お米を粉状にした「米粉(こめこ)」
米粉とは、その名のとおりお米(うるち米やもち米)を粉状にしたもの。古くは奈良時代からお団子やせんべい、和菓子などの材料として使われてきました。
近年になって注目されるようになった理由には、製粉技術の発達により粒子の細かい米粉の製造が可能になったことから、小麦粉と同じようにパンや麺類、ケーキなどの幅広い用途で利用が可能になったことが挙げられます。
また、農林水産省「食料自給率の推移」によると、小麦の国内自給率が14%なのに対し、主食用の米は100%とすべてが国産でまかなわれています。そのため、米粉の普及が食料自給率の向上につながると期待されていることも、注目されている要因の一つです。
米粉の種類
米粉には、うるち米から作る「上新粉」やもち米から作る「白玉粉」などさまざまな種類があり、古くから利用されてきました。昔から使われてきたものとして、以下の種類があります。
名称 | 米の種類 | 製法 | 用途 |
---|---|---|---|
上新粉 | うるち米 |
精白米を、水洗い→水切り→生乾きで製粉、乾燥(または乾燥後製粉) 別名「しん粉」、「米粉」、「米の粉」などともいう |
だんご 柏餅 草餅 ういろう かるかん饅頭など |
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もち米 | 上新粉と同じ |
大福餅 求肥(ぎゅうひ) しるこ もなかなど |
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もち米 | 水挽製法(注1)により粉にしたもの |
白玉だんご 求肥(ぎゅうひ) 大福餅 しるこなど |
寒梅粉 | もち米 | 精白米を水洗い水漬けし、これを烝煮(注2)して、もちに調製し、白焼き製粉したもの |
押菓子 豆菓子 製菓用 糊用 工芸菓子など |
らくがん粉 | もち米 | 水洗いして乾燥した後、焙煎(注3)して製粉したもの | らくがん |
みじん粉 | もち・うるち米 | もち米またはうるち米を蒸煮後、これを乾燥し焙煎して製粉したもの |
○うるち 和菓子など ○もち 和菓子 玉あられ 桜餅 おこし 天ぷら粉など |
だんご粉 | もち・うるち米 | 上新粉にもち米を混合したもので、関西以西で多く愛用されている | だんご |
道明寺粉 | もち米 | 蒸煮した精米を乾燥して干飯にして粗砕したもの |
桜餅 つばき餅 おはぎ |
上南粉 | もち・うるち米 | 蒸煮した米を乾燥して粗砕したもの |
○うるち 和菓子など ○もち 和菓子 玉あられ 桜餅 おこし 天ぷら粉など |
菓子種 |
道明寺粉、上南粉などの粒形をしたものの総称 最中の皮などに代表される、もち米で作った菓子材料の総称でもある |
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乳児粉 | うるち米 | うるち米を熱加工して製粉したもの |
乳児食 重湯用など |
(注1)水挽製法とは、米を水洗い → 水漬け(半日から1日)→水切り→水を加えながら磨砕(まさい)する方法
(注2)蒸煮とは、少量の煮汁で長時間かけて弱火で煮る調理法。
(注3)焙煎とは、焙(ほう)じ煎(い)ること。油や水を使わず加熱乾燥すること。
(注4)「熱処理なし」のものを「生粉製品(なまこせいひん)」といい、お米を生のまま粉にする製法。
(注5)「熱処理あり」のものを「糊化製品(こかせいひん)」といい、熱を加えて米の質を変化させた後、粉にする製法。
引用:東海農政局「米粉の種類と用途」
米粉の特徴や栄養素、小麦粉との違いは
米粉の主成分や栄養価など、調理する際の特徴を小麦粉と比較しながらチェックしてみましょう。
グルテンの有無
小麦粉に水を加えてこねると粘りのあるたんぱく質のグルテンが形成されますが、米粉からはグルテンはできません。そのため米粉商品にはグルテンを加えたものと、増粘多糖類や糊化米粉を加えて作る二種類があります。後者の小麦を使用していない米粉は、小麦アレルギーがある人でも食べることができます。
カロリーは小麦粉とほとんど同じ
米粉のカロリーは100グラムあたり356キロカロリーに対し、小麦粉(薄力粉)のカロリーは100グラムあたり349キロカロリーと、ほとんど差はありません。しかし、パンを作った場合で比較すると、米粉のほうが水分量が多くなり、カロリーは米粉パンのほうが低くなる傾向があります。
扱いやすさ
米粉は小麦粉と違ってダマになりにくいので、ふるいにかける必要がなく、扱いやすくなっています。また、油を吸いにくいため、揚げ物をカラッと揚げることができます。
米粉はケーキやパンづくりのときなどに、水分と混ぜやすいのも特徴です。ただし、時間が経過するとボウルの底などに溜まりやすくなるので、使う前にはひと混ぜするのがおすすめです。
食感の違い
小麦粉と米粉で最もわかりやすい違いは食感です。
小麦粉に含まれるグルテンにはパンなどを作るときに膨らみやすいという特徴があり、これによりもっちりとした食感が生まれます。米粉は小麦粉に比べて水を吸収しやすいことから、しっとりした仕上がりになります。
米粉を使うメリット
ここまで、米粉と小麦粉のの違いについて紹介してきました。それを踏まえて、米粉を使い場合のメリットについて、紹介していきます。
小麦アレルギーの人でもパンなどが食べられる
小麦粉はパンや麺類、焼き菓子など、さまざまな料理に使われる素材ですが、小麦アレルギーの人は食べることができません。一方で、米粉は小麦アレルギーを引き起こす原因とされているグルテンを含んでいないため、小麦粉を米粉に置き換えれば、小麦アレルギーの人もこれらの料理を楽しむことができます。
また、小麦などのグルテンを含む食材を摂取しない「グルテンフリー」は、アスリートの食事法や健康管理の一つとしても注目されているため、米粉はその代用品として使用されています。
米粉に比べて扱いやすい
前述したように、米粉はダマになりやすいグルテンを含んでいないため、ふるいにかける必要がなく、手間がかかりにくいと言えます。
グルテンが身体に及ぼす影響や健康面で期待できることについては、下記の記事で紹介していますので、あわせてご覧ください!
米粉のデメリット
メリットがある一方で、米粉製品や米粉を使う上でのデメリットあるのでしょうか。
値段が高い
米粉のデメリットを上げるとするならば、価格面のネックが挙げられます。米粉用米は粉状に加工する際のコストが高くつくため、製粉機のスペックが向上した現在においても米粉の製粉コストは小麦粉の約1.4~7倍に上るそう。農林水産省のデータによると、2021年度の1キロ当たりの業務用価格は小麦粉が110円なのに対し、米粉は120〜390円と大きな差があります。
米粉の値段が高くなっている背景については、下記記事で紹介していますので、あわせてご覧ください。
栄養素が不足する可能性がある
小麦粉と違い、米粉にはミネラルや食物繊維が不足しているため、足りない栄養素を補うためにも、一緒に食べる物に工夫が必要です。
米粉を使ったおすすめレシピ
小麦粉を使う料理に米粉を代用することができるので、グラタンやシチューに使用するホワイトソースも米粉に置き換えて作ることが可能です。そして、うどんやピザは米粉ならではの食感になります。ここでは、米粉を使ったおすすめレシピの作り方を紹介しましょう。
うどん
材料(2人分)
米粉……200グラム
片栗粉……50グラム
塩……ひとつまみ
お湯……200cc
打ち粉用米粉……少々
作り方
1. ボウルに米粉と片栗粉を入れて混ぜます。
2. 1に熱めのお湯を少しずつ加えながら箸などで混ぜます。人肌程度の温度になったら手で生地をこね、耳たぶぐらいの硬さになるようお湯を加えながらさらにこね、ひとかたまりにします。
3. 麺を伸ばすための台に打ち粉をして2の生地を厚さ6~7ミリに伸ばした後、切りやすい幅に折りたたんで、好みの太さに切ります。
4. 大きめの鍋にたっぷり湯を沸かし、麺を1分ほどゆでて(太さによりゆで時間は増減)ザルに上げ、冷水にさらして水気を切れば完成です。
ピザ
材料(1枚分)
米粉……180グラム
砂糖……5グラム
塩……3グラム
ドライイースト……3グラム
オリーブオイル……10cc
水……140cc
作り方
1. ボウルに米粉、砂糖、塩、オリーブオイルを入れてよく混ぜた後、ドライイーストと水を加えてこねます。
2. 生地がまとまり、滑らかになったらラップをかけて30分ほど発酵させます。
3. 生地を円形に伸ばしてピザ台を作り、好みのピザソースを塗って具をのせます。
4. 200℃に予熱をしたオーブンで15~20分焼き、ピザ台の端がこんがりと焼けてきたら完成です。
米粉を使ったお菓子
小麦粉が使われることの多いお菓子も、米粉を代用して作れます。米粉を使用した焼き菓子は、黒糖や豆腐など和の食材とも相性が良く、ヘルシーなおやつになります。
ここでは、米粉を使用したドーナツとパンケーキの作り方を紹介します。
ドーナツ
材料(3人分)
米粉……80グラム
卵……1個
ベーキングパウダー……小さじ2分の1
粉黒糖……大さじ3
絹ごし豆腐……50グラム
メープルシロップ……大さじ1
オリーブオイル……大さじ1
作り方
1. ボウルに卵を溶いた後、残りの材料を入れて混ぜます。
2. ドーナツ型に流し入れます。
3. 180℃に温めたオーブンで15~20分焼いたら完成です。
パンケーキ
材料(2人分)
米粉……100グラム
卵……1個
砂糖……30グラム
ベーキングパウダー……4グラム
牛乳……80グラム
バター……15グラム
作り方
1. 米粉とベーキングパウダー、砂糖を泡立て器でよく混ぜます。
2. 卵、牛乳、溶かしバターを入れて、さらに混ぜます。
3. 生地が滑らかになったら、熱したフライパンに流し入れて焼き、完成です。
いろいろな食感を楽しんでみましょう
米粉は混ぜ合わせる物や使い方次第で、サクサクさせたり、もっちりにしたりとさまざまな食感を生み出すことができます。
小麦粉の代用品としても使いやすいので、アレルギーのある人やグルテンフリーを取り入れている人にもおすすめです。ぜひいろいろな料理で試してみてください。
監修:公益社団法人日本フードスペシャリスト協会