グルテンとはたんぱく質の一種
グルテンとは、小麦や大麦、ライ麦といった穀物から生成されるたんぱく質のこと。「グルテニン」と「グリアジン」というたんぱく質が小麦粉などに含まれていますが、水を加えてこねることで「グルテニン」と「グリアジン」が絡み合ってグルテンとなり、粘り気や弾力性が増します。パンやパスタのもちもちとした食感はグルテンによるもので、ピザやお好み焼き、天ぷら、お菓子、カレールーといった小麦粉や小麦粉を使用した加工品に含まれるため、米を主食としている日本人であっても比較的口にする機会が多い成分です。
グルテンが及ぼす影響
日頃、摂取する機会が多いグルテンですが、体質によっては体の中で消化不良や便秘、下痢、アレルギー反応を引き起こす可能性があるともいわれています。そもそもグルテンは人の消化酵素で完全に分解されにくく、分解途中の物質が炎症を引き起こして消化吸収機能の障害をもたらす可能性があります。一般的に「グルテン過敏症」や「グルテン不耐症」と呼ばれている「グルテン関連疾患」には、ある特定の遺伝子型(HLA-DQ2とHLA-DQ8)を持つ遺伝性の自己免疫疾患や、原因が未だ明らかでない症状が含まれます。腹痛、便秘、下痢などの消化器症状、消化吸収の低下による栄養失調、思考力減退や疲労感などさまざまな症状をもたらします。片頭痛や月経前症候群、自己免疫疾患につながる可能性もあります。
グルテンフリーによって得られる効果
グルテンフリーという概念は、世界的なテニスプレーヤーであるノバク・ジョコビッチ選手が、「グルテンフリーの食事にしたことで体の調子が良くなった」などとコメントしたことから広まりました。ジョコビッチ選手はグルテンに対して過剰な免疫反応を起こしてしまう体質だったのですが、同じようにグルテンが体質に合わず、摂取を抑えることで健康回復につながる人もいるのではないか、と注目されるようになったのです。
グルテン過敏症の人がグルテンフリーの食事にすると、便秘や下痢の解消、腸内環境の改善などの効果があるといわれます。腸内環境が整えば、肌荒れやニキビなどの肌トラブルが改善する可能性も期待できます。また、グルテンの影響で倦怠感・疲労感などがある場合も、グルテンフリーで改善される可能性があります。もちろん、体質などの個人差もありますので、一概にグルテンフリーで改善するとは言えませんが、自身の食生活を見直してみてもいいかもしれません。
グルテンフリーはどのように実践すれば良い?
現代の食生活では、グルテンが含まれる食材の普及率が高いため、それらを避けて食事をすることは簡単ではありません。では、グルテンフリーを意識する際にはどんなものを摂取すれば良いのでしょうか。
置き換え可能な食材や、グルテンを含まない食材を紹介します。
主食は「お米」に置き換える
グルテンが含まれる物は主食が多いというイメージですが、古来からの日本の主食であるお米にはグルテンは含まれていないため、お米を主食とした生活にするとチャレンジしやすいでしょう。
グルテンフリーを意識するあまり、主食を食べないという選択をしてしまうのは危険です。栄養が偏ってしまったり、空腹によるストレスを抱えてしまったりしては、本来の目的である健康へは近づけません。食べないのではなく、置き換えるということを念頭に置いて、グルテンフリーを行いましょう。身近なお米であれば、置き換えるのも比較的簡単なのではないでしょうか。
小麦粉は「米粉」で代用する
近年では米粉を使用した製品も多く、グルテンフリーでさまざまな料理を楽しめるようになっています。パンやお菓子づくりにも欠かせない小麦粉ですが、米粉を代用することによりもちもちとした食感が楽しめると人気を集めています。そのほか、揚げ物の衣がサクサクとした食感になるなど、料理にも代用することができます。
グルテンを含まない食材
卵や肉、野菜や果物などにはグルテンが含まれていません。また、トウモロコシやそば、豆類などの穀物の中でも、グルテンを含まないものはいくつかあります。「オメガ3脂肪酸」などの良質な油を摂取できることから、おやつに人気のナッツ類もグルテンフリーの食材です。スイーツで人気のタピオカやスーパーフードのキヌアなども、もちもちとして腹持ちが良い食材ですが、グルテンは含まれていません。
グルテンフリーを試してみよう
インターネット上には玉石混交のグルテン関連情報が氾濫しており、まだまだ研究が進められている段階のグルテン、グルテンフリーですが、体質によってはグルテンの摂取を控えることで体に良い影響をもたらす可能性があるといえるでしょう。
米食をはじめとした和食中心の食生活にすることでグルテンの摂取量を減らすことは容易になるので、気になる方は、一度試してみてはいかがでしょうか。
監修:北海道医療大学特任教授・学長補佐 小林正伸(内科学・病理学)