直売所で飛ぶように売れる理由は抜群に強い「あの香り」
「直売所で一番稼げる葉物野菜」、それがパクチーかもしれない。スーパーのパクチーは「少々お高いけど、ちょっとしか入っていない」というイメージが強く、直売所にホウレンソウの倍の値段で並べても、飛ぶように売れてしまう。
その理由はおそらく、香りが抜群に強いからだろう。パクチーの香りは儚(はかな)く、1日で半減してしまう。産地から市場、スーパーへと運ばれるうちに香りは飛ぶ。新鮮なパクチーの強烈な香りを味わえるのは、生産者と直売所のお客さんの特権だ。
普段パクチーを買うお金でタネを買い、産地直送のパクチーをぜひ味わってみてほしい。1袋のタネから食べきれないほどのパクチーが育つ。
栽培時期──暑さに弱く、寒さに強い
栽培は、私でもできるくらい簡単なものだが、気をつけなきゃいけないのが、栽培時期。
タイ料理のイメージが強いパクチーだが、原産地はタイではなく、地中海沿岸部と言われている。意外と暑さに弱く、寒さに強いのだ。
上の表は、タネ袋に書いてある栽培暦。真夏の8月中旬〜9月中旬や、冬の10月以降はタネまきできないことになっている。確かに難しいが、これはあくまでも目安。実際は周年栽培をしている産地もあるので、工夫次第でいつでも育てられる。
初心者にオススメの秋まき初冬出荷
パクチーは発芽適温(発芽しやすい温度)が20〜25度で、 生育適温は18〜25度とされている。実際、春や秋、最高気温が20度ほどで「ロンT1枚で外出できる」時期にタネをまくとよく発芽するし、この期間なら収穫に困るほどよく育つ。
一方、真夏は、成長が止まるうえ、梅雨明け以降はタネをまいても発芽しにくい。
春か秋にまくのが無難だが、春まきだと梅雨に入る頃くらいからトウが立ち(花茎が伸び)、茎が硬くなる。食べられないことはないが売り物にはならない。
したがって、初心者にオススメなのは、育てやすく、トウが立つ心配のない、秋まきだ。
真冬の鍋シーズンに向けて冬まきトンネル栽培がオススメ!
意外にも寒さに強いパクチーは、ビニールなどで覆ったトンネルで栽培すると、10月以降の播種(はしゅ)でもちゃんと育つ。最低気温がマイナス8度まで下がるわが家でも、11月上旬にまいたものでも越冬でき、売り物になった。2月上旬までは出荷する。
冬どりのパクチーは思いのほかよく売れる。なぜか他に誰も出さないうえ、世の中では「パクチー鍋」というものが流行(はや)っているそうで、鍋シーズンになると、1キロ買う人もいる。真冬のパクチーは葉っぱが硬いが、鍋にするには歯ごたえがあって、ちょうど良いのだとか。
ベテランなら真夏まきも!
夏まきだってできないことはないらしい。関東以西でも7月末からまけるほどの耐暑性を持ち、なおかつトウ立ちも遅い「サバイパクチー」(トキタ種苗)といった品種も登場している。ベテラン農家の方は試してみてほしい。私も今年は挑戦したい。
売れるポイントは「根っこ」 直まきで立派に育てよう
葉っぱのイメージが強いパクチーだが、香りがもっとも強いのは根っこだ。パクチーが大好きな人は、この根っこを欲しがる。根つきパクチーを求めて、スーパーをハシゴするツワモノもいるほどだ。
間引きニンジンのような直根(まっすぐ下に伸びた太い根)は食感もよく、とてもおいしい。根をオリーブオイルに浸して香りを移した「パクチーオイル」もドレッシングに使えるし、タイ料理屋さんではスープのだしにも使うそうだ。
売る時も、食べる時も、根を捨ててしまうのはもったいない!
根ごと収穫する場合は、絶対に直まきにする。苗をつくって植えてしまうと細い根ばかりが出てしまい、洗うのが大変なうえ、根っこは売り物にならないからだ。
発芽を成功させるポイントは「ジョリジョリまき」
ちょっと難しいのは発芽させることで、特に乾燥しやすい畑では発芽が不揃いになりがち。私は、まき溝を手でよく鎮圧(土を押さえて締めること)したうえで、指先で「ジョリジョリ」と音がするくらいタネ同士をこすりあわせながらまく。タネに傷をつけて水をよく吸収させるのがねらいだ。播種後は、寒冷紗(かんれいしゃ)やモミガラで覆って保湿するとなおうまくいく。
発芽したら、条間と株間が15センチになるように間引けば、あとはたまにやってくるモンシロチョウのアオムシをつまんで、捨てるだけ。
元肥は、1平方メートル当たり化成肥料をひと握りほどやれば十分育つ。
1000年越しのブーム!
ところで、パクチーは日本では平安時代の末期にはすでに伝来していたそうで、当時から香辛料として食べられてきたが、あまり流行らなかったようだ。
約1000年の時を越え、平成も終わる頃に来たパクチー旋風。このブームに乗りつつ、「1カ月3万円」稼げ、食卓に当然のようにパクチーがある「令和」にしたいなぁ。
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