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週末農家から兼業農家へ「サラリーマン×農家」【農業二刀流vol.2】

週末農家から兼業農家へ「サラリーマン×農家」【農業二刀流vol.2】

会社員として働きながら農業にも取り組む大森さんに、新規で就農したい方や週末農業、兼業農業を考えている方へのアドバイスをうかがいました。ライフスタイルに合わせた働き方ができる会社への勤務について、会社員と農業の両立、農作業での夫婦円満の秘訣などもご紹介しています。

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週末農業から兼業農業へ「会社員×農業」という働き方

農業以外の仕事に就いている方が農業に興味を持ったとき、まずは始めやすい「週末農業」から、と考える人も多いと思います。

今回お話をうかがったのは、会社員として働きながら、週末農業から始め、現在は兼業農家として農業に本格的に取り組むようになった大森誠(おおもりまこと)さんです。「まさか自分が農業をするなんて思ってもいなかった」という大森さんが、どのように農業に出会い、なぜ「会社員×農業」という働き方を選択したのか、お話をうかがいました。

「週3日は会社員、2日は農家」という働き方

週に3日、テクニカルディレクターとして働く大森さん。

週末農業から兼業農業へ「会社員×農業」という働き方

オフィスでテクニカルディレクターとして働く大森さん(右)

大森さんが住居を構え、農業を営んでいるのが埼玉県所沢市です。緑豊かで美しい畑作地域が広がり、周辺の川越市、狭山市、ふじみ野市、三芳町を合わせ「三富地域」と呼ばれています。この土地で、400年ほど前から代々農業を営んでいるのが、大森さんの奥様の実家で、エダマメやコマツナ、ホウレンソウ、サトイモ、ニンジンなどを生産しています。農業を始めたきっかけは、お義父さんが病気で倒れて、しばらく畑にでることができなくなってしまったことでした。

「最初は週末だけだったのですが、農業を手伝っているうちに本格的に取り組んでいきたいと思うようになりました」と大森さん。ご両親も60代後半になり、農業のノウハウを学ぶには今のタイミングしかないと考え、兼業を始めたのが2年前です。

大森さんが勤務する会社は、週4日勤務や時間短縮勤務など、ライフスタイルに合わせた働き方が認められています。会社の理解や、収入の安定面から、現在は週に3日は会社員、週に2日は農家として生計を立てています。

「職人と経営者」、2つの顔を持つ農業の魅力

週末農業から兼業農業へ「会社員×農業」という働き方

農家として働く日は、朝の8時から農作業がスタートします。枝豆を栽培している夏の時期は、袋詰めやダンボール梱包などの出荷準備を14時30分まで行います。その後は枝豆の収穫をし、17時から枝豆の下ごしらえ。帰宅は19時ごろになります。夏は、収穫→下ごしらえ→出荷の準備という作業がルーチンになっているようです。

枝豆は温度が高いと糖度が下がってしまうため、大森さんの家では収穫後、葉をとる下ごしらえをした後、水で冷やし、さらに冷蔵庫で冷やしてから切り分け、枝つきにして出荷するという手間をかけているとのこと。気候に左右されながらも、おいしいものをこだわって育てる大森さんは、職人的な顔をのぞかせます。さらに品質、生産管理を行い、効率的に出荷をする際は、経営者としての顔。「職人と経営者の2つの顔を持てることが農業の面白さ」と話してくれました。

週末農業から兼業農業へ「会社員×農業」という働き方

忙しいときは会社で週3日働く以外にも、残りの4日間をすべて農業にあてることもあるそうです。大森さんが会社に勤務する日や奥様がパート勤務の日は、ご両親が畑作業を行っています。

三富地域の中でも大森さんが農業を行っているエリアは水にも恵まれ、井戸水を使用して水撒きを行っている農家が多いとのこと。井戸水は地表の水よりもミネラルを多く含んでいるため、農作物の栄養価や風味にもよい影響を与えるといわれています。「井戸水をたっぷり吸って育ったエダマメやニンジン、サトイモは野菜本来の甘味があって好評です。冬の時期になると、ニンジンやサトイモで作ったけんちん汁はすごくおいしいです」と教えてくれました。

農作業で夫婦円満。農業がもたらした変化とは

週末農業から兼業農業へ「会社員×農業」という働き方

「いつも一緒に農作業を行っているため、妻や家族とのコミュニケーションが増えたので、これまで以上に夫婦円満です!」と大森さん。何よりも体が資本の仕事なのです。健康、特に食生活には気を使うようになったそうです。「農作業で運動の機会が増えて体重が減るかなと思いましたが、食べる量が増えたのか、反対に体重は増えてしまいました(笑)」

嬉しい変化もあった半面、大変なことは会社員としての仕事と、農業の仕事でどちらも優先順位が高い時の対応です。例えば気候状況的に、予定より早く収穫したいと思った時に、会社で大事な会議があって、畑に出れない、というケースなどです。幸いご両親が現役で頑張ってくれているので、手を借りつつ、会社員と農作業の日を柔軟に入れ替えるなど、どちらにも支障が出ないように配慮しているそうです。

週末農業から兼業農業へ「会社員×農業」という働き方

それまではあまり関心がなかった地域について、意識が向くようになったことも、大森さんにとって農業がもたらした変化の一つだそうです。

「例えば、周りが住宅ばかりの所にぽつんと農場があったら、有機肥料などを撒く際、近所の方にニオイについて事前に話をしておかないとトラブルになってしまいます。私たちが農業に取り組めているのは、地域で農業を行っている人達が多くいるからだと思います」
 

常識にとらわれない、新しい世代の農業を

週末農業から兼業農業へ「会社員×農業」という働き方

大森さんから、新規で就農したい方や週末農業、兼業農業を考えている方にアドバイスをうかがいました。

「新たに農業に携わるなら、国や自治体の補助金や制度をよく調べたほうがいいですね。『農業次世代人材投資資金』や就農・定住者向けに自治体が行っている促進事業など、さまざまなサポートがあります。僕からアドバイスできるのは、常識にとらわれ過ぎず、流され過ぎず、農業を始めてもらえたらということ。自然を相手にする農作業は大変ですが、野菜を食べてもらいおいしいと言っていただけるのは、とてもやりがいがあります」と大森さん。

大森さんが現在少し残念に感じているのは、自分の野菜を購入してくれた人の顔を知ることが出来ない、ということ。そのため、個人で販路を作っていきたいと考えているそうです。また、大森さんの奥さまは幼稚園教諭としての経験があるそうです。それを活かし、収穫体験を通した食育の取り組みなど、今後挑戦したいこともまだまだあるようです。

テクニカルディレクターの顔を持つ大森さんが、農業に対してどのように取り組んでいくのか、今後が楽しみです。

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撮影:中込涼
取材協力:
株式会社ロフトワーク http://www.loftwork.jp/

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