料理して残った野菜や果物の種を集める
果実から取り除く種はゴミなのか
ある晩のこと。煮物を作ろうと思って買ってきたカボチャを左手に、スプーンを右手に構えた瞬間、何かが頭をよぎって思わず手を止めました。あ……れ?
いつもなら、さっさと取り除くカボチャのワタですが、改めて気がついてしまったわけです。これって“種”だよね、と。

普段は取り除いて捨ててしまう種だが……
そうです、れっきとした種なんですよ。だとしたら土にまいたら芽が出る……のかしら? そんな疑問で、もう頭がいっぱいです。
考えてみると、これまでたくさんの種を捨ててきました。カボチャのみならず、ピーマンやパプリカ、夏ならゴーヤ、果実ではミカンなどの柑橘(かんきつ)類やリンゴ、スイカ、メロンなどなど。なんなら、取り除くのが面倒だと少しいまいましく思っていたくらいです。けれど、これってじつは宝の山だったんじゃないの……!?
捨てていた種を土にまいてみる
集めた種は洗って乾かしておく
それからというもの、目についた種を一つ一つ取り出して集めてきました。
そして、4月中旬。洗って乾かしておいたこれらの種を土にまいてみました。

食べて残ったさまざまな種
集まった種は、左上から時計回りにリンゴ、ピーマン、パプリカ、夏ミカン、カボチャ、ミニトマトの6種類。(夏ミカンだけは記憶が曖昧なのですが、この時期にいろいろ食べていた柑橘類の何かであることは間違いないです……。)
果たして芽が出るのか、ハッキリ言って見込みの薄い実験なので、やり方はいい加減です。空き容器の底に適当に穴を開けて土を投入。発芽率が低いのではないかと思い、たくさんある種は多めにまきました。カボチャの種は切り込みを入れておくと芽が出やすいと聞いたことがあったので、先端を切っていろいろな向きで置いてみました。

カボチャの種は先端部分を爪切りでカット

豆腐の空き容器にキリで穴を開けて種をまいた
土をかぶせて水をかけたら、窓際の邪魔にならない場所に放置。しばらく置いておいて、いくらか芽が出たら面白いかなーと長期戦の構えです。
予想外の大量発芽!
最初に芽が出たものは?
ところが、3日目。予想に反して早くも何か白いものが見えてきました。

3日目、カボチャの根が飛び出してきた
カボチャの“根”です。切り込みを入れた部分を上にしておくと芽が出やすいのかもしれないと考えていたのですが、先端から根の方が先に出ました。
翌日、今度はミニトマトから小さな芽が出てきました。しかも、大・量!

4日目、ミニトマトの芽がたくさん出てきた(左下)
いくつか芽が出ればいいなんて言っている場合ではなく、何十本も出ているではありませんか! カボチャも芽の方が出始めました。
その後も両者は順調に育って、きれいな双葉が開きました。窮屈そうなので1週間後にポリポットへ植え替え、落ち着いたところで間引き。数えてみると、ミニトマトはおそらく9割かそれ以上が発芽、カボチャは後から発芽したものも含めてすべての種から発芽しました。種の生命力って、すごい!

間引いたミニトマトの芽は45本もあった

大きく力強いカボチャの双葉
発芽に次ぐ発芽
さらに、この間に他の種も発芽しました。次に続いたのはパプリカです。

播種(はしゅ)から10日目のパプリカ
発芽は種まきから10日目頃。その後ポリポットに移して23日目に間引きました。
3種類も発芽すれば、まあまあ成功よね……と喜びに浸るのもつかの間、これで終わりではありませんでした。
別の土にも芽の頭が見え始めたのです。

播種から14日目のリンゴ(右下)
出てきたのはなんと、リンゴの芽。大きな木になっちゃったらベランダじゃ育てられないじゃないの、困るわ〜。
……と、すっかり調子に乗っていると、さらに1週間ほど遅れて夏ミカン(暫定)からも芽が出てきました!
いやー、感動です。こんなにも普段捨てていた種から芽が出るとは思っていませんでした。ただ一つ、ピーマンだけはいまだに沈黙を守っています。

ピーマン、なんて寡黙なやつ……
どこまで育つ? 現状をまとめて公開
せっかくなので、順次、ポットに植え替えて成長を見守ってきました。播種から1カ月半ほど経った現在の姿を、小さなものからまとめてドドッと公開します。

夏ミカン(だと思われるもの)

リンゴ

パプリカ

ミニトマト
それぞれ小さいながらも、しっかり生きて、育っています。
そして、一番大きく成長したカボチャの様子がこちらです。

葉が増え、花のつぼみがたくさんついてきた
植え替えた直径18センチのポットでも小さいと感じるくらいに大きくなってきました。まさかカボチャの実が取れるところまでは期待していませんが、どこまで大きくなるのか試しに育ててみようと思っています。
夏休みの自由研究にする方法
これらの種を大きくなるまで育てるのは大変な時間がかかりますが、発芽するかどうか実験するだけなら簡単なので、夏休みの自由研究などにもいいかもしれません。
実験に必要なものは、食べて残った種とキッチンペーパー、それに適当な空き容器です。
種と容器は事前によく洗って乾かしておきます。果肉やワタが種に残っているとカビが出やすくなるので、きれいに取り除いてよく水洗いします。ミニトマトなどの種はゼリー状の果肉に包まれているので、茶こしなどを使うと洗いやすいです。容器の方もできればアルコールスプレーなどで消毒をしておくと良いと思います。

キッチンペーパーを湿らせて種をまく
キッチンペーパーを容器に合わせてカットし、水道水を注いで濡らします。その上に種を乗せ、乾かないようにラップなどで蓋をします。すると、早いと翌日には芽(や根)が出てくるのが見え始めます。

翌日には早くも変化が見え始める
種によって発芽にかかる日数が違い、長くなると管理が難しくなるので、ミニトマトやカボチャなど、短期間で芽が出るものがオススメです。
いろいろな種を集めてまいてみよう
食べて残った種を土にまいて、出た芽を育ててみました。この先どこまで育つかは未知数ですが、生命はこうしてちゃんと循環していくのだなあと間近で実感する、なかなか感動的な「大人の自由研究」でした。
記事の最初の方にも書きましたが、今回まいたもの以外にも捨ててしまっている種はいろいろあります。また、マメ類やトウモロコシ、ナス、キュウリ、イチゴなど種ごと食べてしまう野菜から種をとることもできると聞きます。芽が出るのだと分かったことで、この先、料理で種を捨てるのを躊躇(ちゅうちょ)してしまいそうです。
◆次回はまた少し違う種の話。野菜の花を観賞し、採種するまでの一部始終です。