日光に当てます。発芽するまでの温度管も大事です。発芽適温は種袋に書いてあるので、土の温度がその範囲内になるように管理します。

6.移植時期になったら鉢植えや畑に移植する

移植適期の目安は種袋の栽培暦に記載されています。苗を育てるポットやトレーの大きさによって違いますが、苗を引き抜いた時に培土が崩れない程度に根が回ったら鉢植えや畑に植えます。移植適期を過ぎるとだんだんと「老化」が進み、根づきにくくなるので、畑の準備を計画的に進めておくことが大事です。

育苗で育てよう!おすすめ作物

果菜類の苗は、基本的には育苗をします。葉や茎といった地上部の生長と、果実の生長がつりあい、バランスよく育てることが安定多収のポイントになるからです。苗をつくると、最初に伸びる強い根が容器で阻まれるので、地上部の過剰な生長が抑えられ、バランスのよい生育になります。

種まきの時期や、育苗日数の目安は以下のとおりです。

作物 種まき時期 育苗の育成日数(※) 畑への移植時期
トマト 3月上旬~ 約60日 5月上旬~
ナス 2月中旬~ 約80日 5月上旬~
かぼちゃ・キュウリ・スイカ 3月中旬 約30日 4月中旬~

※育苗日数は9cm前後の育苗ポットで育てた自根苗の場合。接ぎ木する場合はこれに10〜20日を加算する。

種は全国のホームセンターなどで入手できますが、種苗店や通販などではあまり流通しない珍しい品種も販売されています。値段はまちまちで、たとえばトマトだと1粒1円以下のものや、50円以上するものもあります。
また、通販をする場合は、種が到着するまでにいくらか時間がかかります。早めに予約注文しておくのがおすすめです。

丈夫な苗づくりをマスターしよう

育苗で丈夫な苗を作っておくことで、その後の管理の負担や収穫までの失敗のリスクを軽減することができます。丈夫な苗づくりの基本をマスターすることで、さまざまな作物に応用できるため、家庭菜園での栽培の幅を広げることにもつながります。
興味のある方は、育苗に挑戦してみてはいかがでしょうか。

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