土を処分する方法は?
台東区による回収事業
2月下旬。東京都台東区の旧下谷小学校で、家庭から出る園芸用土の回収事業が行われました。同区が2016年度から行う「花の心プロジェクト」の一環で、区内在住の方を対象に月に1回のペースで実施。月ごとに区内2カ所の回収場所を設けて、1回につき20リットルまでの土を無料で引き取っています。

自転車の荷台などに土を乗せた人が次々と訪れる
台東区の委託を受けて事業を行っているのは「株式会社信太(しだ)商店」。回収した土は同社の職員がその場でふるいにかけた後、一部は園芸用土メーカーに持ち込んで再生させ、区内のイベントで無料配布するそう。この日は2時間で37人が訪れ、合計約500キロの土が集まりました。

土は回収したその場でふるいにかける
土を処分するその他の方法
住んでいる自治体でこのような回収事業を行っていると助かりますが、実際にはそう多くありません。では、どのように土を処分したらいいでしょうか? この他の方法としては、次のような選択肢が考えられます。
(1)庭にまく
(2)自分で再生させる
(3)ホームセンターや園芸店に持ち込む
(4)回収業者に引き取ってもらう
まず、庭付きの一軒家に住んでいる方の場合は、少量なら庭にまいてしまうことが考えられます。しかし、ベランダの場合はそうはいきません。
次に考えられるのが自分で再生させる方法ですが、これはこれで手間がかかりますし、土そのものを処分したいとか減らしたいという時にはこの手は使えません。
その他、ホームセンターや園芸店の中には土を回収してくれるところがありますが、「同量の土を購入した場合」や「店舗持ち込みのみ」などの条件がついていることが多いよう。
これらの方法が取れない場合でも頼りにできるのが、土のリサイクル業を行う企業の存在です。一般家庭から出る土は、どのように回収してリサイクルされるのでしょうか。前出の「信太商店」に伺いました。
信太商店の取り組み
一般家庭の土を玄関先で回収

家庭から出る園芸土、どう処分する?
信太商店の場合、一般家庭の土の回収は電話などで予約を受け付け、即日〜2週間をめどに玄関先で回収する仕組みになっています。料金は運搬にかかる基本料金500円のほか、土1キロあたり40円が目安。ただし、根や茎などが多く入っている場合は1キロあたり200円程度かかるそう。対象地域は東京23区。別料金で鉢やプランターの回収も行っています。
重い土の運搬まで格安で行ってくれるのは魅力的です。信太商店の信太裕介(しだ・ゆうすけ)社長は「土の処分にお金を払うという意識がない方も多いため、料金は極力抑えてボランティアに近い価格でやっている。他の事業で利益を上げているために成り立つ事業です」と話します。

回収された古い土
回収した土はふるいにかけた後、建築用土などで再利用されるほか、群馬県内の園芸用土メーカーに持ち込まれます。そこで、数カ月間ハウス内で乾燥させた後、完熟のバーク堆肥(樹皮を発酵させて作った有機質肥料)やココピート(ヤシガラを発酵させた有機物の用土)、赤玉土、腐葉土などを混ぜ込んでリサイクル土に生まれ変わります。再生土とはいっても、土の品質を保つために古い土5〜10%を新しい土90〜95%に混ぜ込んで作っているそうです。
土のリサイクルのコツは?
天日干しの期間や堆肥の選び方に注意
信太社長はご自身でも趣味で園芸をしていたり、芝生の生育を行っていたりするため、植物に合わせた土の選び方にも詳しいといいます。せっかくなので、一般家庭で土をリサイクルする際のコツについても伺いました。
「家庭でリサイクルされる場合は、ご自身でふるいにかけていただき、ゴミ袋などのビニール袋に入れて天日干しにします。この天日干しは1カ月ほど行った方が良いと思います。完全に乾燥したら肥料としてバーク堆肥、腐葉土などを入れるほか、水はけを良くするためにココピートや赤玉土、パーライト(天然鉱物などを高温処理して作る人工用土)、鹿沼土などを入れます。難しく感じられる方は、新しい培養土を半分混ぜるだけでもいいと思います」
このとき、バーク堆肥や腐葉土などの選び方にもポイントがあるそうです。
「お店で入荷した日をぜひ調べて、入荷したてのものを選んでいただきたいですね。入荷したての方が肥料の効き目がいいですし、腐葉土は古くなると腐って虫が湧いてしまうことがあります」
また、自身で腐葉土を作りたいという方も要注意です。
「よく生ゴミを入れて腐葉土を作ろうとする方がいますが、ただ土に入れただけではうまく発酵せずに虫が湧くだけなのでよくありません。生ゴミは混ぜない方がいいと私は思います。ご自身で腐葉土を作る場合には、公園などで広葉樹の葉のみを拾ってきて水をかけて発酵、毎日天地返しするといい腐葉土になります」

リサイクルした土で野菜作りをする信太社長(写真提供:信太商店)
土の処分に困る都市部の園芸事情
土の回収とリサイクルについて、一般家庭向けに事業を行っている企業に話を伺いました。新しい土を通販などで購入した場合には自宅まで宅配してもらえますが、古い土を回収に来てくれる業者は多くありません。
とはいえ、都市部のマンション暮らしでは庭先に土をまくわけにもいかず、自力で処分するのは難しいのが実情です。休日にベランダの片付けをした方、購入した苗を新しい土に植えようと考えている方、古い土の処分に困ったときにはこのような手段を検討してみてはいかがでしょうか。
◆今シーズンは苗づくりから始めました。次回、ご報告します。