“オール九州”の農業の価値、一つの商品で体現 「九州パンケーキ」ブームの仕掛け人が本当に目指すもの

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“オール九州”の農業の価値、一つの商品で体現 「九州パンケーキ」ブームの仕掛け人が本当に目指すもの

“オール九州”の農業の価値、一つの商品で体現 「九州パンケーキ」ブームの仕掛け人が本当に目指すもの
最終更新日:2019年04月16日

2010年前後に湧き起こったパンケーキブームに乗ってヒットしたのが、九州7県の雑穀を配合し、原材料から加工までオール九州で生産した「九州パンケーキ」だった。同商品を中心とした食品製造や飲食店経営を手掛ける一平グループの村岡浩司(むらおか・こうじ)代表(49)は、九州パンケーキの展開を通じて地域の農業や食品加工業界の課題に気づき、中小食品メーカーと農家が互いの資源を活用しあい、付加価値を高めるために、「九州アイランド」ブランドを立ち上げようと奔走している。パンケーキブームの先に描く未来像を聞いた。

地域おこしに明け暮れた30代

村岡さんは高校卒業後に米国に留学し、帰国後は20代でアパレルショップを立ち上げた。家業を継ぐという決められたレールに従うことに抵抗があったからだ。
だが、アパレルビジネスで失敗し、借金を父に肩代わりしてもらう代わりに、すし屋を継ぐことになった。数年間は家業に専念していたが、2000年前後にスターバックスなどシアトル系コーヒーチェーンが日本に進出し始めると、「米国留学時代に目にした、コミュニティーとしてのコーヒーショップ」を宮崎でも再現したいと考えるようになった。タリーズコーヒーに何度も手紙を書き、ついに2002年に日本で初めてフランチャイズ展開を任せてもらえることになった。

廃校をリノベーションした建物が、一平ホールディングスの本社になっている

タリーズ出店のためのテナントを探す中で、地元の商店街振興に関わるようになり、30代は「命を懸けて」街づくりに取り組んだ。少子高齢化で空洞化が進む中心部ににぎわいを取り戻そうと、さまざまなイベントを仕掛け、自治体やマスメディアに注目されるようになるが、商店街に活気は戻ってこない。既存の地域振興施策に疑問が生じ始めていた2010年、家畜伝染病の口蹄疫(こうていえき)が宮崎を直撃した。

地元密着型企業の限界を痛感

「口蹄疫の影響は宮崎全体に広がりました。知事が毎日作業服姿でテレビに映れば、地域全体が非常時モードになります。コーヒーショップの客も見に見えて減り、収益がどんどん悪化していきました」

美瑛町

九州パンケーキは、宮崎県内を襲った口蹄疫という逆境を乗り越えるために生まれた

生まれ育った宮崎に根を張り、盛り上げていくことしか頭になかった村岡さんは、自社の存亡の危機に直面し、一つの県だけで事業を完結するリスクを思い知った。
“「宮崎の外に商圏を広げる」が「自分たちの地域からは離れない」”。
一見矛盾する経営方針を統合させた商品が、当時爆発的にはやっていたパンケーキの粉を九州の食材だけで作り出す「九州パンケーキ」だった。

「安さ」を売りにした地域振興の未来は?

2012年末に発売した同商品は、2016年にテレビ局のドキュメンタリー番組に取り上げられたことで、人気に火が付いた。外食事業が中心だった頃に比べて、取引先は百貨店のバイヤー、食品工場、農家と広がり、より広い範囲で地域おこしの議論に招かれるようになった。
同時に、「自分は結局、起業家として何をやりたいのか」と悩むようにもなった。ヒットの後の反動も現れ始めていた。
1年以上考え抜き、たどりついたのが九州の食品関係産業に貢献し、農業など地域資源のブランド力を高める新規事業だった。
村岡さんは、「九州の農産物は世界に通用すると思っています。でも十分に認知されていない」と話す。

「九州の素材を使い、環境に配慮した生産方法で作った商品」は世界に通用すると村岡さんは考えている

世界中から安価な食材を調達できるようになった今、商品の付加価値を高め、消費者に相応の値段で買ってもらわないと、地元の農業は衰退するばかりだ。
村岡さんは2019年3月、九州の食品メーカーに向けて、「九州アイランド」ブランドの立ち上げを提案。「九州の農産物を使っている」「環境に配慮した生産工程」など、明確な指針をつくり、基準を満たした商品を認証し、一つのブランドとして商業施設や飲食店に売り込んでいく構想を紹介した。

こうして生まれたのが、九州パンケーキの初の姉妹品「九州アイランド セブングレインパスタ」だ。九州パンケーキと同じ7県の雑穀を、配合を変えて加工したパスタ粉を製麺する作業は、「手延べそうめん」で有名な長崎県南島原市のそうめん工場に委託した。ゆであがった麺は褐色で、見た目は太いそばのよう。もちもちした食感と、雑穀の風味が特徴で、加工でんぷん、着色料、香料は使用していない。九州パンケーキの発売から7年を経て、3月下旬からクラウドファンディング形式で売り出している。

セブングレインパスタは、消費者だけでなく、農家や食品メーカーなどにもブランドコンセプトを理解してもらうための商品と位置付けており、今後は他社も含めた「九州アイランド」商品の認証を進めていく。

パスタ工場

新商品のセブングレインパスタの製麺作業は長崎県南島原市の手延べそうめん工場で行う

「私はすし屋を営む家庭に生まれ、外食業界でキャリアを重ねてきました。本業の業績悪化でやむにやまれずパンケーキミックスの製造に乗り出し、幸いにもヒットしたわけです。けれどパンケーキブームが一段落すると、自分が本当にやりたいことは何なのかと葛藤するようになりました」(村岡さん)
「外食事業は日々のオペレーションを回すのに手いっぱいになりがちで、事業の本質的なことを考える余裕がなかった」という村岡さんの「これまでやってきたこと」と「これからやっていくこと」を統合した商品が、セブングレインパスタだという。

30代から20年近く地域振興に関わってきた村岡さんは、こう問いかける。
「よく、地方自治体が企業誘致で『うちは人件費が安いですよ』とPRしますよね。安さを売りにするなら、終わりのない消耗戦が待っているだけです。本当に地方を豊かにしようと思うなら、わざわざ足を運んででも食べたいとか、価格以上の価値があると思ってもらえるものを作り、広げていくのが正しい道ではないでしょうか」

参考URL
クラウドファンディングサイト:
きっと、みんなが笑顔になる。もっと、九州が大好きになる。自然素材の七穀パスタ!

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