平日はIT企業に勤め、週末には農業と狩猟を行う田原聖也(たはら・まさなり)さんは神奈川県中西部で週末農家をしています。畑を訪ねてカブを収穫しながら、週末農家の生活について聞きました。
本業の延長線で始まった、週末に農のある生活
──なぜ、週末農家を始めたのでしょうか。
以前、僕の本業で『畑にIoTセンサーを設置して数値を取り、管理できるようなシステムを作りたいよね』という話が持ち上がったんです。そこで実験の意味合いも込めて祖父の土地を開墾し、畑にしたのがきっかけです。その後IoTセンサー開発の話はなくなったのですが、農作業が趣味として残りました。
──どんな野菜を作っているんですか?
ジャガイモ、キュウリ、カブ、スティックセニョール(茎ブロッコリー)、サツマイモなどを作っています。昨年はサツマイモが豊作で300キロ近く取れたので、多くを直売所に出荷しました。
──畑をやっていて良かった、と思う事があれば教えてください。
鮮度の高い、旬の野菜を食べられるのが良いですね。例えば、トウモロコシは夜明け前が最高に甘くなるので、スーパーに並ぶ頃には甘さが落ちているんです。そこで早起きして畑に行き、収穫したその場で生のトウモロコシを食べる……なんてぜいたくができるのも、週末農家ならではの醍醐味(だいごみ)ですよ!
本業と農作業を両立させる、週末農家の一週間
──平日の畑の手入れはどうしていますか?
平日は農作業をせず、週末に畑の手入れをしています。帰宅する際に畑の横を通り、異常がないか見るくらいです。台風など天候が崩れそうな時には、野菜を支える支柱を補強したり、倒れた支柱を元に戻したりもしますが、この作業は年に数回といったところですね。週末にはダイコンの土寄せや草むしりなどの作業をしていますが、土いじりをして遊んでいる感覚です。
──週末に手入れをしなかったために失敗した事は。
植物がよく成長する夏場に多いのですが、一週間収穫を遅らせたことでキュウリが大きくなり過ぎ、出荷できなくなった事がありました。また、夏場に畑を放置していたら畑が雑草で一杯になり、草むしりが大変になってしまった事などですね。
──農業をやってみて、初めてわかった害獣被害ってありますか?
僕の畑は住宅街の中にあるので、シカやイノシシといった大型動物の被害はありませんが、ハクビシンやタヌキといった小動物による被害があります。特に、ハクビシンのトウモロコシ被害がひどく、トウモロコシが食べ頃になると長さ18メートルの畝単位で被害に遭っています。他にはタヌキがニンジンを掘り出して食べたり、野鳥が葉物をつつきに来たりする事もありますよ。

ハクビシンにかじられたトウモロコシ(写真提供:田原聖也さん)
──害獣対策はどうしているか、教えてください。
最初は防獣ネットを設置するくらいでしたが、2016年に狩猟免許を取り、小型の箱わなをかけるようになりました。僕の畑が丹沢山系に近い事もあってか、実感として獣害はあまり減っていない気もしますが……これから週末農家をやってみたい人は、なるべく山間部から離れた場所で、住宅に囲まれた所に畑を持つと被害を軽減できるかもしれません。
週末農家は副業になり得るか? 田原さんの考え方とは
──野菜は直売所にも出荷しているそうですが、良い副収入になっていますか?
収支はプラスになりますが、野菜の種をまいてから収穫までの時間を考えると、微妙ですね。自分の本業の日当分を稼ぐ為には、何個野菜を売る必要があるのか?と考えると良いかと思います。副収入の目標額や畑の面積にもよりますが、本気で稼ぐならどんな野菜が高く売れそうかと考え、年間を通して何を作るか?と綿密に考える必要があります。そうなると仕事になってしまうので、週末農家を楽しみたい方は、自分で食べる分の野菜を作って楽しむのが良さそうです。
──週末農家が直売所に出荷する事を考えた場合、おすすめの野菜はありますか?
ダイコンは実が大きいので洗いやすく、出荷用に整えるのが楽ですね。カブだと3~4個を洗って一束にまとめ、余分な葉を落とすなどダイコンより手間が少し増えます。個人の好みもありますが、作業が楽だと思える野菜が良いのではないかと思いますよ。また、週末に農作業の時間がなかなか持てない人は、育成期間が長いサトイモでしたらあまり手がかからず、おすすめです。
──最後に、これから週末農家を始めたい人に、メッセージをお願いします!
週末農家に興味があるなら、プランター1個からでも野菜作りを始めてみてはいかがでしょうか。たとえ失敗したとしても、その経験を次に生かせばいいし、何かしら得られるものがあると思います!