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子どもの声と地域の交流 「民泊×農業」が農家と集落にもたらすものは【農業二刀流vol.3】

子どもの声と地域の交流 「民泊×農業」が農家と集落にもたらすものは【農業二刀流vol.3】

2017年09月13日

ヨーロッパでは、農村に滞在し自然や文化、人々との交流を楽しみながらバカンスを過ごす「グリーンツーリズム」が普及しています。大分県の安心院町(あじむまち)グリーンツーリズム研究会は、グリーンツーリズムの先駆けとして、全国で初めて「農村民泊(農泊)」に取り組んできました。発足は1996年。現在約60軒の農泊家庭がある中、「桃源郷こびら」を営む江藤憲子(えとうのりこ)さんに、農泊を始めたきっかけや現在の農泊運営について、お話をうかがいました。

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農泊初体験、始めは緊張した

江藤さんご夫妻

江藤さんご夫妻は、米作りをご主人が、野菜作りと農泊を憲子さんが担っています。農泊を始めたのは2002年、15年前のことです。きっかけはグリーンツーリズム研究会の会長や知人から勧められたことでした。

「はじめは農泊がどんなものか、何をすればいいか全く分からなかった」と憲子さん。地元青年団の活動を通じて、海外の家庭に宿泊した経験があったご主人のほうが、農泊に乗り気だったといいます。

周りからの「まずは一度受け入れてみないか」という勧めから学生を招いたのが、江藤夫妻の初めての農泊経験でした。次は、初めての経験から学んだおもてなし方法などを活かしながら、沖縄からのお客さまを招いたそうです。そうやって少しずつ利用者を受け入れるようになり、利用者とのコミュニケーションなどを通じて、より、農泊におもしろさを感じるようになっていったそうです。

農泊への思いが高まるのに並行して、家の改築も少しずつ進めていきました。まずとりかかったのは、トイレと台所の整備。地元の大工さんに相談し、トイレは利用者が行きやすいように玄関の近くへ移動。土間をなくして台所も広くなりました。

さらに広いウッドデッキも作りました。4、5人分の布団を干せるほどの広さで、今は干し場のほか、利用者が食事をする場所としても使われています。

農泊運営の1日のスケジュールと自然体験

利用者は、主に修学旅行や体験学習などで訪れる中学生や高校生、外国からの研修団体、家族連れなどが多いとのこと。

憲子さんに、体験学習で訪れた高校生を受け入れる際のスケジュールを、一例としてお聞きしてみました。

1日目
14:00 地域の体育館で対面式 →終了後、車で「桃源郷こびら」へ
14:30 「桃源郷こびら」着
15:00 畑で野菜の収穫・栗の皮むき
17:30 釜戸で栗ごはんを炊く
18:30 夕食・団欒
19:30 地域の温泉に案内・入浴
20:30 野生のシカの鑑賞、「桃源郷こびら」に帰って談話
22:30 就寝

2日目
7:00 起床
8:00 朝食
9:00 おやつ作り(蒸しパン)
10:00 流しそうめんの準備
11:00 流しそうめん・昼食
12:30 お別れ式の会場へ
13:00 地域の体育館にてお別れ式

流しそうめんは特に人気がある体験のひとつで、山に竹を取りに行くところから準備をするそうです。そうめん以外にも、今なら旬のトマトなどの野菜を流してみたり、食べた後はみんなで水をかけ合って遊んだりと、とても盛り上がるようです。また、夕食後に催している「野生のシカの鑑賞」は、歩いて15分ほどの近くの山へ出かけるのですが、野生のシカが何百頭と見られるといいます。

このほかにも「少しでもたくさんの体験をしてほしい」という思いから、憲子さんの家で飼っているポニーやヤギとの触れ合い、まき割り、餅つきなどを農泊利用者に楽しんでもらっているそうです。

ポニーのさくら

海外からは、韓国の利用者が多いといいます。韓国でも農泊が増え始めており、農業関係者の研修旅行として訪れるそうです。韓国語は話せないという憲子さんですが、漢字や身振りでなんとかやりとりしているのだとか。「農業の設備を見せてほしい」など、専門的な質問が多いそうです。

韓国から研修に来た利用者と

人との出会いがあり、地域にもプラスの効果

憲子さんは現在、ひと月あたり5 件、28名ほどの利用者を受け入れているそうです。農泊を始めてよかったと思うのは、「たくさんの人との出会いがある」こと。世代や国境を越えていろいろな人と交流でき、一緒に食卓を囲みながらの会話はとても楽しいと憲子さんは話します。

また、利用者にどんな料理を作ろうか、どんな体験をしてもらおうか、どんなおもてなしをしようかという共通の話題と目的ができることで、家族のコミュニケーションも増えたといいます。

農泊利用者への対応は主に憲子さんが担っていますが、娘さんが手伝ってくれていることもあり、農業と農泊の両立にそれほど苦労は感じないといいます。

「どうしても手が足りないときは、利用者の方にキャベツの千切りを手伝ってもらうこともあります。自分たちで切ったキャベツの炒め物を本当においしいといって食べてくれます(笑)」。

農泊は、地域へプラスに働いている面もあるようです。憲子さんが住んでいる集落では過疎化が進み、現在は十数軒の家しかなく、子どもや若者が少ないそうです。そのような環境の中、修学旅行などで中高生が訪れ、彼らが遊ぶ声を聞くととても元気が出る、と地域の人に喜ばれているのだそうです。

「都会の子どもたちは知らない人には声をかけるなって教えられるのかもしれませんが、私は散歩で人に会ったらあいさつしてねって伝えるんです。農泊を続けるには、周りの方の理解が必要です。周りの方の応援があるからこそ、農泊ができています」と憲子さん。地域の人があたたかく受け入れてくれていることが本当にありがたい、と話してくれました。

イベントを通じて農泊家庭同士の交流も

安心院町では、年5回、「グリーンツーリズム実践大学」というプログラムが開催されます。その中には料理体験の時間が設けられ、それぞれに得意な料理を教え合うなど、農泊家庭同士で情報交換を行っています。憲子さんも得意な山菜料理をふるまったり、他の農泊家庭で出している料理を参考にしたり、農泊利用者に楽しんでもらえるよう運営努力を続けています。

「私の家での農泊におけるモットーは“初心を忘れずに”です」。
健康である限り、ずっと農泊を続けていきたいという憲子さん。「楽しみながらいろいろな体験をしてほしい」と常に工夫を欠かさない憲子さんは、これからも素敵な体験をたくさん用意して利用者を受け入れていきます。

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NPO法人安心院町グリーンツーリズム研究会HP

http://www.ajimu-gt.jp/
お知らせ:毎年2月開催「スローフード感謝祭」
http://www.ajimu-gt.jp/blog170227172803.html
農泊家庭のお母さんの自慢の手料理が120品以上、地元の食材をふんだんにつかった地産地消料理が並ぶイベントです。

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