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実業団の苦境を救う「アスリート×農業」の異色タッグ【農業二刀流vol.1】

実業団の苦境を救う「アスリート×農業」の異色タッグ【農業二刀流vol.1】

2017年07月26日

スポーツと農業の両立にチャレンジしているハンドボールクラブチーム「フレッサ福岡」。人材不足の農家とアスリートの人件費問題。それらを同時に解決することを目的とした彼らの取り組みに注目が集まっています。企業が所有するスポーツチームから、地域に根差しともに支え合うスポーツチームへ。彼らの活動をご紹介します。

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農業への携わり方が多様化しています。今回は、一見農業とは縁遠く見えるスポーツと農業の両立にチャレンジしている企業をご紹介します。

お話を聞いたのは、ハンドボールクラブチーム「フレッサ福岡」の代表理事を務める、前川健太(まえかわけんた)さん。一見、華やかに見えるプロアスリートの世界も、高額の年俸を稼ぎ、世間に知られる人はほんの一握り。特にハンドボールのようなマイナースポーツではなおさらです。アスリートを目指す人にスポーツとは別の基盤を作ることで生活の安定を図る一方、チームとしても人件費の一部を農業で補えないかとの考えが参入のきっかけになったようです。

関連記事:週末農業から兼業農業へ「会社員×農業」という働き方【農業二刀流vol.2】

目指せ二刀流! 目標は農業独立と国内最高峰ハンドボールリーグの参入

福岡県の最西部に位置する糸島市。北側と西側を海、南側を山に囲まれたこの地域は、福岡市の中心部まで鉄道で30分ほどとアクセスが良好。近年はベッドタウンとしてはもちろん、県外からの移住地としても人気を集めています。クラフト作家や陶芸家など、多くのアーティストや、サーファーなどがこの地に拠点を構えていることでも知られています。その糸島市で、2016年に設立された「一般社団法人フレッサ福岡」は、スポーツと農業の両立という全国でも珍しいチャレンジを行う団体として注目を集めています。

現在「フレッサ福岡」に所属する選手は15名。農家で研修を受けながら、ハンドボール選手として活動しています。日中はそれぞれ研修先の農家で農作業に従事し、夕方から全員で集まってハンドボールの練習に励みます。彼らの目標は2つ。農業で独立すること、そして、ハンドボールの国内最高峰リーグ「日本ハンドボールリーグ(JHL)」への参入です。

アスリートの厳しい現状を農業で救えるか

昨今、企業のスポーツチーム、いわゆる実業団のチームは厳しい状況にあります。野球やマラソン、ソフトボールなど、日本のスポーツ界を支えてきた実業団チームの廃止は、もはや珍しいことではありません。厳しい環境の中、市民ランナーとして注目を集めたマラソンの川内優輝(かわうちゆうき)選手や、なでしこジャパンの選手たちなど、兼業アマチュアスポーツ選手の活躍も注目を集めました。

「実業団としてチームを運営する上で、最大の課題である人件費を農業で補うことができないか」。チーム自身で生計を立てられる方法を模索したことが、農業参入への後押しとなりました。前川さんは、これからはひとつの企業がチームを所有するのではなく、地域に根差し地域に支えてもらいながらチームを運営していくことが望まれている、と感じたといいます。

「食」を支える農業は、これから先もなくならない産業のひとつであり、また体づくりの基本となる「食」とスポーツの親和性は高いと考えた前川さん。ハンドボールの選手として活躍できる年齢は平均30歳前後と、決して長くはないそうです。先に続く人生の方が長いことを考えると、選手が生活していくための基盤を手に入れることは大切なことです。

人材不足の農家とアスリートの人件費問題を同時に解決

「チーム設立後、タイミングよく支援企業や農家と出会うことができた」という前川さん。チームを支援してくれる農業法人が、糸島市の農家とイチゴ栽培事業に参入しようとしていました。事業に必要な人材を探す一方で、「地域の担い手、後継者不足に一役買えるのでは」と、チーム、農業法人、農家の3者が意気投合。スタートアップにはずみがつきました。

「フレッサ」はスペイン語で「イチゴ」という意味があります。選手たちが栽培に取り組むのは、福岡のブランドイチゴである「あまおう」が中心です。その他にも、レタスなどの葉もの野菜、タマネギ、サツマイモなどの露地野菜、ミニトマトなどの施設野菜、さらに珍しいところではマンゴーやライチなど多岐にわたります。

日々発見の毎日!農作業もトレーニングの一環として


農業は日々、発見の連続だという選手たち。彼らは、手塩にかけた農作物の収穫から、 店頭に立って販売も行います。お客さんから直接「おいしかった」という言葉を言ってもらえることが、練習や農作業のモチベーションになっているそうです。農業に携わるようになって約1年。最近では「農作物にも表情がある」と、少しずつ農業の楽しさを実感している選手も多いようです。

1日の流れは季節や研修先によって異なりますが、概ね起床は6時半。8時には農家で作業を開始し、昼食をはさんで17時に作業終了。19時半から練習を開始し、帰宅は22時というタイムスケジュールです。ただし、試合前には早めに農作業を終えて、練習時間にあてる場合もあるそうです。

アスリートと農業を両立させる上で大切になるのは、コンディショニングです。農業は重労働。それに加えて練習も行うとなると、選手たちの疲労は大きくなります。「日中の作業もトレーニングの一環だと考え、農業とスポーツの両立に取り組んでいる」という声もありますが、試合が続く時や大切な試合の前などは体調管理が大きな課題です。また遠征などで農場を空けることもあるため、農家の方々の協力があって何とかやりくりしている現状もあります。時間の管理と作業の効率化がこれからさらに求められているとのことです。

アスリートのその先は?農業が教えてくれたこと


農業を始めて、選手たちに何か変化はあったのでしょうか。

「今まで植物にはまったく興味がなかったが、農作物はもちろん、植物全般に興味が出てきた」、「農作物の状態をきちんと見極めないといけないので、細かなことに目が向くようになった」、「夏場のハウスは50度を越えることもあり、暑さにも強くなってきた」など、心や体の変化があるようです。

また、将来的には独立就農という道もあるため、「今まで漠然としていた自分の将来について、真剣に考えるようになった」という選手も。中には、「安全なものを届けたい」「子供たちにもっと野菜を食べてもらいたい」「自分の育てたフルーツでおいしいスイーツを作りたい」など、将来の新しい夢や目標を描いている選手もいるようです。

糸島市は移住者も多く、地元の人同士はもちろん、地元の人と移住者、移住者同士などの交流も盛んに行われているそうです。そんな様々な交流の中に、選手も加わることで交流の輪がさらに大きくなっています。地域の祭りや田植えに選手が呼ばれることもしばしば。ベテラン農家とタッグを組んだことで、地域の多くの農家にチームの存在を認知してもらうことができました。今後は、さらに、新規で就農する方々との交流も深めながら、より地域に根差したチームを目指しています。

自由と自己責任。理想のライフプランを叶える生き方を模索


最後に前川さんにこれからの展望についておうかがいしました。前川さんは、まずは農業とハンドボール、それぞれの分野でのスキルアップが課題だといいます。

「農業とスポーツ、それぞれが持つ多様な可能性を活かしながら、地域に貢献していきたい」

例えば、ハンドボールで魅せる感動はもちろんのこと、食育、青少年の育成、高齢者の健康づくりや生きがいづくり、安全な食の提供、都市近郊での新しいライフスタイルの創出など、多くのことにチャレンジしていきたいそうです。

「農業は決して楽ではありませんが、とてもやりがいがあります。時間も作業も自分次第。そして収入もそれに比例します。“自由と自己責任”です。自分のライフプランに合わせて作業を決められることも魅力です。なにより、大自然の中でおいしい空気を吸いながら作業できる仕事は他にはないかもしれません。農業という基盤をしっかりと確保することで、ぜひ、選手たちには様々なことに挑戦してほしいですね」と前川さんは話していました。

創業から1年あまりが過ぎたばかりの「フレッサ福岡」。「アスリートと農業で地域に夢と元気と感動を」をコンセプトに活動を行い、2017年8月には福井県で行われる全国大会へ九州代表4チームのひとつとして参加することが決まっています。農業とハンドボール、今後も両方での活躍が期待されます。

関連記事:週末農業から兼業農業へ「会社員×農業」という働き方【農業二刀流vol.2】

一般社団法人フレッサ福岡
住所:福岡県糸島市波多江駅北3-1-1-502
フレッサ福岡ホームページ:http://fresa-fukuoka.jp/
公式Facebook:https://www.facebook.com/fresafukuoka/
公式Twitter:https://twitter.com/fresafukuoka
※写真提供:一般社団法人フレッサ福岡

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